第12回 okatteにしおぎ【西荻のメディアと場】

西荻のメディアと場
okatteにしおぎ
竹之内祥子さん

場をひらく、家をひらく。
「街のおかって」シェアキッチンが
宮前の住宅地に誕生。
約100人の会員が支えている。

シェアキッチンをはじめたきっかけは。
ここはもともと祖父母の家でした。家と土地を相続し、それをどうするか、この時、家を壊してアパートにするよりは、今あるものを活かしていきたいと思ったんです。そんな時、阿佐ヶ谷で「おたがいさま食堂」という活動をしていた、株式会社N9.5(エヌキューテンゴ)まち暮らし不動産の齊藤志野歩さん(同社は齊藤さんのほか、西国分寺クルミドコーヒー店主の影山知明さんはじめユニークなメンバー4名で構成されている)や、神奈川県の藤野で里山長屋を作ったビオフォルム環境デザイン室の山田貴宏さんらと知り合い、計画案を練っていくことになりました。そこで話し合いを重ねる中で、「食」をキーにしていこうという方針が固まってきました。
実際に使ってくれそうな人を集めて、ワークショップをし、畳スペースを設けることなども決まり、銀行などと現実的な話を相談しながら、建物の改築を行って、2015年4月オープン。その時の会員は30人くらいでした。

員は現在約100人とのことですが、どのようなシステムで運営されていますか。
ネットで知って問合せをしてくる方が多いです。メンバーは30〜40代が中心で女性が多く、カップルやシングルもいます。会費は月千円。利用状況の調整等はグループウェアをつかっています。
私は「オーナー」で、齊藤さんが「コーディネーター」ですが、いわゆる管理人は置かず、会員の自主管理です。当初は、「大家だからお世話しなきゃいけないのでは」という意識が強かったのですが、そういった心配は杞憂でした。会員は積極的にイベント企画や食事会をし、共有時のルールづくりも話し合いながら自然と決まる部分も大きいです。キッチンの管理方法は人それぞれ。面倒でもそれをお互い出し合ってすり合わせていくことでだんだんと共通のやり方が育っていくんです。
メンバーには、管理栄養士や食品関係の仕事をしている人がいて、その人が衛生管理面のサポートをしてくださったり、またメンバーの造園を仕事にしている人が庭の手入れの仕方を教えてくださったり、それぞれの「得意」を持ち寄っているんです。メンバーはすごく近所の人、ではなく、自転車で10分以内くらいのところにお住まいの方が多いかな。
目的があるわけじゃなく、いろんな人がいて、きずなもさほど強くない。でも、それがいいんだと思っている。一緒にご飯を食べること、場を開いておくこと自体に意味があると思っています。

理想はどのようなものですか。
「田舎の親戚の家」。祖父母の家や夫の実家では、それこそお勝手で梅干しをつけたり、縁側に近所の人が碁打ちにやってきたりしていたんです。当初は「コミュニティカフェ」的なものも考えました。でも、ご近所の常連さんだけのたまり場になってしまうのは、ちょっと違うなと思ったんです。

近隣とのおつきあいは。
このエリアには「町内会」がないんです。防災防犯会しかありません。私は今年初めて組長になっていて、会合にも出席しましたが、普段はご近所とのつきあいは挨拶程度です。サラリーマン家庭は自分の家をどう守るのかという意識が強くて、近所付き合いをあまりしたがらない。セキュリティサービスに入っている家も多いです。
これってたとえば、震災のようなことがまた起こった時にどうなるんだろう、東京ぐらしの理想形ってどういうものなのか、考えますね。そういうこともあって、会員でない人にも開放する「オープンデー」を設けています。最近では「流しそうめん」をやりました。

最近の西荻はどう思いますか。
昔ながらのお店が少なくなりました。特に南口は生鮮の小売店が少なくなって、若者のすてきなお店が増えたと思ったら、最近は駅の近くからチェーン店になっていってます。地主さんも大変とは思いますが、若い店主さんがなにかチャレンジできる街でありつづけてほしいなあと思います。その中で高橋菓子店さんが近所で続けているのはうれしいです。

これまでで印象に残るエピソードは。
被災した岩手・釜石のみそ醸造所の新商品開発ですね。メンバーの一人が震災時に知り合ったところなんですが、管理栄養士のメンバーと相談をしながら十割糀みそケーキの試作品をここで作ったんです。それを東京で開催の「岩手わかすフェス」に出展したら完売、その後、地元ケーキ屋とのコラボで商品化、パッケージや宣材のデザインもメンバーのデザイナーがやって、釜石の新商品コンテストにも入賞しました。この場所のつながりが生んだ新商品です。

今後はどのように展開しそうですか。
釜石の例もそうですが、東京ではない地方との結びつき、たとえばメンバーの実家とのつながりから、お米づくりのお手伝いをしたり、野菜をつくったりという動きが今すでにあります。地方とのつながりを通して、okatteにしおぎのような都会の共同体が活性化するという循環が生まれていけばいいなと思っています。

 

会員制のシェアキッチンとして、2015年4月にオープン。2Fはシェアハウスとして4人が住んでいる。イベントや食事会などのほか、隔月でのオープンデーには近所の人も集まる。現在の会員は約100人。
http://www.okatte-nishiogi.com/

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