小平講演会「みこしプロジェクト」報告(2)

前回からの続きです。
小平での講演会は、西荻話はそこそこに「小平」について話す会なので、事前に小平をよく研究する必要が出てきました。それでまず主催者の方にお願いしたのが、「小平観光のガイドとして、私どもを案内してください」ということでした。小平市、なかなかに広くその全容はつかみづらいです。馴染んでいる地元の方たちが案内することで、私たちは効率よく小平を知ることができるし、また現在、地元民がどのようなものを地域資源として捉えていらっしゃるかもわかるのです。それと、これは私の経験にも基づくのですが、案内人となるとやっぱり、事前に勉強をしておかないといけないし、どんなところを案内すれば喜んでもらえるのかをよくよく考えることになりますから、必然的に地元を見る目もシビアになります。というわけで小平観光ガイドを快諾していただき、今回の講演会となったわけです。

「小平観光」の集合場所は花小金井駅。上石神井からわずか20分弱です。「小平なのに小金井?」と即座に思いましたが、ここは小平市の東端。先に言ってしまうと、小平はいろんなところで名前を侵食されているという特徴があります。西端の駅は東大和市駅(駅はぎりぎりでいちおう東大和市内にあるそうですが)。まちを縦横に走る街道は、府中街道、立川街道、青梅街道、小金井街道に新小金井街道。西武新宿線はまあ仕方ないとしても国分寺線、多摩湖線、拝島線。そして小平市民が誇る超高額会員権の名門ゴルフコースは、小平にあるのに小金井カントリー倶楽部。この現象の理由については、のちほど考察することとします。

IMG_6105

観光というぐらいだからまずは名所を見なければですね。茅葺屋根が美しい海岸寺(上写真)を経て、鈴木遺跡資料館へ。40年ほど前に古石神井川源流域で見つかった旧石器時代の遺跡。出土品には、世界史を覆す約3万年前の局部磨製石斧があります。旧石器時代なのに磨製石器とはこれいかに。実は関東のあちこちで見つかっているそうです。別に「だから日本はすごい!」というわけではないのですが、鈴木遺跡は現在も発掘中。今後の大発見に期待です。資料館は簡素な建物なので穴場感オーラがすごかったのですが、今後大化けの可能性ありです(下写真:笑顔で迎えてくれた資料館の担当さん)。

IMG_6124

いかにも観光地っぽい佇まいの小平ふるさと村は多摩湖自転車道(狭山・境緑道)沿いにある古民家園。そこから緑道に入って小平駅方面へ。途中のカフェラグラスもいいところです。この緑道は、実は井の頭通りにつながっています。井の頭通りがかつて「水道道路」と呼ばれていたゆえんですね。多摩湖から杉並和田堀まで、水を引っ張っていたルートが道路になっていて、小平あたりでは自転車専用道路となっています。小平市ではこの緑道と玉川上水、野火止用水を「グリーンロード」と名づけているのですが、全長20キロですから、一周するのはなかなか大変。

IMG_6185

小平の名物に「丸ポスト」というのがあります。「小平市内は全国で一番、丸ポストが残っている」ということだそうで、小平駅前にも「日本一巨大な丸ポスト」が(上写真)。たしかにインパクトはありますが、なんとも無理矢理な感じが否めないのも事実。でもせっかくだから郵便にまつわるイベントをもっとやるとか、郵趣クラスタな人を巻き込むスタンスがあってもいいかもしれませんね。

それから、「ブルーベリー発祥の地」というのもだいぶ推していて、ブルーベリーを使ったお菓子「菓夢果夢」などもおいしいです。正直まったく知りませんでした。

それから直売野菜みのり村という体験農園では、今川の農芸高校でも教鞭を執ったことがあるという方が野菜作りの指導にあたっていて、縁を感じました。青梅街道駅前にも農協の大型直売所があり、旅先気分が味わえます。

うどんもあります。私たちはうどん好きなので、2回行って2回ともうどんを食べましたが、どちらも武蔵野うどんの中でも細めの麺でした。細麺が小平の傾向なのでしょうか。下写真はふるさと村にほど近い平作うどん

IMG_6147

さて、場所の話に戻りましょう。小平市民が、知っているけどあまり行かない場所を2つ。ひとつは鷹の台駅が最寄りの「ふれあい下水道館」。玉川上水のそばなので、上水から下水への急展開です。最近「暗渠マニアック!」という本を出したわれらが松庵川調査隊長・吉村生さんに、この施設について事前に聞いたところ、「行ったことあるけど……こわかった!」という意外な反応。下水好きの吉村さんをして「こわい」と言わせるこの施設、ただものではない予感……。展示室入り口もシュールです。

IMG_6365

グリーンロードをはじめとして「水辺のうるおい」推しの小平、ぐるぐると「観光」してわかってきたのは、実はむしろ全然水がない、ということです。かつては人の住まない荒野だったといいます。よく言えばカラッとさわやか。ほぼ天然河川がなく、江戸時代の新田開発で人工の水路をはりめぐらすことで開拓されてきました。この「開拓精神」というのは小平市の市民憲章にも盛り込まれている超重要語句なのですが、それについてはのちほど。
さて、ふれあい下水道館、下水道の歴史だけじゃなく、小平の水路開発の歴史なども知ることができます。そしてここの展示の目玉は、その名の通り下水道とふれあえる!こと。なんと実際の下水管のなかに入ることができるのです。地層標本のある階段をひたすら降りた地下5Fが「ふれあい体験室」。おそるおそる入ると、これは!……遥か先まで続く巨大地下パイプの暗闇に吸い込まれそうな錯覚を覚え、「ここは人の来るところではない」という動物的直感を即座に感じて、ほんの3秒ほどしかその場所にいられませんでした。私たちの営みを地下で支えるものを目の当たりにして、かなりのショックを受けましたが、それでも行ってよかったと思いますし、みなさんもぜひ一度は行くべき。すごい施設です。下写真は体験コーナーへの入り口。この先が下水管内につながっています。ものものしい扉と非常ベル。

IMG_6376

もうひとつの小平市民があまり行かない場所が「平櫛田中彫刻美術館」。木彫のアーティスト平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)は97歳の時から小平に住み、作品制作を行いました。その家とアトリエに美術館が併設されています。正直侮っていました。地元の方も侮っていると思います。ともかく現物を見にいったほうがいいです。作品も力強さがあるものからかわいいものまで多種多様。正直、ひとつほしくなりました。作品はムリなので田中さんの座右の銘絵ハガキをおもわず買ってしまいました。「いまやらねばいつできるわしがやらねばたれがやる」(98歳の時の言葉)は、西荻のコーヒー翁・安藤さんにも通じるパワフルさ。全てに通じる覚悟がみなぎっています。107歳で亡くなった時には、30年先まで作品制作できる量の材木があったといいます。

imayaraneba

そうそう、一つ忘れてました。小平は学校の街。武蔵野美術大学、津田塾大学あたりが有名ですが、一橋学園駅周辺には、一橋大学のみならず、国土交通大学校、警察学校、陸自小平駐屯地小平学校などがあり、ちょっと特殊な学園都市事情が発達しています。それはとんかつ屋のとなりにとんかつ屋があるような、「ハイカロリー商店街」を形成していて、周辺は「盛りがすごい」のが特徴。食べ盛り男子の街なのです。案内所でお世話になっている津田塾の先生も同じことを言ってました。市が発行している小平観光マップ(西荻案内所に少し在庫ありますよ)は小平市全体の地図なのですが、もっとミクロなエリアで、たとえば学生街グルメにしぼってマップをつくるとかやったら人気がでるんじゃないかなあ。

IMG_6413

ほかにもこもれびの足湯都立薬用植物園なかまちテラス、個人宅の庭巡りができる「オープンガーデン」などいろいろあるのですが、長くなるのであと一つだけにしておきます。小川は新田開発をした小川九郎兵衛にちなんだ地名なのですが、その墓のある小川寺(しょうせんじ)周辺は、小平の歴史をぎゅぎゅっとコンパクトにまとめた魅力的なエリア。江戸時代から変わらぬであろう小川用水の流れ(上写真)、青梅街道に並ぶケヤキのある屋敷林など、きっと地元の人にはどうということのない風景でしょうが、街道の雰囲気があり、見どころが多いです。

***

そんな感じで巡ってきた「小平観光」、その可能性について以下のようにまとめてみました。

まとめ1 充実の無料施設
小平ふるさと村、ふれあい下水道館、薬用植物園、足湯などなど、無料施設の充実がすごいです。サービスが多い。そしてなんとも真面目。小平市民の人となりを感じます。そういえば、玉川上水も狭山境緑道も、ごみひとつおちてなかったんだよなあ。

IMG_6165

まとめ2 3つの「路」
水路・線路・道路です。上の文ではほとんど水路にしか触れていませんが、小平市周辺の鉄道路線図は複雑怪奇。さほど大きくもないエリアなのにたくさん駅があって、同じ会社の鉄道なのに乗り換えがうまくなかったり、地元の人が間違えるほどにややこしい。JR武蔵野線の新小平駅も変なところにあるし。この連携の悪さはそもそも線路ごとに別会社だったのを、あとから西武系が統一したことが原因。この乗換の悪さを逆手に取って、鉄道マニアがよだれを垂らすようなアイデアが出てきそうな可能性があるんじゃないかしら……。鉄道乗りこなしだけでなにかイベントができそうです。道路網も実は充実していて、「街道」と名のつく道がこんなに多いのも珍しいんじゃないでしょうか。この3つの「路」で遊ぶことが、小平の楽しみ方の軸になるんじゃないかなあと思います。

IMG_6263

まとめ3 カラッとさわやか
前述のとおり、小平は乾いた土地柄。だからこそ水辺はオアシス。今回行って思ったことです。その乾きゆえに水路が発達し、少ない水をわかちあう「開拓精神」が育まれ(「開拓精神」とは、切り拓いていくたくましさをイメージしていましたが、そういう意味だけではないのです)、それが冒頭の、名前を侵食されても気にしない「謙虚さ」につながってるんじゃないかと想像します。ごはんの盛りのよさも開拓精神のあらわれかも?

その他:
1回目の時に、小平の鉄道乗りこなしは初心者にはムリ!と悟ったので、2回目に行った時にはレンタル自転車を借りることにしました。ネットで調べるとわずか1軒、民間の自転車屋がやっているのみ。自転車専用道があるくらい自転車にやさしい小平。ぜひぜひ、レンタサイクルの整備をしてほしいです。下は名前だけで気になって行ってみた酒蔵児童公園。普通の公園です。脇に小川用水が流れています。

IMG_6416

***

ほか、各種ツアーの提案など、思いつくままにあれこれ話しました。はたして参考になったかどうか。
この日の翌日、講演会にもいらっしゃったという小平市産業振興課の方が、日曜日にもかかわらずわざわざ西荻案内所までいらっしゃいました。うれしかったです。その熱意と真面目さ、まさに小平イズムだよな〜と思いました。

やけに長文になってしまいましたが、これでもだいぶ端折りました。小平ガイド本の一冊くらいはつくれそうなイキオイ。こちらも学びの多い時を過ごすことが出来ました。

最後に、講演前に青梅街道駅前にある「とまと」というサンドイッチ専門店で腹ごしらえしたのですが、めちゃうまかったです。

IMG_7262

2 Replies to “小平講演会「みこしプロジェクト」報告(2)”

  1. Pingback:

  2. Pingback:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。