「井草川の歴史と文化」参加記(18.04.14)

去る4月14日(土)、井荻まちづくりラボが主催する「井草川の歴史と文化」まち歩きとお話に参加するために、西武新宿線の井荻駅方面に行ってきました。

井荻と西荻の関係

 

井荻駅。西荻窪駅とはまず路線も違うし、まあ近いといえば近いけど、全然関係ないじゃん、とお思いの方もいるかもしれません。でも西荻には「井荻」小学校があり、毎月の手しごと市会場も「井荻」會館。実は井荻と西荻とには浅からぬ縁があります。西荻窪駅北側はかつての井荻村(のち井荻町)。井荻町は杉並区のもととなる4つの町(井荻町・杉並町・和田堀町・高井戸町)のひとつ。下井草あたりまでを含む杉並区北西部が旧井荻町で、もちろん井荻駅周辺も含みます。ちなみに井荻というのは合成地名で、井草と荻窪から1字ずつ取って井荻となったといわれています。

現在の西荻北3・4・5と善福寺1・2丁目を井荻1〜3丁目としていた時代がありました。1932(昭和7)年、杉並区の誕生とともに井荻町が消滅。それで井荻の名を残そうと、井荻町に功績のある内田秀五郎さんの生地である小字「原・北原・寺分宿」あたりを井荻1〜3丁目としたのです。

一方、井荻駅は1927(昭和2)年、隣の上井草駅・下井草駅と同時に開業しました。このころはまだ杉並区になっていませんから、井荻町に井荻駅ができることになんの違和感もなかったでしょう。

というわけで、ややエリアを離れて2つの井荻が誕生してしまったというわけ。井荻1〜3丁目はその後、1964(昭和39年)に消滅。小学校や井荻會館にその名を留めるのみとなり、現在、「井荻」といえば、西武新宿線の井荻駅とその周辺のことを指し、西荻北一帯のことだと思う人は稀でしょう。(地図は井荻消滅直前の1963年のもの)

 

気になる井荻

昨年、松庵の「アトリエすゞ途」で開催した『井草川と縄文と』。吉村生さんと髙山英男さんの暗渠マニアックコンビと、古墳で縄文のスソアキコさんが西荻で出会い、その共通項として見出したのが井草川でした。今は暗渠の遊歩道となった井草川。その上流部からは、都内唯一の縄文時代の標識土器「井草式」が出土しています。私たちが西荻のことをいろいろと調べていく中でそれぞれ道を示してくれた吉村さん・髙山さんとスソアキコさんが、井草川というフィールドでスパークしたのが昨年の『井草川と縄文と』でした。展示に先立っての調査ツアーにも同行。その時の様子はこちらに。

場所としての西荻案内所の最終展示「松庵川展」の時にも、井草川ツアー「暗渠花見酒マラソン」ここにレポートあり)をしたことがあります。私たちは井草川を通じて、「井荻」という場所を知りました。

井草川をさて置いても、井荻っておもしろい状況にある駅だなあと思います。線路で南北が隔てられるだけならまだしも、駅前が環八通りでまっぷたつに別れていて、結局のところ駅を中心にが4つのエリアに分断されているのです。駅を中心に4つに別れている街で思い出すのは、例えば下北沢や自由が丘。でもこちらは分断するものがどちらも鉄道で、乗り換え駅としての活気があります。井荻の場合はその片方が幹線道路。爆走する自動車がひたすら井荻トンネルを通過していきます。でも実は、駅前にはほとんど車が入ってきません。意外と歩きやすいんです。

この分断をネガティブにとらえるか、それともなにか別のアイデアにつなげていくか。ちょっと特殊な街の事情を逆手に取るのも面白そう。そんなことをぼんやりと考えました。駅のすぐそばに井草川の遊歩道があって、そこでは5月13日まで「井草川と井荻村」写真展をやっています。

 

野田さんのお話とまち歩き

ここからようやく本題。今回の講師&案内人は野田栄一さん。野田さんはこれまで集めてきた資料にプラスした新資料も出して、井荻村そして井草川の歴史を紐解いていきます。井草川源流域にほど近いエリアのパノラマ写真などは初めて見ました。後半は実際に井草川を歩きます。駅前の遊歩道沿いにある味わい深いビルを見上げながら西へ。

杉並区内暗渠沿いの名物・金太郎に出会います。こちらの金太郎は比較的保存状態が良い方ですが、惜しいことに顔が削られています。惜しい。

井草川の昔写真といえばこれ、と野田さんが出してきたのが、タブレットに映し出されている写真。子どもたちが井草川で遊んでいます。野田さんは今回、この写真の撮影位置を特定したと発表。その場所がこちら。おしゃれにぼかしたのが逆に大失敗しているのですが、左のぼやけたアパートがその名も「リバーサイド」。まさに川の痕跡です。井草川暗渠の(マニアックな)見どころのひとつ。

 

井荻のこれから

今回の展示とお話とまち歩きは、「井荻と遊歩道(旧井草川)のこれからを考える」というサブタイトルがついていました。井荻のみなさんは、暗渠の具体的な活用をこれから模索する気なんだな、と感じました。井荻駅のすぐそばには井草川暗渠があり、デッドスペースとして何にも活用されずにいます。今後そこでフリママルシェ小さな音楽イベントなどをやるのは、近い未来の当然の流れなんじゃないかなと予想しています。やる人さえその気ならすぐに実現しそう。駅前の暗渠エリアは道路に隔てられて東と西に分かれています。会場Aと会場Bを回遊できるようにするのもありかも。不便が逆に楽しい気がします。

自動車が素早く通過していく。その通過がスムーズになっているせいか、逆にぽっかりとヒューマンスケールな場所が生まれている。それが現在の井荻駅の地勢。井荻の魅力が花開くのはこれからかもしれません。

 

 

 

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