霜月佳き日 西荻小春日 (片岡さんの本)

霜月佳き日 西荻小春日

 

霜月佳き日 西荻小春日

片岡さんの本『 霜月佳き日 西荻小春日 』ができました。
片岡さんって誰だろ、という人のために、まずは写真。この人が片岡さんです。


片岡一則さん

片岡一則さんは神明通りにあった和菓子屋「かた岡」を切り盛りしてきた和菓子職人さん。どら焼きを焼かせたら天下一品、オリジナルのひな菓子もとってもすばらしい。人に歌を贈るのが好きで、お店を閉店された今でも、神明通りの朝市に何を売るでもなくテーブルを出し、近作の短歌を披露しているので、顔に見覚えがある人も多いのではと思います。

在りし日のかた岡
在りし日のかた岡(片岡さん提供)
変わり種のひな菓子。鍋焼きうどんとざる蕎麦(片岡さん提供)
変わり種のひな菓子。鍋焼きうどんとざる蕎麦。箸に見立てた爪楊枝でサイズ感がわかるかと! 和菓子の素材でできてます。(片岡さん提供)

西荻案内所でもいろいろお世話になりました。なにせ驚愕したエピソードとしては、西荻案内所がまだ場所としてあったころ、2013年11月末の西荻婚の時。本番の前日、私たちは準備のために案内所のほうは鍵を閉めて飛び回ってたんだけど、だいたい用事が済んで戻ってきたら、西荻案内所の前にでっかい看板が置いてあったのです。これも片岡さんの仕業。

西荻婚の看板

私も個人的に歌をいただいたことがあります。2014年夏に座・高円寺で写真展『くるみちゃんの劇場』をやったときのこと。

くるみちゃん躍如

赤き傘 白青まだらにレインボウ 神出鬼没か くるみちゃん躍如

人を驚かせ、喜ばせるのが好きな片岡さん。歌をつくるのもその延長線上にあるのでしょう。絵も描くし、字もうまいし、看板もつくる。もちろん歌も。おもしろそうなところにはおしかけ、世話を焼く。私はいつしか片岡さんのことを「西荻のハイパーメディアクリエイター」と呼ぶようになりました。

 

歌集ができるまで

そんな片岡さんからある日、「歌集をつくりたいんだけど、あなたそういうのがお仕事なんでしょ」と依頼をいただき、私家版の歌集づくりのお手伝いをすることに。

片岡さんはつくった歌をワープロに書き溜めていたのです。そのワープロというのが、ちょっと懐かしい東芝Rupo。片岡さんの愛機はRupoの最後期のマシンで、カラー表示でインターネットもできちゃうというスグレモノなのですが、さてここからデータを出すのはどうするのだったっけ。たしかフロッピーディスクを使うんだよなあ、1.44MBの。今なら写真一枚のデータも入りきらないのか。Rupo用のフロッピーディスクそのままだとフォーマットが違うからパソコンでは読み込めないんだったよなあ。

東芝Rupoの画面

思い出しました。Dos変換したフロッピーディスクを用意して、それにデータを移したらパソコンで読むことができるようになるのです。なつかしのDos変換だよ(なんのことやらわからない人にはすいません)。ということはパソコンに繋ぐためのフロッピーディスクドライブが必要になる。それで、個人のFacebookで「誰かフロッピードライブ持ってたらください」と呼びかけたら、今でも保管していた方がいらっしゃって、それをありがたく頂戴しました(copo do diaのイトーちゃんありがとうございます!)。

無事にデータも確保し、レイアウトも進んできたところで、次は表紙をどうするか。片岡さんからの提案は至ってシンプル。白ベースで青がビッと入っていてほしい。この時すでに「霜月佳き日 西荻小春日」のタイトルは決まってました。霜月つまり11月というのは、さっきお話した「西荻婚」の日を意味します。11月の乾いた快晴の空のイメージ。

シンプルなだけに、ちょっとなにかおもしろいことを、と考えて印刷屋さんに相談したところ、「背継ぎ」にしてみたら、と提案をもらいました。背継というのは、本の背を布にして、表紙を紙にするなど、表紙に2種類の素材を使う特殊な表紙製本で、高級感がでます。布と紙が重なるところにあまり段差が出ないようにするのが職人の技。最近は、背継本の注文はとても少ないのだそうです。

というわけで、2018年11月末にようやく完成! 表紙の文字も印刷じゃなくって黒箔を使っています。

 

片岡さんの近作より

さて、片岡さんの近作を紹介しておきましょう。西荻では今「西荻雛祭」を開催中。まちのあちこちでおひなさまが飾られてます。かた岡さんのお店があったところの近くに新しくできたコミュニティスペース「西荻みなみ」にも雛人形の段飾りがありました。そこにはすでに、西荻のハイパーメディアクリエイター登場の痕跡が。

片岡さんの最新作

誘われて 訪ねゆく先雛かざり 春さきがけの西荻の郷

最後に、片岡さんが建てたビルの1Fに、礎石代わりに歌のプレートがありますので、それを紹介しておきます。

西荻やかた

 

徒手空拳 半世紀余にしてここに建つ 研鑽の証し 西荻やかた

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