第5回 トロールの森【西荻のメディアと場】

西荻のメディアと場
第5回 トロールの森
野田栄一さん 渡辺真千子さん

善福寺公園で15年以上続くアートプロジェクト「トロールの森」。
体制の変化もありながら、静かな公園の景色をじわりとゆるがすアートの力は健在。
桃四小児童との作品づくりも継続中。

お二人はスタート当初のメンバーではないんですよね。
最初は善福寺にあるギャラリー「遊工房アートスペース」を中心にスタートしました。遊工房は国内外のアーティストがそこに滞在をして作品制作ができるギャラリーで、小規模なアーティスト・イン・レジデンスのさきがけですね。私自身は、今も継続中のミニFM「ラジオぱちぱち」を運営していて、そのラジオの取材がトロールに関わる最初のきっかけでした。その後、8年ほど前にイギリスで「トロールの森」をやるという計画が持ち上がり、遊工房さんたちが準備していたところ、イギリス側の事情で全てキャンセル。それで急遽、例年通り善福寺公園での開催となったのですが、出展者が足りない。そこでラジオぱちぱちに声がかかり、野外劇をやることになったんです。そこから運営に携わるようになりました。(渡辺)
5年ほど前ですが、遊工房さんが、業務が忙しくなって準備に時間が使えないからトロールをやめると言い出したんです。私はもともとこのあたりに住んでいて、桃四小のPTAや学校支援本部で活動をしながら、トロールの森の活動を見てきました。アートのことは実はさっぱりわからないのですが、ただ、これまで継続していたものをやめてしまうのはもったいないし、これが地域社会をつなぎとめる一つの中心になるのではないか、という思いもあって、運営に名乗りをあげたんです。(野田)

アートで地域社会をつなぎとめるということについて、もう少しお聞かせください。
今、善福寺地域は地主さんの高齢化が進んでいて、以前はあったお祭りもなくなり、あと数年でばらばらになってしまう予感があります。代替わりしたらその後の付き合いはなくなってしまいますから。そうなってから関係を再度構築しなおすのは、つなぎとめる作業よりはるかに難しいでしょう。もちろんアートだけでコミュニティ崩壊の危機が解決するとは思っていないのですが、いくつかある中の中心の一つになるのではと思っています。私がイメージするのは一つの中心があるのではなくて、外芯的な共同体のイメージです。いくつかのコミュニティがあって、それぞれが適度に連携しあい、地域の関係性を維持していく。(野田)

「トロールの森」の魅力とはなんでしょうか。
まずは善福寺公園のロケーションです。この静かで自然豊かな公園に、忽然と出現したアートが発する違和感のおもしろさ。もう一つは、このプロジェクトがトップダウンではないこと。多くの地域アートフェスティバルは、カリスマ的なキュレーターがトップダウンで参加アーティストを選んでいます。外からの客を呼ぶ、いわゆる「地域おこし」の使命を帯びているわけですが、トロールの森にはそれはなくて、有象無象が集まって、モヨモヨっと始まる。それから野外の魅力。野外での舞踏公演の途中、どしゃぶりの雨になったのですが、誰も帰らず、みんな集中して踊りを見ていたんです。ものすごい緊張感で感動しました。こちらの意図を越えて場が成立することが、野外では起こりやすい。(渡辺)

春は桃四小の児童さんによる作品展示ですね。
もともとはアーティストの篠原有司男さんが、地元の小学生と作品がつくりたいとおっしゃって、そこから桃四小とアーティストとのコラボレーションがスタートしました。今は四年生の授業に組み込まれていて、図工の先生が指導します。(渡辺)

西荻についてはどのように考えていますか。
何かをするときにおおっぴらに邪魔されることはないですよね。度量が広い。だから宗教も集まってくるんでしょう。西荻は昔の村境なので、ある意味で空白地帯、スキマ的な場の記憶が残っているんです。そのかわりに結束力がない。(野田)

これまでおもしろかった経験とかはありますか。
昔実在したという雨乞い儀式の再現をしたことがあるのですが、前日のリハで通してやったら、翌日の本番、ありえないほどの大雨が降りました。雨乞いの効果おそるべし(笑)。(野田)

今後の野望は。
「トロールの森」をアヴィニヨン演劇祭(フランス南部で行われる演劇祭)のような雰囲気にしていきたいです。公園や街角で一日中パフォーマンスが行われているような。(渡辺)

毎年11月3〜23日に善福寺公園で、公募作家による屋外展示やパフォーマンス等。GW期間は桃井第四小学校児童の作品展示。年間通じて桃四小との共同作業/ワークショップ。秋に「まちなか企画」として西荻窪駅周辺でのイベントもあり。 メンバー=10人くらい 2001年春より実施。
http://www.trollsinthepark.com/

 

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