ニシオギ水ノオト

関根公園の工事現場

関根公園の隣にある工事現場、こちら「杉並区善福寺二丁目、上荻四丁目付近善福寺川流域合流改善貯留施設設置工事」というやたらに長ーい名前がついています。

どんな施設なのでしょう? ちょっと中を覗いてきました。

建屋の外観からは中がどうなっているかはわかりませんよね。
中にはなんと、大きな穴が空いていました。

貯留施設
内部に潜入
貯留施設
覗きこむと……

 

その深さ、18メートル。
いったいどんなことをしている工事なのでしょうか。

雨が降った時、地面がアスファルトだと、 雨は地面にしみこまず、下水管に入っていきます。下水管には容量があるので、いっぱいになると、その下水は川に流れ込むようにできています。

杉並区に限らず、東京都区内の下水道はほとんどが「合流式」でできています。
下水道には「合流式」と「分流式」があります。「合流式」とは、生活排水と雨水が合流している下水道のこと。生活排水には、お料理や洗濯・お風呂やトイレで使った水も含まれます。
一方の「分流式」は生活排水と雨水がそれぞれ別の下水管を通る方式。これなら川には雨水しか流れ込みません。
つまり、杉並区で雨が一定量を越えると、生活排水が川に入っていくのです。

だったら全部、「分流式」にしたらいいじゃない、とお思いでしょう。でも下水道整備には莫大なお金と時間がかかります。東京は急速な都市化の中で、すばやく安価に設置できる「合流式」を選択してきたのです。

それでもやっぱり、川の水質を少しでもよくしたい、というのが、今回の工事「合流改善貯留施設」の目的なのです。

この関根公園にあけられた穴を起点に、善福寺川沿いの道路の地下に、直径約2.5メートル、長さ約1600メートルの横穴が掘られました。現在は善福寺池下ノ池付近まで続いています。(ルートマップはこちら

雨が降った時、善福寺川に流れ込む下水をこの横穴に一時貯めて、水再生センターが落ち着いてから下水道に戻して送るための貯留場所となります。ここの容量は25メートルプールでだいたい50杯分。洪水対策の貯留施設もつくられていますが、少し性格がことなります。

ちなみに杉並区の下水道がその後どこに流れていくか、ご存知ですか。

行き先は板橋区の「新河岸」。高島平駅に近い、荒川と新河岸川のあいだにある「新河岸水再生センター」で高度処理されたのち、新河岸川に放流されます。下水道は石神井川をくぐり、その先まで流れているんです。

シールドマシン
シールドマシンの図

 

横穴はシールドマシンと呼ばれる巨大な機械によって掘られました。シールド工法では、マシンの前面を回転させながら掘進していくと同時に、マシン後ろに外壁を設置していきます。安全性の面でも予算の面でも有利で、もっとも取り入れられています。ちょうど掘る深さが武蔵野礫層と呼ばれるガラガラとした石の多い地層で、時々マシンにつまるのがやっかいなのだそうです。

まずは階段で現場まで降りていきます。

地下へ
現場の方は階段を降りるのが速いっす……

 

地下に降り立った。

下から
そして見上げる。荘厳……

 

そして横穴へ。足元に軌道があります。現在の作業現場はここから約1.6キロ先の善福寺池下ノ池付近。そこまで材料を運んだり、人が移動したりするのも大変。途中の脱出口もありません。ものや人を運ぶための軌道が設置されています。これぞ西荻地下鉄(時期限定)!

入口
軌道にドキドキ

 

それではいよいよ入ってみましょう。

穴の中
消失点

 

こんな調子で1.6キロ先まで。完成すると足場や軌道などは外されます。意外と明るくしてあるんですね〜。なんて思っていたら、遠くの方からガラガラガラガラと、音がしてきました。
なにかが近づいてきている??

はるか先から帰ってきた
おかえりなさい

 

作業員の方が現場から戻ってきたようです。足こぎ式のトロッコで。現場まで行くのも戻ってくるのも大変ですね。この隧道をトロッコで一人旅。ちょっとうらやましいような、こわいような。

さて、穴を掘るシールドマシン、ちょうどこの10月で西側の予定区間を堀り終えたそうです。このあとは、既存の下水道とつなげる工事などが続きます。シールドマシンは「フナクイムシ」という貝をヒントにしています。木を食べる貝で、食べた穴を分泌物で固めてそのまま自分の巣にするのです。その名の通り、木造船の大敵でした。一応お伝えしておくと、苦手な方はフナクイムシで検索するのはやめたほうがいいですよ。

さて、シールド工法では、マシンが掘った穴の後ろすぐから外壁(セグメント)をつくっていくので、必然的に穴の大きさがマシンより小さくなります。つまりシールドマシンは後ろに下がることができません。このシールドマシン、最後にどうやって取り出すのか聞きましたら、驚きの答えが帰ってきました。
撤収可能な部品をできるだけ外した上で、そのまま地中に残置するのだそうです。 もしかしたら数万年後の人が見つけるのかもしれませんね。

この合流改善貯留施設、24時間体制で作業が進められ、完成は平成34(2022)年ごろ。来年からは東側区間の工事に入って環八の下水幹線までつながります。

ともかく作業の皆様、ご安全に!