銭湯と暗渠とグリーンインフラと(180909)

杉並銭湯いまむかしと善福寺川まちづくりシンポジウムのちらし

9月9日は、行くつもりだった2つの行事が時間丸かぶり。

ひとつが天沼の杉並区郷土博物館分館で開催中の「杉並銭湯いまむかし」に関連したトークイベント、「銭湯×暗渠 その魅力を探る」。登壇者は我らが暗渠マニアックスの吉村生さんと髙山英男さん。それから高円寺小杉湯の番頭兼イラストレーター塩谷歩波さん。

もうひとつは勤労福祉会館(西荻地域区民センター)で開催された善福蛙のシンポジウム「善福寺川 あまみずと緑で楽しいまちづくり グリーンインフラ計画合同発表会」。こちらの登壇者は、郷土史研究家の野田栄一さん、井荻小の住谷陽子先生、九州大学教授の島谷幸宏さん、遅野井川かっぱの会共同代表の伊地知英信さん。後半は善福寺川を里川にカエル会東京大学まちづくり大学院それぞれが、善福寺地域のグリーンインフラ計画(未来図)を発表。

西荻案内所員2人でそれぞれ行くことにしました。以下報告。

 

銭湯と暗渠

銭湯と暗渠

杉並区郷土博物館分館の1階はトークを聞きに来たお客さんでぎっしりでした。

まず杉並区全体で銭湯は19軒になってしまったという残念なお知らせ。確かに私たちが西荻に越してきた時からもどんどん閉まっていった銭湯。玉の湯、ユトリアム、そして昨年の天徳湯。

高円寺小杉湯の番頭兼イラストレーターの塩谷歩波さんがトップバッター。建築事務所にお勤めだった彼女は体を壊して休職、養生中に銭湯に目覚めたそうな。安くて、近くて、多世代の集まる場所、というのが、休職中のメンタリティを救ってくれたのだそう。友人におすすめしたくて描いた銭湯の図解がSNSでも評判になり、来年には書籍化予定。そして高円寺の小杉湯の若旦那に誘われて番頭兼イラストレーターとして活躍中。銭湯でのおすすめは熱いお風呂と水風呂の交互浴で、交感神経を刺激、血流もよくなって心身の調子が良くなるそう。今度銭湯に行ったらやってみたい!

2階の展示では塩谷さんの銭湯図解原画がずらり。これじっくり、いつまででも眺められる。書籍が待ち遠しいなあ。
都内のおすすめ黒湯の銭湯など、銭湯に行きたくなる情報ぎっしりのトークでした。

続いての暗渠ハンター髙山英男さんは、暗渠と銭湯の関係、暗渠サインたるさまざまな施設を解説。製餡所が暗渠そばにある比率の高さや以外な業種の暗渠との関係など、じっくり歩いて、調べて、蓄積したデータを惜しみなく、わかりやすく教えてくれるのは、髙山さんならではのスタイルなんだけど、予備校講師のようにも思えてきちゃうのは、時々挟まれる暗渠マニアッククイズのせいもあるかも。「はいここテストに出るぞ~!」って言われそう。杉並銭湯の営業時期を水系別に整理、そこから読み取れることにさしたる法則はなさそうということでしたが、展示資料のいろいろな考察方法を提示してくださったので、トーク後に展示を見なおした人はさらに楽しめただろうな。

吉村生さんは銭湯、暗渠、釣り堀、映画館……と、水にまつわる風景のなかを時をまたいで散歩するようなトーク。脱力もののヘンテコ事件のエピソード発掘など、よくこんなもの見つけてきたなあ、というものから、会場の大多数が共感の空気を出していた「跡好き」ならではの考察。

そういえば、案内所によく寄ってくださっていたおじさんが、子どものころ銭湯の子と友達で、銭湯に貼る映画館のポスターについてくる無料映画チケット(ビラ下って言ってた)もらえるのが楽しみでさ~って話してくれたのを思い出していた。銭湯と映画館、どっちも身近にあっていい楽しみだった時代がうらやましい。

楽しく銭湯×暗渠トーク聞きながら、久しぶりに天狗湯に行こうと思った次第。行きたいときに行ける銭湯が住んでるエリアにあることって幸せだよね。(所員A)

 

グリーンインフラ計画

グリーンインフラ計画

九州大学・島谷幸宏さんは、河川の環境再生に取り組むスペシャリスト。これまでも多くの河川改修事業に関わってきました。まずはその先生から、グリーンインフラとはどういうことを意味するのかの説明がありました。
グリーンインフラには対になる言葉があって、それがグレーインフラ。つまりコンクリートによる護岸整備や防潮堤などのことです。グリーンインフラとは、生態系を有効に使った地域づくりのこと。洪水防御だけでなく、景観保護やヒートアイランド対策、生物多様性を重視したインフラ整備。環境のみならず、人の健康にも配慮したものがグリーンインフラであり、その実例として、親水型の岸辺やグリーンウォール、屋上緑化などを挙げ、その中でも都市型水害対策にとって重要なのが、雨水を地面に浸透させることであることを示しました。

続いて井荻小学校の住谷陽子先生から、井荻小の環境教育に関する報告。井荻小では総合学習の時間に、野鳥観察会のほか、善福寺川の清掃活動を取り入れています。これはもともと、京都鴨川の環境整備を市民が中心となって取り組んだことを、社会科で知った児童が、それならば善福寺川もと自主的に始めたもので、その後代々井荻小児童に受け継がれ、その成果は今年オープンした「遅野井川親水施設」につながっていきます。公立の学校でありながら、長年に渡って善福寺川について取り組んでいられるのは、地域の人や学校支援本部、専門家などのサポートがあるからだという感謝の言葉とともに、「自分の言動の保つ力を過小評価せず、何かを変えることができるという確信を持って」区長さんに手紙を渡したという卒業生の言葉を紹介。単なる環境教育ということだけでなく、自ら考え主体的に判断するというとても大切なことを、この川を通して児童が学んでいると知り、つくづくいい学校だなーと思いました。

続いては遅野井川親水施設を管理する「遅野井川かっぱの会」共同代表の伊地知英信さん。伊地知さんはまず、遅野井川の名前の由来に言及、源頼朝が出てくる善福寺池の伝説を紹介します。そして、きれいな水が流れる遅野井川親水施設は、実は不健全な川であると評します。どういうことでしょうか。
遅野井川付近には4つの水が流れています。一つは遅野井川の川の水。これは地下から汲み上げた水を渡戸橋下から流しています。池の水は汚れているので、川に入らないように左岸の土手下に埋設された管をバイパスして遅野井川下流に流されています。それから昔から遅野井川に沿ってある下水管。もう一つが千川上水からの引水を善福寺川に放流するための地下水路です。川の水はポンプで汲み上げているため、なんらかのトラブルでポンプが停止すると、遅野井川はたちまち干上がってしまうのです。つい最近も雷のせいでポンプが停止し干上がったのだそう。電気の力を使って人が管理しないと成立しないのです。本来ならば池の水や、高度処理された千川上水の水が入るのが健全なのですが、そのためにやはり、池の浄化つまり「かいぼり」が必要になってくるんだなあ、と納得しました。

次が野田栄一さん。野田さんは「原風景」という言葉を再考察します。国木田独歩の『武蔵野』から、まず武蔵野の原風景を読み取り、それから内田秀五郎らによる区画整理と善福寺池整備を取り上げます。いまでこそ善福寺エリアの住みよさを象徴し「武蔵野の面影を残す」と言われる善福寺公園ですが、整備当初は「武蔵野の面影が消えた」と痛烈に批判されたのだそう。多くの資料写真などから、「原風景」とされているものが実は、人により時代により変化していくものだということを示していきます。

休憩後第2部は、善福寺グリーンインフラ計画

善福蛙の発表では、雨水の浸透を促進することで洪水災害を防ぐことから、実際にどのようにすれば雨水をしみこませることができるのか、具体的なプランが将来像として示されます。各家が雨水を一時的に貯めることや、道路脇に緑を整備することで、かなり劇的に下水への流入が減ることが数値で示され、その変化に驚きました。

東京大学まちづくり大学院は、50年後つまり2068年の善福寺地域を想定したランドスケープデザインを模型で発表しました。50年前つまり1968年から今日を想像するようなものですから、発想は自由でいいのです。このランドスケープデザインで重要なものは水素です。光触媒を使って水を水素と酸素に分ける技術が確立した未来を想定し、水素が地域を支えるエネルギーとなっているというのは、これまで考えもしなかったことで、とても新鮮で刺激的な内容でした。

すぐにでも実現できそうなこと、すでに実現したこと、遠い先の夢みたいなこと。さまざまな尺度がありながら、地域のイメージを共有することができた有意義な会でした。(所員K)

どっちもドブエンナーレ!

銭湯×暗渠」と善福蛙の「グリーンインフラ計画」、ベクトルがかなり違いますが、どちらも水に関するイベントでした。そして暗渠マニアックスも善福蛙も、2年前に開催した「西荻ドブエンナーレでお世話になりました。
ついでに言っておくと、見に行くことができなかったんだけど、ドブエンナーレの時に天狗湯で芝居『一輪の書』を上演した高野竜さんが北千住で『嵐ヶ丘』というのをやっていて、それに偶然にも、ドブエンナーレで『リバー詩振る』という詩と舞踏のパフォーマンスをやったソらと晴れ女さんが出演してたんですよ。

今回いろいろ見聞きしたことも、ある程度は西荻ドブエンナーレのときにやった「ニシオギ水ノオト」がフォローしているので、もしお時間ありましたらそちらも覗いてみてくださいね。

関係リンク

ニシオギ水ノオト

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