第10回 西荻ブックマーク【西荻のメディアと場】

西荻のメディアと場
第10回 西荻ブックマーク
古書音羽館 広瀬洋一

本の街とも言われている西荻。
書店や編集者など、本に携わる人や本好きが集まって西荻ブックマークははじまった。
まもなく100回。創設メンバーの広瀬洋一さんにお話を聞く。

西荻ブックマークは次回で99回目とのこと。すごいですね。
始まったのは2006年春。そこからだいたい1〜2ヶ月に1回くらいのペースで、これまで、本に関するトークイベントをやってきました。

どのようにして始まったのでしょう。
西荻の本屋さんで集まる機会があったんです。その時に、西荻は本屋さんが多いし、作家や出版関係者も多く住んでいる。この環境をいかしたイベントをやりたいよね、というお話をしたんです。それで、うち(古書音羽館)と、ハートランド(「旅の本屋のまど」のところにあった古書カフェ)と、信愛書店、それからライターの北尾トロさんたちで、どんなふうにしていくかを相談し、大きなイベントは最初は難しいから、こつこつとトークイベントを積み重ねて、それでゆくゆくは、例えば一箱古本市をやるとか、そういうことを考えよう、と始まりました。今は、編集者、図書館職員、ライター、校正者、会社員、古書店主、それから西荻周辺の本好きが同人として参加しています。

トークの内容は「本」というテーマでは共通してますが、切り口が多様ですよね。どのように企画立案するのでしょう。
テーマは、書籍の内容についてのこともあるし、古本文化についてのこともあります。また、西荻という街について扱ったことも何度かあります。企画は同人がそれぞれやりたいことを温めているので、そこから実現していくこともあれば、持ち込みの企画もあります。私の古書店には、ときどき気になるお客さんが来るんですよ。そういう人が来た時はちょっと近所の喫茶店に連れ出して、さらにお話を聞いてみるんです。そんなところから企画につながっていったこともあります。

これまで98回、いろいろあるとは思いますが、印象深かったものは。
そうですね。「古本屋ツアー・イン・ジャパン」というブログの管理人・小山力也さんと、岡崎武志さんの対談は、東日本大震災からわずか一週間後の開催でした。イベントが軒並み中止となっていたのですが、中止の決定的な理由はないと判断して、開催したんです。実際にトークの最中にも揺れました。この時ばかりはお客さんのドタキャンもやむなしと思っていたんですが、全国各地の古書店訪問記『古本屋ツアー〜』は、古本好きの間ではかなり有名なブログで、小山さんはこの時初めて、名前も伏せずに人前でお話をする、そういう話題性もあって、たくさんの方が来てくださいました。『古本屋ツアー〜』はその後、単行本にもなり、小山さんはその後、何度もブックマークに登場していただいています。

西荻ブックマークがきっかけになったんですね。
大森にあった山王書房という古書店の店主・関口良雄さんが書いた『昔日の客』という随筆集、とても入手困難な本でしたが、ご子息の関口直人さんを招いてトークをし、復刊応援もしました。その後、夏葉社という、吉祥寺の小さな出版社から出版されました。そもそものきっかけは、西荻に事務所のあるロックバンド、カーネーションの直枝政広さん。レコード収集家としても知られ、古本もマニアのような方なのですが、『昔日の客』を読んでみたいというお話をしたのがなんと、すでにお知り合いだった音楽プロデューサーの直人さんだったのです! そんな偶然から、ブックマークに話が来たんです。
作家の佐藤泰志さんについても、作品集が吉祥寺のクレインという出版社から出た時にトークをし、その後、幻の傑作と言われた『海炭市叙景』が文庫化、映画化されました。どちらも、これまで見過ごされてきたものに光をあてることができたという意味で感慨深いです。

これからの予定や展望は。
99回目は島尾敏雄と妻の島尾ミホの作品を原作にした映画『海辺の生と死』に関するトークです。100回目はこれまでの振り返り企画を考えています。今までどちらかというと、文学・サブカルチャー寄りだったのですが、今後、個人的にはもうちょっと「思想」のことをやりたいですね。世の中が不穏になってきていますから。西荻は狭間の街、荻窪と吉祥寺に挟まれたエアポケットです。ものづくりをしている人たちが静かに住んでいる中で、西荻の自由な空気を大事にしていきたいと思っています。

西荻にある新刊書店と古書店、編集者・ライター・校正者、また本が好きな人が集まり不定期にトークイベントを実施。同人は現在13人。1企画は7人程度で実施。2006年春スタート。現在98回。次回=2017年7月22日予定
http://nishiogi-bookmark.org/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。