山形に行ってきた(7)温海で和亀捕りのおばちゃんに出会う

(前回まで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。温海温泉に一泊。

温海温泉は、前日に泊まった瀬見温泉と比べると活気があります。最上町出身のナベさんは、「瀬見温泉もこんなふうになったらいいのになあ。いつも朝市やってるし……」としきりに言ってましたが、活気だけを求めて温泉に行くわけではないですからねえ。瀬見温泉の雰囲気、あのままでじゅうぶん魅力満点ですよ。

さて、宿泊した「かしわや旅館」はいかにも「温泉旅館」の風情がありました。受付で渡された鍵はルームキーではなく、金庫の鍵。ふすまなので部屋鍵がないんです(くるくる回す内鍵はついてました)。

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翌朝は寝すぎで、毎朝やっているという朝市には間に合いませんでした。朝食をいただいていると、床の間に目がくりっとしたこけしがあるのに気付きました。

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こちらのこけし、その名も「温海こけし」。どこで販売をしているのか旅館の方に聞いてみたら「いや〜買えないですよ。大人気で、みなさん3ヶ月以上は待ってますから」。あとでわかったのですが、当今一二を争う人気のこけしだったのです。

朝市後の温海の町をぶらぶらすると、その「阿部こけし店」はすぐに見つかりました。まだ朝でしたのでお声がけはしませんでした。

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あつみ名物の「栃餅」を手に入れます。旅館やお土産屋さんでは「元禄餅」という求肥菓子を猛烈推ししていましたが、よくあるタイプのお菓子であまり魅力を感じませんでした。お店の素朴な雰囲気もあって、こっちが期待大。あとで電車の中でいただくことにします。

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バスで海沿いにあるあつみ温泉駅へ移動。出発までの時間があるので、すぐそばの海にいってみることに。ちょうど一人のおばちゃんが、先に鈎のついた竿を持ってなにかを捕ろうと海に向かうところでした。

「それでなにを捕るんですか?」「ん?和亀だ」??? 和亀とはいったい?
そのあと和亀についていろいろ説明をしてくださっているようなのですが、おばちゃんは本格的な山形弁のため、ほとんど内容を把握できず。……どこに行ってもミシシッピアカミミガメだらけの昨今、国産のイシガメあたりを捕まえて売ったらお金になるのかしら……でも海でどうして淡水亀?? その時、はっ!と気づきました。和亀ではなくワカメであることに。一通りはなし終えたあと、「へば〜」と私たちに別れを告げ、おばちゃんは颯爽と海に向かって行きました。

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(すいません、次回こそ本当に最終回です)

山形に行ってきた(6)聖地に近づくその2

(前回まで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。余目駅でナベさんと別れ、鶴岡に向かいます。

最初の回(こちら)でも書きましたが、山形県というのは、4つのエリアにわけることができます。村山置賜(おきたま)、最上庄内です。ナベさんがしきりに「うちは最上なんだけど、貧乏なんだよね〜。それに比べて庄内は、お米はとれるし北前船は来るしでお金があったわけ。家の大きさがちがうんだから」とつぶやいてました。山形県内でいちばん豊かな土地、それが庄内の酒田・鶴岡です。

ナベさんと余目駅で別れて羽越本線で鶴岡へ。羽越本線に乗るのは3年ぶりのこと。寝台特急あけぼので通過して以来です。そのあけぼのも、すでになくなってしまいました。新幹線網の整備がそれだけ進んでいるということなのでしょう。どんどん便利になっているような気がしますが、実際のところ、ただ忙しくなってるだけで、旅のいいところが失われているのはもちろん、「快適さ」も失われてきているような気がします。佐渡に行く時だって、速いジェットフォイルよりカーフェリーのほうが快適な気がするのは私だけでしょうか。

余談ですが、新幹線が通ったことで「おらが村」がちゃんと発展したところってあるのでしょうかね? 東京に吸収されただけじゃないですか? これには「ストロー効果」という言葉がちゃんとあるそうです。もし仮に経済的に上昇したとしても、すごく大事なことを失っちゃったりしてないかしら……。

脱線しました。
さて、鶴岡ではどのように行動しようか、2つの選択肢がありました。一つはバスに乗り、羽黒山方面に向かうというもの。頂上にある出羽三山神社に行けば、一気に羽黒山、湯殿山、月山の3つをめぐったことになってしまうという、たいへん効率のいい参拝となります。また、入口にある羽黒山五重塔は山形県を代表する国宝で、山寺とならんで「山形県」のアイコンであることは言うまでもありません。ただ、こちらのコースを選んだ場合、それだけで一日が終わってしまう、ということがあります。
もう一つは、鶴岡市立加茂水族館に行くというコース。クラゲの水族館として、全国的にも有名なのです。こちらだったら、見学後に鶴岡市内に戻ってのまち歩きもできそう。

というわけで今回は羽黒山はあきらめ、水族館に向かうこととなりました。駅前でバスを15分ほど待ち、約30分で到着です。

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入場者数で危機に瀕していたというこの水族館が、クラゲの展示を始めたのは2000年ころ。それが大ヒットし、現在の年間入場者数は、最ピンチ時の10倍くらいで高め安定。すごく珍しい海洋生物が必要、ではないのですね。とどのつまり、アイデアと愛、なのだと思います。

ウミネコのエサやりですよー」の館内アナウンスで、人がどどっと移動。行くとウミネコが飛来し、放った餌をついばんでました。海鳥へのエサやりならば佐渡のおけさ丸のほうがすごいぜと密かに思いつつ(笑)、その後ろに灯台を発見。山上の神社と灯台を見つけたら行くことにしています。

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この小さな灯台は、荒崎灯台というそうです。灯台に来ると「着いたぞーッ!」って感じがするもんだから、旅行のさいには(もしあれば)なるべく行くようにしています。灯台のある高台から大海原を眺め、はるか先に住んでいるだれか知らない人たちのことを考えてみたり。灯台という小さな「世界の果て」が、同時にどこか別の世界への入口でもある、そんなことをイメージしてしまうのです。

さて水族館も灯台も堪能したし、次はバスで鶴岡市内へ……と思ったら、なんと1時間以上もバスが来ないことが判明。とりあえず腹がへってきたので、水族館内のレストランで食事をしながら、時間つぶしをすることに。

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名物のクラゲラーメンを注文。魚介出汁の効いたほっとする味。クラゲだけでなくキクラゲも載っていて、食べ比べ(?)ができるんですね。「あれ、キクラゲってクラゲの仲間だっけ?」とか、バカなことを考えつつおいしくいただいてると、携帯電話のベルが鳴りました。あっ、ナベさんだ。
「どう、楽しんでる? 思ってたより早く終わったから、このあとまた案内できるよ〜」……ほどなくしてナベさんと再合流であります! ありがたや〜。「この後どうする予定? 今からなら羽黒山も行けるよ」……!!!!!! まさか、2つのコース選択肢で諦めたはずの羽黒山に行けることになるとは!ナベさん号はかっ飛ばしで羽黒山に向かいました。

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ナベさん号は軽やかに、羽黒山五重塔出羽三山神社をまわりました。乗用車なしだとこの2つは、バスを一旦下車して五重塔を見たあと徒歩で1時間かけて登るか、再度バスに乗車して終点までいくかなので、やたらに時間がかかるのです。

出羽三山神社前には鏡池という池があります。古来その池に銅鏡を奉納するのがならわしなのですが、ナベさんいわく「ここの池に沈んでる銅鏡、何枚か引き上げたらもう、大変なことですよ〜」。たたりが、とかではありません。あくまで骨董屋目線。
そうそう、ナベさんの仕入れは、ものすごく良かった、わけではなさそうですが、「○○○○の絵があったんだよね〜」と、それなりに好首尾の様子。○○○○、伏せ字にしてますが、私でも知ってる有名人!

森の空気をたっぷりすいこみ、車でササーッと下山、しようとした時、車道脇に「重要文化財 正善院黄金堂」の標識を見つけました。ナベさんが「へえ〜。知らないから行ってみようか」ということで脇道に入っていきます。そこは手向(とうげと読みます)という地区で、静かな宿坊街です。観光用の大型バスなどはこの道を使わず、さっきまで走ってたメインのバイパス道路を使います。観光スポットだけおさえたアリバイ作りの旅でなければ、ぜひ立ち寄ってほしいエリアです。こっちが本来の参道。正善院はその地区にあるお寺です。たどりついた黄金堂は、まさに改修中で、ぽっかり開いた脇扉から中の様子がちらり。外からも確認できる巨大な脚は金剛力士像のようです。入口の山門にも金剛力士像があったのに、お堂の中にもいるのはちょっと珍しいですよね。お寺の方に「写真は撮らないでね〜」と注意をいただきつつ、お話を聞くことに。

ここにはね、もともとこのお寺のご本尊だけでなく、羽黒山の出羽三山神社のところにあったお寺のご本尊(三山大権現)もいらっしゃるんですよ」。ははあ、廃仏毀釈だ。後で調べたところによると、羽黒山頂に寂光寺というお寺があって、その大金堂が羽黒山の中心だったのですね。それが明治の神仏分離令で廃寺になり、本地仏がここに引き取られ安置されているのだそうです。羽黒山は特に神仏習合の色濃い場所。「やっぱり本来の場所に戻し、本来の信仰に還るべきなんですよ」とお寺の方。聞きようによってはなかなか過激な発言! ということはあの金剛力士像も元来山の上にあったものなのかもしれませんね。

杉並区と練馬区の境界あたりの青梅街道、オリンピック向かいあたりに「出羽三山供養塔」というのがあるのをご存知でしょうか。江戸時代、出羽三山に行った記念……というか、近所の人への霊験のおすそわけのために、この塔を建てたのです。西荻からはるばる羽黒山まで歩いて行ったのだろうなと思うと、なかなか感慨深いものがあります。

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そうそう、正善院黄金堂の改修は終了したようです。秘仏の本地仏も近日ご開帳とか(ここ参照)。これを機に行ってみるのもいいかもしれません。

このあと、鶴岡市内に戻り、梅津菓子舗でからからせんべいほかを入手したのち、2日目の宿、温海温泉(あつみおんせんと読みます)へ。ナベさん、「ここまで来たら山形道より新潟まわって帰ろうかな」と言い残して一足早く東京へ。お気をつけて!(つづく。たぶん次がラスト回です)

山形に行ってきた(5)喜至楼その2〜五月雨最上川

(前回まで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。瀬見温泉の“要塞旅館”「喜至楼」で朝を迎えます。

山形の温泉は湯量が豊富ですからね。本当に一日中いつでも入れるんですよ。まずは起きがけにひとっ風呂。男性専用の小さい風呂場の脱衣所にある木彫は金太郎でした。クマと金太郎の押し合い。

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昨日はもうすっかり暗くなっていたので館内の様子がよくわからなかったのですが、風呂あがりに再度館内をめぐります。本館の玄関あたりは木彫レリーフがふんだんに使われていて、とっても豪華です。モチーフは恵比寿大黒、鶴亀、松竹梅、福助などなど、めでたいものづくしで、もう大好きなやつばかり。

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前の記事で「素泊まり」って書いちゃったんだけど、朝食付きプランにしてたんでした。朝ごはんはシンプル。豪華目のチョイスもできるんだけど、こっちで正解です。旅館のごはんって食べきれないくらいの量が出てくるのがちょっと苦手で。鮎の干物がアクセント。ごはんはさすが山形のツヤで、きもちよくいただきました。

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昨日の夜には閉まっていた「売店コーナー」が開いてました。なんでカギカッコつきなのかというと、ここではなにも売ってないのです。往時の旅館をしのばせる「売店の展示資料」とお考えください。この売店にあるたばこの小売価格表、ハイライトが「70円」、ピースが「40円」となっていました。売店ではない売店を、旅館の方が毎朝夕にちゃんと開け閉めしているのです。これをアートと言わずしてなんといえばいいのでしょうか(笑)。

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別館の食堂奥にある大広間をちら覗きしたら、ど真ん中に卓球台が。温泉といえば卓球というステレオタイプがいつ始まったのかはわかりませんが、朝のやわらかな光につつまれた卓球台は、この温泉旅館という営みのスケールの大きさを無言で語っているようでした。

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8時には出発。仕入れで酒田方面に向かうナベさんの車にまたも便乗。庄内方面へむかうことになります。喜至楼、お世話になりました。

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 ***

車は最上川に沿って、酒田方面に向かいます。あいにくの雨ですが、五月の雨といえばまさしく「五月雨をあつめてはやし最上川」ではないですか。東北旅行の大先輩、松尾芭蕉先生も同じ季節の同じ風景を見たのかしらなんて思うと感慨深いですね。

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寄り道はしませんでしたが、途中にあった道の駅がまさかの韓国風。山形あたりの農家さんに韓国人女性が嫁いできた時期があったという話を聞いたことがありますが、それと関係あるのでしょうか。なんとも唐突で興味深いです。

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ナベさんは余目駅まで送ってくれました。ナベさんがいなければここまで来るのにももっと時間がかかったろうし、見えないものもたくさんあったと思います。なによりここには書けない裏話をたくさん聞き、終始楽しく山形をめぐることができました。ナベさんが酒田でいい仕入れができるよう祈りながら、羽越本線を南へ。鶴岡に向かいます(つづく)

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山形に行ってきた(4)瀬見温泉の喜至楼その1

(これまで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。だらだらと小出しに書いてた旅行はようやく一泊目の瀬見温泉に到着します。

夕暮れの山形路、新庄から瀬見温泉へ向かいました。私はどうもホテルのベッドというのが苦手でして、宿泊はなるべく「和室」にしています。どのシーツの間に寝たらいいんだか、落ち着かないんですよね。
当初はこけしのメッカ・肘折温泉を候補に入れていたのですが、アクセスが不便なので今回は却下。料金は安めで交通の便も悪くなく、ナベさんの負担も軽そうということで、ナベさんの故郷・最上町にある瀬見温泉に泊まることにしました。

瀬見温泉は陸羽東線沿いにあり、同名の駅があることからもわかるようにアクセスは便利です。小国川という川のそばあるので景色も良さそう。その瀬見温泉で、どこに宿泊するのか。ナベさんいわく、「そりゃあ観松館が一番安心だよ」と即答。でも、図書館で借りた山形の温泉ガイド本やインターネットで調べていましたら、ひときわ異彩を放つ旅館を見つけてしまいました。「喜至楼」。キシロウと読みます。

喜至楼についてナベさんに聞いたら、多くを語らず「え、喜至楼なの? フッフッフー」と、いつものポーカーフェイスな笑顔であります。

西荻にも「古民家カフェ」というものがありますが、歴史ある建物でしっかり営業をされているというのはそれだけで魅力がありますよね。しかもそこに宿泊できるとあればなおさらです。喜至楼は、建物の歴史においては山形県でもトップクラス。本館と別館があって、その本館がより古い建物。いまはオフシーズンなのか、ウェブサイトからの予約も、直前にもかかわらずすんなり入りました。あまりにそっけないので、本当に予約されたのかどうかちょっとだけ心配をしたのですが、無事に予約は入っていました。それにしても宿泊が安い! しかも本館はさらに割安。それなら絶対歴史のある部屋に泊まりたいというもの。多少の不便や多少のオバケ(※会うことはありませんでした笑)なども仕方ありません。なにより、湯治場の雰囲気をちゃんと伝える貴重な建物に泊まることができるのです。

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そんなことでやってきました! 喜至楼本館。木造四階建。西荻なら文化財確実の築150年(一部)。山形県の文化財に指定されていても全くおかしくないのですが、そういうのにはまだ指定されてはいないようです。右の入口は日帰り入浴者用。宿泊者は裏手の別館にまわります。素泊まり予約だったので食事は近くの「川の駅」(ローソンでした。近くといっても歩いたら30分位かかるかも……)でゲットし、ナベさんとはここで別れ、いよいよ中へ入ります。

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別館の方もなかなかの迫力。左は大宴会場。センターの円形部分は食堂。本館とは廊下でつながっていて、別館1Fが本館の2Fになります。すでに薄暗い時間での到着になってしまったので、あちこち回れなかったのですが、宿泊する部屋に行く途中の廊下にはいろいろなものが陳列されていました。

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つやのある廊下をぎしっと音を立てながら歩いて行くと、そこには往時の喜至楼や瀬見温泉のにぎわいをとらえた貴重な写真、旅館で使っていた番傘、ガラス棚におさまる縄文土器・鏃・石斧などなど、貴重なもののオンパレード。もちろん建物自体にもみどころがたっぷりです。宿泊の部屋は予定よりおそらくいい部屋に泊まらせてもらえているようです。館内のあちこちにある木彫装飾が部屋の中にもある角の特別室。宿泊の人が少なかったので宿の方が気を使ってくださったのだと思います。

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山形の温泉、ここまでに足湯ですが天童温泉銀山温泉とまわりました。ちょっと足を入れると思わず声を上げてしまうほどに、いずれも湯温が高いのです。ここ喜至楼も熱め。もちろん源泉掛け流し。ほんの少し硫黄のようなにおいがあり、飲むこともできます。こちらのローマ式千人風呂の大迫力! 宿泊者が少なかったため、完全貸切状態で、写真もバッチリとっちゃいました。いちおう「混浴」なのですが、女性にはハードルが高いでしょうね。 ほかにもいくつもお風呂があり、そちらは男女別。脱衣場の木彫は、館内彫刻とちがって素朴な味わい。千人風呂ははなさかじいさんですね。ともかく見どころが多いのです。

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とっぷり夜になってしまったので、館内見学は翌朝にし、もう寝ることに。部屋に用意されていた布団の生地が気になり、ちょっとシーツをはぐってみたら、なんとも独特の模様。縄文土器?いやちょっと違うか。(長くなってしまったのでつづく)

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山形に行ってきた(3)勝負師、北へ

(これまで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。山形市内から車で北に向かいます。

さくらんぼマークがかわいい山形銀行前にてナベさんに再び拾われた私たち。ナベさんの「もうなんか食べたの?」の言葉で、さっき冷やしラーメンを食いっぱぐれていたことを思い出しました。そうだ、事前調査で3票も入った「龍上海」というラーメン屋はどうだろ。そこで「龍上海」ってどうなのよとそれとなく聞いたらば、ナベさんの顔色がわずかにくもりました。「もちろんおいしいんだけどねえ、ちょっと重いんですよね〜」。こってり系。たしかにこのタイミングではちょっと苦しいかも……。「そうだ、ラーメンとおそばのどっちもある店に行きましょう」日本そばラーメン、ファミレスならともかく、専門店でなんとも不思議なくみあわせ。移動開始です。

ナベさん、仕入れのほうはともかく、帰り際にいい感じの蔵を見つけて、ちょっと立ち話をしてたから時間がかかったんだそうです。「骨董の仕入れは駆け引きだからね〜」というナベさん。車内での骨董トーク、ここには詳しく書けませんが、勝負師のドキドキハラハラが満載。楽しくおしゃべりしているうちに、やがて「勝負師」の街にたどり着きました。

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山形県天童市。将棋の駒の生産日本一ということで有名です。どこもかしこも将棋の駒。そして温泉。将棋に興味のない人の肩身がせまそうな街です。たどりついたのは「水車生そば」という、大きめのお店。こちらの名物が「鳥中華」という名前のラーメン。ナベさんいわく、「なにしろ日本そば屋なのに客の8割が鳥中華を注文するんだから」とのこと。すっかりラーメン脳だっただけに期待がふくらみます。でもちょっと、日本そばも気になるところ。私は日本そばをいただくことにして、鳥中華はちょっとわけてもらうことにしました。食事を待つ間にちょっと外へ。

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「水車生そば」、なかなか観光地風の佇まい。将棋の駒モチーフももちろん取り入れられてます。おとなりにあった「栄春堂」というお店は将棋の駒のお店のようなので、ちょっと拝見。作業スペースではちょうど、「左馬」のような将棋駒の置物をつくっているところでした。でも「左馬」ではなく大きく男性の名前が彫られた駒。きっと誕生祝いとか、そういう記念品として人気があるのでしょうね(余談ですが、左馬というのは、左右反転した馬の字が彫られた縁起物の駒。ウマが逆でマウ=めでたいとのイメージらしいのですが、ちょっと強引なような……。そもそも馬の字が左を向いてるから左馬らしいのですが、馬の字の形成過程から考えると、もとの字が左馬で左右反転させたら右馬になるはず……。真実やいかに)。「栄春堂」さん、ちらっと見て「水車」に戻ってしまったのですが、あとで調べたら、将棋の駒だけでなくこけし工人さんでもあったようです。ちゃんと店内見ておけばよかったかも。

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というわけで、鳥中華と日本そば。
鳥中華はさっぱり味で好きなやつでした。ホッとしました。さすが8割が注文するだけのことはありますね〜。

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日本そばは「客の8割が鳥中華」の話を聞いてから、まあまあなのかなと思っていたら、いやいや!太めでしっかりしてるけど硬すぎず、とっても好きなやつでしたよ。昼はとっても混雑する人気店なのだそうです。ほっとする味だから地元の人が多いんでしょうね。

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ごはんを食べたらあとは今日の宿に行くだけなのですが、「まだ時間があるからちょっと銀山温泉でも行ってみる?」と、ナベさんのやさしい言葉。小雨交じりの銀山温泉は100年前に迷い込んだかのようでした。売店で買った尾花沢スイカサイダーも美味でした。あとでどこかでまとめ買いしようと思っていたのですが、もう出会うことはできませんでした。山形は広いですね。

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夕方になって、あとは今日の宿、瀬見温泉へ。ナベさんの故郷はここからさらに上流にあるのだそうです。行きがてら、ナベさんたちの瀬見温泉「武勇伝」を聞くのですが、やっぱりここには書けない内容でした。(つづく)

山形に行ってきた(2)「旅のロマン」を求めて

(これまで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入れに便乗して山形へ。山寺から山形市内に向かいます。

JR仙山線で山寺駅から山形駅へ。歴史ある地方都市ってたいてい、駅前が一番賑わっているわけではないんですよね。まずは中心部に徒歩で移動です。東京の、たとえば中央線各駅なら駅前が一番賑わってますよね。駅ありきで街が発展してきたわけですから当然です。都市の形成過程がまったくちがうんですね。というわけで事前調査で調べていた最近オープンのリノベビル「とんがりビル」がある七日町方面をめざします。

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そうだ、事前ききこみ調査で得た情報では、山形はラーメン日本そばがうまいらしいなあ。噂の「冷やしラーメン」屋が途中にあったんだけど定休日。また次の機会です。しばらく歩くと、すてきな洋傘店……の看板をそのまま使ったカフェが出現。壁面剥がしっぱなしでコンクリートむき出し、店内の椅子が全部違っていて、おしゃれ系であります。入ってちょっと休憩。

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店内でコーヒーいただいてましたら、山形美男と山形美女が颯爽と現れ、迷いなくカウンターのハイスツールに座りました。お店の方のお知り合いでしょうか。
そこから漏れ聞こえる会話の内容まではよく聞き取れませんが、地元トークに花が咲いてる風なのですが、あれ? どうやら山形弁をまったくしゃべってない! っていうか、このカフェの雰囲気も含め、東京との差異がまったくないんですね。西荻と比較したらばなおさら、七日町のほうが東京っぽいですよ。
そりゃ、新幹線に座ってりゃ、あっという間に東京ですし、ほぼ「東京」なのは当然ですよね。

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そんな私どもは「旅のロマン」を求めて、その近くの商業ビル「ナナビーンズ」に入ります。街のど真ん中にあったデパートが閉店して、建物がぽっかりあいちゃった、というのが、どこの地方都市でも問題になっていますが、このナナビーンズも元は山形松坂屋(この記事を読みました)。公共系の施設として再活用されています。その5Fに、やまがた伝統こけし館があります。

こけし館は入場無料。個人蔵の伝統こけしコレクションのほか、こけし工人さんがつくっている木のおもちゃなどを展示しています。平日なので貸切状態。受付にいた女性の方がこけしの解説をつきっきりでしてくださいました。そしてこの女性がはっとするほどの山形弁!ようやく「旅のロマン」をゲットできました! やまがた伝統こけし館に行くなら日曜がオススメ。こけしの絵付け教室があって、工人さんが指導をしてくださるのだそうです。もちろん平日に行ってどっぷりこけし解説を拝聴し、「旅のロマン」を得るのもいいですね。

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そのすぐ近くにあるとんがりビルに行きました。併設の食堂は満員で入れませんでしたが、山伏の坂本大三郎さんが運営する「十三時」というお店が一階にあり、そこを覗いてみました。野良仕事などでつかう暮らしの道具などがならんでいます。棚には坂本さんが世界各地で入手したと思われるさまざまなオブジェが飾ってあって(おそらく非売品)、山形の生活道具と違和感なく共存しているのが面白かったです。こちらで本を一冊買ったところで、ナベさんから電話。「そろそろそっちに合流できるよ〜」。

というわけで、ナベさんの車にふたたび同乗。こうなったらあとはもう、とやかく言わずに山形のプロにおまかせするのが上策です。車は北に向かいます。(またつづく)

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山形に行ってきた(1) 聖地に近づくその1

(これまで)骨董店・木土藍楽の渡部さん(ナベさん)の仕入に便乗しての山形行きが決定! まずは山寺へ参ります。(一つ前の投稿はこちら

快晴。朝4時に西荻を出発。ナベさんの車は快調に走り、午前中には山寺着、私たちはそこでいったん降りまして、ナベさんと別行動になります。

山寺といえば……泣く子も黙る山形県屈指の観光地!
山形なら絶対にここ! 山形県のおすすめ人気観光スポットランキングTOP20」というサイトの第1位が、この山寺。

観光地らしい観光地、というのは人も多いし、ふだんは避けることが多いのですが、幸い、朝早かったので人もまばら。いい時間帯に来ました。山の風が気持ちいいです。

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その前に、山寺のおさらい。
本当の名前は立石寺。通称の通り、山の中のお寺です。かの有名な「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句を松尾芭蕉が詠んだ、その歴史1200年になろうかという由緒ある場所です。一番上の奥の院に行くまでに約1000段の階段があり、1段上がるごとに煩悩が消えていくのだといわれています。入り口階段上がってすぐが根本中堂。天台宗の本堂です。その横から階段が続き、奥の院は標高400mくらい。約1時間の登りとなります。

山寺はもちろんお寺なので、お墓があります。あの世とこの世の境界線。岩に直接掘られた石仏や、修行の場と思しき断崖や岩陰があり、亡き人を偲ぶ卒塔婆があちこちに立っています。根本中堂のとなりには日枝神社。このあたり、廃仏毀釈以前の宗教観が残っているのでしょうね。そのすぐ近くにある石のモニュメントは、こけし塚。木じゃなくって石でできたこけしというのにはかなりの違和感があります。後で調べたところによると、こけし作りに使った道具などを針供養みたいに供養するもののようです。

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杉の大木の間をぬって階段を上がり、仁王門を抜けたその先に奥之院大仏殿がありました。ここに、ムカサリ絵馬という村山地方独特の絵馬が奉納されているというのです。

若くして亡くなった子を持つ親が、その子が適齢期に達した時、嫁または婿をもらうという体で、結婚式が描かれた絵馬を奉納するのです。冥婚という風習です。立石寺のホームページを見ると、現在でも絵馬の奉納を受け付けていました。ということは、絵を描く専門の絵師も現役でいらっしゃるはず。いまどきのムカサリ絵馬師はPhotoshopとか使っているのかもしれませんね。奥之院と大仏殿の内壁面に、たくさんのムカサリ絵馬があり圧倒されました。お相手の絵は、実在の人物をモデルにはしてはいけないのだそうです。あの世に連れていかれるかもしれないから。撮影は憚られましたが、「ムカサリ絵馬」で検索するといろいろ見られます。ちなみにムカサリとは結婚のこと。「迎える」の語感でしょうか。

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それにしても驚いたのが、この奥之院の御本尊様。
寺のご本尊といえばふつう、大日如来、阿弥陀如来あたりと相場が決まっています。ところがこちらの本尊は、神社でもないのにまさかの! あやうく二拝二拍手一拝するところでした。実はご本尊はこの鏡の後ろにあるらしいです。かつての信仰がどのような形態を取っていたのかを推測することもでき、興味深かったです。昔ながらの信仰とムカサリ絵馬。人々の想いが凝縮した濃厚な空気が漂っているような気がして、なんとなく、あまり長くはいられませんでした。

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そこから降りて展望楼の五大堂でしばし休んだあと山を下り、ふもとの売店で玉こんにゃく。それとなくあった緊張感がゆるみます。

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ナベさんに連絡したら、「電車で山形市内に移動しててよ」とのことなのでJR山寺駅に向かいます。途中にあった山寺こけし店は残念ながらお休みでした。(つづく)

山形に行ってきた(0)旅行計画

骨董屋・木土藍楽の渡部さん(以下ナベさん)は、毎月のように車で山形に行くそうです。実家があるからというのもあるけど、メインは骨董探し。つまりビジネスです。そのナベさん、「山形行ったことないの? 行きだけなら今度乗せてってあげるよ〜」とおっしゃるもんだから、ついつい便乗、山形に行くことになりました。

というわけで旅行計画を立てることに。
まずは、私の中の山形知識をまとめてみましたよ。

山形といえば……

出羽三山月山・羽黒山・湯殿山修験道山伏、というのがまっさきに浮かびました。あと鳥海山。それから即身仏。国内の即身仏シェアNO.1! それが山形県です。
そうそう、あの絵馬ってどこだろ? 若くして亡くなった方の姿を似せた新郎に、花嫁を添えて、その人の結婚適齢期に奉納するというあの絵馬。「ああ、ムカサリ絵馬なら山寺の奥の院ですよ」と教えてくれたのが、西荻の考古担当、Nさんでした。山形まで守備範囲とは! それで以前、紅茶とこけしの西荻イトチさんが「私まだ、山寺には行ってないんですよね〜」とおっしゃっていたのを思い出しました。山形といえばこけしも有名。山形系、蔵王高湯系、そして肘折系。天童の将棋の駒。ともかく、あの世とこの世の境界線のものと、木のものが山形あたりには多いらしい。

食べ物だと有名なのはさくらんぼ。でもこれの旬は来月以降のようです。芋煮秋田ばる七尾のいものこ汁のうまさを知っている者としては、それと同じものが山形では「芋煮」と呼ばれていることは知っていました。あとはナベさんがときどき買ってきてくれた鶴岡の駄菓子

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まずは地図で、村山・最上・置賜・庄内の4エリアの位置関係を把握することから始め、クチコミ情報を集めてみることに。まずはやっぱり、ナベさんに聞くのがいちばんでしょう。
「そうね、山寺はまず行ったほうがいいよ。そこから降りてきた頃には合流できるから、他のところも連れてってあげるよ」
「食べ物はね、そばがうまいんだよ。あとは意外とラーメンがうまい。僕らはお店で郷土料理なんて食べないから、意外と知らないんだよ。お店で食べるのはもっぱらお寿司と焼肉。」……ほうほう。
「羽黒山もいいし、最上川下りもいいんじゃないの」……ふむふむ。
「あとはなんつったって温泉だよ。どこいったっていいんだから。銀山温泉、赤湯温泉、鶴岡の方の湯野浜温泉なんて、夕日がいいんだよね〜」。なるほど、温泉とこけしのつながりも見てみたいところ。

それからさらなるクチコミ情報をもとめ、Facebookの個人アカウントで、山形情報の「ゆる募」をかけてみました。
みなさんの「ここ行っとけ」ってところは、ざっくり以下のとおり。

出羽三山(羽黒山の神社)
冷やしラーメン(山形市内栄屋本店が元祖の冷たいラーメン)
金山(最上郡金山町・街並)
とんがりビル(みちのおく芸術祭関連の人や山伏の坂本大三郎さんが携わるリノベビル)
山寺(有名寺院=立石寺)
つる福の肉そば(山形市)
加茂水族館(鶴岡市・くらげで有名)
銀山温泉(雰囲気満点の秘湯で観光名所)
やまがたこけし館(こけし博物館・山形市内)
上山こんにゃく
小国城址(最上郡の城跡?)
蕎麦なかの(山形駅近く)
土門拳記念館(酒田)
最上川下り(観光の定番)
蔵王温泉大露天風呂(でかいらしい)
赤湯温泉瀧波(リノベ旅館)
龍上海(ラーメン)
そば処あおば(寒河江)
冷やし肉そば(たぶんすきなやつ)
龍上海山大医学部前店
かみのやま温泉(立ち寄り湯)
山田屋の富貴豆
まめやの富貴豆
大石田の次年子そば(山の中)
三津屋のそば(山形市内)
琴平荘のラーメン(海岸沿い三瀬)
どんどん焼き(ケンミンショーで紹介)
寒河江ダムのジェラート屋
むかさり絵馬
深沢不動尊(山形市はずれの谷にある不動)
悠創の丘(東北芸術工科大学裏・星がきれい)

おおおお〜!! すげえいっぱい! これまとめるだけでガイドブックができるかも!……とまではさすがにいかないでしょうが、ガイドブックでは得られないナマ情報を大量ゲット! それにしてもみなさん山形にお詳しい! 思えばほぼみんな、西荻で出会った人たちばかり。都会のいいところは、いろいろな土地の記憶を持っている人が集まっているところですね。それ自体が宝の山だ!

たんなる観光名所や、ガイドブック常連のお店でなく、コアな情報が入ってるのがいいです。深沢不動尊なんて、写真と地図で見る限り地元の人も近寄らなそうです。
それにしても蕎麦屋とラーメン屋のオススメが多いこと。どこかで必ず入らねば。龍上海というラーメン屋には3票も入ってるし。

初日はまず山寺に行くことが決定。ナベさんとそのあと合流するので、この日はスケジュールを立てないことにしました。
とはいえ宿泊地だけは先行して決めておかねばなりません。2つの温泉をハシゴすることにします。いろいろ調べたところ、ナベさんの故郷に近い「瀬見温泉」というのはどうかしら、というのに至りました。温泉郷のサイトで調べたところ、なんともよさそうな旅館を発見! すぐにネット予約しました。方角的には山形市から北に向かうので、米沢など置賜地方は今回は通らなそう。

いよいよ出発です。(つづく)

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【報告】松庵川展2(暗渠花見酒マラソン)

昨日の記事のつづきです。

西荻案内所の最終展示「西荻暗渠・松庵川展」、関連イベントとして実施されたのが「暗渠花見酒マラソン」でした。「マラソン」といっても走るわけではありません。桜を探して暗渠をめぐり、酒を呑む、ということなのです。1日目は松庵川、2日目はちょっと遠出で井草川へ。リードするのはもちろん、吉村生さんです。

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とにもかくにも、まずは暗渠へたどり着かないことには始まりませんね。「暗渠者」の二人の後ろをついていったのですが、この二人の暗渠に向かう足取りの速いこと! そこにたどり着かぬことには呼吸もできないというような緊迫感……いや、ご本人たちはまったく意識していないようですが……。(以下、「暗渠花見酒マラソン」井草川編です)

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暗渠の遊歩道に入り、暗渠のヌシであるネコにご挨拶。

つまみが足りぬと途中、井荻の焼鳥屋さん「千成」に立ち寄ります。こちらはテイクアウト専用。焼きあがるまでしばし待たねばなりません。この店の名店ぶりは、焼きあがるあいだの下記のようなやり取りで判断できました。
店主「で、タレにするのそれとも塩?」
ワタクシ「えっ、じゃあ塩で」
店主「……うちはね、タレがおいしいんだよ!」
ワタクシ「……じゃあそっちでお願いします……」
こういうややこしいおっさんがやってる店は、たいがいうまいと相場が決まってるんですね。

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それにしても、井荻辺りまでくると私の体感ではもう「太陽系のきわ」くらいの感覚ですね。環八を越えると落ち着きがなくなります(笑)。西荻のエッジワース・カイパーベルト。なにしろ西荻案内所の3年間、ほぼ西荻から出てませんでしたから、特に今回は歩いてここまで来てるだけに、探査機ボイジャーの気分です。はたして帰れるのか不安になってきます(帰れます)。

そんなことを考えながらテケテケと歩いていくと、桜が咲きはじめたばかりの公園にたどりつきました。「千成」の焼鳥袋をオープンして宴会開始。満開までにはあと数日ありそうでしたが、桜の木の下、参加者で楽しく交流できました。写真は公園の片隅にあったスローガン「やればできる」越しの一行。
こちらのやればできるタマゴオブジェは、杉並区名誉区民第一号であるノーベル物理学賞受賞者・小柴昌俊さんを記念しています。
思えば、地下深くに超純水を満たしたニュートリノ観測装置「カミオカンデ」と、地下水道の暗渠とはなにかつながりそうな……いや、両者はもうまったく関係ないのですが、そのうちなにかつながりが思いつくと思います(笑)。

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というわけで、偉大な小柴さんのことを思いながら、季節の訪れを愛でるツアーは現地解散。ほとんどの参加者は荻窪の四面道あたりまで一緒に徒歩で戻りましたが、その道すがら、暗渠者の高山さんが、ほぼ無意識的に低い方へ(つまり暗渠の方へ)向かってしまうのには驚きました。まさに川の流れのように、ゆるやかに下へ下へ。わずかな高低差も逃さない「暗渠センサー」が体内に内蔵されているのでしょう。まるでゲゲゲの鬼太郎です。その時に吉村生さんが放った言葉が印象深かったです。

「スリバチが好きな人は、地形を俯瞰したいからって上に上がろうとするんだよね。それって私たちにはまったくない感覚だから」

スリバチ者(三方を高いところに囲まれてすり鉢状になっている地形を愛でる人のこと)と暗渠者の違いというのはそんなところにあったんですね。
暗渠者たちに幸あれ!

【報告】松庵川展

西荻ラバーズフェス(3月20日)直後の3月22日〜28日で、西荻案内所の最終展示『松庵川展』を開催しました。

まず何も知らない方向けに説明しますと、「松庵川」という川は正式にはありません。松庵〜西荻南を通って善福寺川に向かう暗渠(あんきょ/むかし川だった場所にフタがされているところ)に、ある郷土史家が便宜的に「松庵川」と名付けたのです。西荻案内所ではこれまで、暗渠愛好家の吉村生さん・高山英男さんらの協力を得て、「西荻暗渠探検」(暗渠をめぐるツアー)とその報告会などを実施し、松庵川(地元民はもっぱら「ドブ」と呼んでいるそうですが)の見聞を深めてまいりました(見聞を深めた、というのは専ら、吉村さん高山さんの報告に対して「ほほう」「へええ」などと相槌をうつばかりなのですが)。
写真は暗渠画伯さくらいようへい氏による松庵川描き下ろし黒板イラストです。

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「ブラタモリ」などの影響もあって、いまや空前の「暗渠」ブーム? いや、まだまだこれからかもしれません。暗渠をめぐる楽しみは、まさに「裏側」を見るということでもあり、好奇心を刺激する要素に満ちています。その土地の生活史をたどるという楽しみもあります。暗渠遺物(それがあると暗渠がある可能性が高まることから、「暗渠サイン」とも言われています)を探しながら、水の流れを明らかにし、それと関わりながら生活してきた人たちの言葉に耳をかたむけることは、たんなる「お散歩」以上に、過去と現在をつなぎながら、未来の風景をも内包するような、スケール感を持っています。

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22日からの展示は、吉村生さんと相談して、「徐々に展示が増える」かたちになりました。けして展示物が間に合わなかったわけではありませんよ!!!
案内所の黒板には松庵川の地図パネルが掲示されました。暗渠蓋を模したグレーのシールが用意されていました。「暗渠化工事」と銘打ちまして、来場者が展示パネルの松庵川のところに貼っていくと、徐々に暗渠になっていく、というインタラクティブ(使ってみたかった言葉!)な展示となりました。

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最終日はこんな感じ。パネルも増え、すっかり暗渠蓋で閉じられました。
さてそんな最終日、とある暗渠愛好家の方が、自作の展示物を持参してきてくださいました。

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なんと、小学校の自由研究!! 暗渠!!!!!
透明なアクリル板をレイヤー状に配置し、立体的に風景が浮かび上がるという趣向。製作者のMくんも年度が変わって今は中学生。暗渠中学生の誕生! これで暗渠界の未来も安泰(?)です。(名前と学校名は消してあります)

さて、展示中にもいくつかイベントをやりました。高山英男さんによる「暗Q100本ノック」(暗Qとは暗渠クイズのことです)。呆れるほどのマニアッククイズ。高山さんの熟練パワポ芸も見事でした。
それから、2度にわたる「暗渠花見酒マラソン」。花見を想定した暗渠ツアーで、1日目は松庵川、2日目は井草川です。こちらについては次に報告します(つづく)。