松庵川の「物語」〜「西荻暗渠探検」レポート

2014年11月の西荻案内所は「暗渠」をおいかける1ヶ月でした。吉村生さんというスペシャリストの導きで、ディープな暗渠世界へ。

かつてあった川。近年まで地域の人に「ドブ」と言われていた名も無き川が、やがて地下に潜り、とある暗渠好きにより「松庵川」と命名されました。
その後、西荻案内所メンバーのさくらいようへい氏が「西荻百景」シリーズをスタート。第一弾で「松庵川暗渠」を描き、吉村さんたちがその絵ハガキを買いに西荻案内所にいらっしゃったことがきっかけで、「西荻暗渠探検」ツアーの実施が決定しました。
ガイドツアーは参加人数に限界があるので、別途「探検報告会」も催すことで、より広く深く西荻の暗渠を知っていただこうということになりました。当初1回だけの予定だったツアーは、2週間後に再度開催せねばならないほどの人気でした。

松庵川暗渠をはじめとする西荻暗渠の詳細については、後日に西荻案内所から発行する予定のペーパーや、吉村さんのブログに委ねることとして、ここでは二度の暗渠探検とその報告会についてのご報告をいたします。

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初回探検(11/1)はあいにくの雨。「このほうが水の流れがわかりやすい」と開き直りながらの探検となりました。かつて松庵窪と呼ばれた地点から出発し、ときには細い暗渠みちを通って、痕跡をたどりながら宮前の慈宏寺まで。これまで見ていたはずなのに見えなかったものが、吉村さんの解説により意味を伴って立ち上がってきました。地面の声なき声に耳を澄ませながら破片を集め、一つの物語として紡ぎだす「語り部」のようでもありました。

 

再探検(11/16)は晴れ。二度の探検は全く同じコースではなく、スタート地点も含め少しだけ変えています。微調整や変更を加えることで、あらたな面も見え、また2度の探検により吉村さんもこれまで気づかなかったミステリーや、新証言の登場人物が現れるなど、松庵川の物語はさらなる進化を遂げています。

そして報告会(11/28)。まずは吉村さんの暗渠探検報告から。実際の探検は慈宏寺までとしましたが、この報告はその先、善福寺川に流れ込むまでのものでした。最後に松庵川が善福寺川に流れ込む写真がプロジェクターで写された時、会場になんとも言えないどよめきが湧いたのが印象深かったです。地下にあってずっと実体を見ることのできなかった松庵川という「物語」が、ついに目の前にその姿を現したことに起因するどよめきは、演劇的な体験における一種のカタルシスみたいなものであったのかもしれません。
その場所がかつて川であった可能性を示すさまざまな物は「暗渠サイン」という言葉で呼ばれています。「暗渠ハンター」の高山英男さんに暗渠サインについて解説していただきました。風呂屋に金魚屋、杉並区なら金太郎……。これらの混沌に「暗渠サイン」という名前が与えられ、そこにひとつの世界がたちあがります。言葉というものがもつ力の大きさを感じました。
さらに、西荻郷土史にくわしい野田栄一さんのディープ解説は、さらなる「物語」を示唆する刺激的なものでした。

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かつて「ドブ」とだけ呼ばれていたものに「松庵川」という立派な名前が与えられ、再び命を得はじめている瞬間に、わたしたちは立ち会っています。松庵川の物語は、実はまだ始まったばかりなのかも。川が名前を取り戻す……まるで『千と千尋の神隠し』ですね!

名前を得るということで言えば、イラストレーターのさくらいようへい氏は、この探検を機に世界でただ一人の「暗渠画伯」の異名を持つこととなりました。暗渠画伯の今後の新作に期待しつつ、西荻案内所は西荻に埋もれているさらなる「物語」を探していきたいです。

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