西荻の更地の記憶 (180816)

西荻に更地が増えてきました。といっても、あっという間に次の建物ができて、そこに何があったかの記憶は、どんどんうすれていきます。こわいくらい。

更地1 駅前の喜久屋とドコモとすき家の跡地

喜久屋の更地
2月に西荻窪駅北口の「顔」ともいえた喜久屋さんがおしまれつつ閉店しました。喜久屋の上野山さんへのインタビュー記事が「西荻春秋」というサイトに詳しく載っています。喜久屋さんといえば、大手輸入系スーパーに引けを取らない品揃えでありながら、そういったスーパーにはないものを独自に販売してもいました。なかでも、ひな祭り時期の恒例「金華糖」は人気でした。金華糖は西荻北の雑貨店Loupeさんが引き継いだのは記憶にあたらしいところ。
11月には喜久屋さん跡地に有名食料品店ができるともっぱらの噂。すでに求人が出ています。
いずれにせよここは、都市計画道路・補助132号線にかかっていて、2020年頃から順次、物件調査・用地折衝に入っていく場所でもありますので、長いスパンでいうと、今後もさらなる変化が予想されます。道路拡張で道幅が広くなれば、それだけ歩きやすくて住みやすくなりますね、などと純粋な気持ちで言えないのは、私がひねくれ者だから? どこの駅を降りてもおんなじにならないよう、それぞれの街の魅力をしっかり踏まえながら変化してほしいなあと思います。

更地2 西荻デパートとグルメシティ

西荻デパートの更地
戦後すぐからあったマーケット「西荻デパート」と、その隣のスーパーマーケット「グルメシティ」のところがあっという間に更地になりました。かなり広い。ここにはどうやらマンションが建つようです。西荻デパートは昭和のマーケットの雰囲気が最高でしたが、時代の波には勝てず。
それにしても、先日この更地を見た時、あれ、ここってなんだったっけと、立ち止まってしまいました。あれだけインパクトのあった西荻デパートなのに、すぐには思い出せなかった自分にびっくり。

更地おまけ 太田省吾さんのこと

更地で一つ思い出したことがあります。劇作家・演出家の太田省吾さんは西荻窪に住んでいました。品川徹さんや、先日亡くなられた大杉漣さんらとともに、転形劇場という劇団をつくり、身体負荷の高いスローモーションで人の心の内側を表現していく「沈黙劇」で、日本の現代演劇を牽引した一人です。思えば私が初めて西荻に来たのも、太田省吾さんのお宅に演劇雑誌の取材で訪れたときのことだったように記憶しています。
その太田さんの代表作の一つが、その名もズバリ『更地』という芝居です。
91年初演の『更地』は、岸田今日子と瀬川哲也の二人芝居。更地になってしまったかつての住処を一組の夫婦が訪れ、その場所の記憶を回想していく。記憶や念を舞台化していくというのが、太田さんの一貫したモチーフです。
だから更地を見るとつい、太田省吾さんのことを思い出します。そして、そこにだれかの記憶がただよっていることをぼんやりと思ってしまいます。
太田省吾さんも喜久屋でおつまみの買い物したりしたのかなあ、なんて思うわけです。

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