国分寺と縄文と

先日までアトリエすゞ途でやっていた『井草川と縄文と』。暗渠と縄文のコラボが実現したこの企画、西荻案内所では各種展示資料提供のほか、宣伝フライヤーを作ったりなどなどやったわけですが、数日前、そんなことのご縁からか西荻案内所HPのメールフォームに、タレコミ情報が舞い込んできました。

国分寺のギャラリーでちょうど、縄文に関する展示をやっているというのです。実際に国分寺周辺で発掘された縄文土器や、各地で蒐集した個人コレクションのほか、縄文からなんらかの影響を受けた美術家たちの作品を展示する『縄文シャワー展示室展』。縄文ブームともいわれる昨今、国分寺でも同じような動きがあるんだなあ、すてきな情報をありがとうございましたという御礼のお返事を出しましたら、そのさらなる返信で、展示会場である「丘の上APT」兒嶋画廊についてのお話が書かれていて、その内容にびっくり仰天。画廊オーナーの祖父が洋画家の児島善三郎という人で、つまりこのギャラリーは児島善三郎の住居アトリエに立地しているわけなのですが、その善三郎が国分寺に居を構える前にアトリエを持っていたのが上井草。しかも杉並工業高校の裏あたり、井草川源流域の井草式土器が発見された付近に善三郎は住んでいたのです。

まさに縄文が結ぶ縁。善三郎が遺跡地から遺跡地に引っ越したのは偶然でしょうが、「縄文不動産」的にも、善三郎が生きた時代にしても、どちらでも一等地だったのでしょう。彼の作品からみても善三郎に縄文趣味はなかったようなのですが、その場所を継いだ息子さん・お孫さんが自宅の地面から出てくる不思議なカケラに興味を持った、というようなことはあったのかもしれません。しかも丘の上APTの建物をつくったのが藤森照信先生だって!? 約1年前、日帰り諏訪の旅で訪れた「神長官守矢史料館」とその近くにある「高過庵」などをつくった方でもあり、有名なところでは「看板建築」という言葉の発明者であります。神長官守矢史料館といえば、縄文時代からのものと思われる風習が残る諏訪大社上社前宮の儀式を再現した展示が強烈で、ここでも縄文とのつながりが。

国分寺・西荻・井草川・諏訪・児島善三郎・藤森照信……さまざまなパーツが複雑にからみあい、なにか一本の物語が立ち上がってくるのではないか(「暗黒神話」みたいに笑)、とそんなことをたしかめるべく(?)、さっそく国分寺に行ってみることにしました。

駅南口を降りて西へ向かうと、かなりの下り坂になります。その底が、野川の上流域。はしご式開渠の美しさ。

そこから登り返した住宅街の中に、ひときわ目を引く建物がありました。これが「丘の上APT」。いや〜知りませんでした。

外壁はトタンでしょうか。パッチワーク状に金属を貼り合わせたテカリのある建物で、天候によっても時間帯によっても印象がぜんぜん違うのでしょうね。その外壁に飾られていたのは……。

さて中に入ります。中には国分寺市から借りた付近出土の縄文土器のほか、

オーナーさん個人蔵の縄文土器と現代作家の作品が不思議に共存、しかもそこに児島善三郎の絵も入り込んできて、かなりの情報量!

兒嶋さんのコレクションの一部については、こちらのサイトに情報が上がってますが、サイトで紹介されているのはあくまで形になっているものや立派な破片だけで、現地の展示物にはこんな豪快なものまでありました。

ガラガラっとひと盛り。
ほか、萬鉄五郎、仙厓、岡本太郎、勅使河原蒼風、奈良美智などの作品が展示されていて、それらが作られた時期とかを超越して違和感なく共存していました。藤森建築の魔力か、はたまたギャラリーオーナーさんのしかけた魔術にはまったか。

ギャラリーの窓から見えたおとなり(オーナーさん邸)も藤森建築。野川の谷を隔てた国分寺市街と、この建物との対比。いやすばらしいです。銅葺きの外壁は建てた当初よりもかなり茶色になったそうです。やがては緑錆の色になるとか。

また国分寺駅に引き返すのもどうかと思い、そのまま西に行きます。ちょっと歩けば武蔵国分寺公園、その先には「お鷹の道」と真姿の池もあるのでそちらに足を伸ばすことに。

真姿の池湧水群の近くで泥根つきの枝豆を入手し、お鷹の道のおたカフェへ。湧水のコーヒーとスープカレーで休憩しました。
そのあとは西国分寺駅方面へ。途中、武蔵国分寺の門の前を通り、坂をだんだん上がっていくと、やがてやたらに広い道に。

車道より歩道のほうが広いこの道は古道。東山道武蔵路の遺跡地なのだとか。奈良時代の人がここを往来していたんですって。そこから先の左手はマンション群。
こんな看板をついつい写真に撮っちゃうのはまあしかたないとして……

道路の右手、つまり東側にホテルのようなオシャレ物件。立ち寄ることにしました。

最近オープンしたばかりの東京都立多摩図書館。こちらは雑誌と子ども向け・杉並区で言うところのヤングアダルト向け本を中心にした図書館で、中も広く充実。学生さんたちが陣取って勉強の真っ最中でした。中の写真は撮りませんでしたが、何時間でもいられます。

ちょっとギャラリーに行くつもりで出かけたのですが、西荻からわずかに20分位電車に乗るだけで、地方の観光地に来たような気分。緑も濃くて今がいい感じ。「縄文シャワー展示室」展はもうすぐ終了、7月9日まで。もう少し早く西荻を出ていたら、おたカフェ向かいの「武蔵国分寺跡資料館」にも行けたなあと思いつつ、藤森建築・お鷹の道・国分寺・図書館とまわってなかなか充実の半日。「国分寺・西荻・井草川・諏訪・児島善三郎・藤森照信……」のお題は、もう少し考えてみることにします。

 

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