西荻樹木ツアー報告

梅雨明け前日の7月18日、「西荻樹木ツアー」を実施しました。

今回まわったコースは西荻北・善福寺方面。まずはトトロの樹(坂の上のけやき公園)からスタート。樹齢200年以上の大ケヤキ。伐採の危機をのりこえてみなさんの拠りどころになっているのはご存知のとおりです。

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今回のナビゲーターは浅井くにおさん。区議会議員なので、選挙ポスターなどで顔を見かけたこともあると思います。上の写真でグリーンのポロシャツを着ているのが浅井さん。信三郎帆布のバッグが似合ってます。「ひとりでも多く『みどり派』を増やしたい思いで活動をしている」とのこと。「みどり派」をふやして後世に伝えたい地域の財産をしっかり残す。なるほどだから保守の政党にいらっしゃるんですね。「この際、離党して『みどりの党』でもつくっちゃえばいいのに〜!」というこちらの冗談には、笑顔がちょっと引きつりぎみ……大変失礼しました〜(^^)

さて、杉並区には「保護樹木」という制度があります。貴重な庭木、サイズの大きい木については、「保護樹木」とし、その中でも特に貴重なものについては「特別保護樹木=貴重木」を指定しています。貴重木は杉並区内に現在約40本ほどです。浅井さんは元区職員。区役所時代は造園関連の担当で、この保護樹木制度制定に関して、中心的に携わった人でもあるのです。

トトロの樹はもちろん「貴重木」。トトロの樹は他の屋敷林のケヤキと違って、今日にいたるまであまり人の手が入らず、のびのびとしているのが特徴なのだそうです。たしかに、屋敷林のケヤキというのはまっすぐ上に伸びていくイメージなのですが、トトロの樹は幹が分かれて木陰が大きく広がっています。

そこから5分で井荻公園(どんぐり公園)。クヌギ林をぬけて、一般立ち入りできない野草園を外から見学。これはそもそも存在すら知らなかったです。盗掘防止の為、入ることができないようになっています。

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道すがら、区がおこなってきた自然観察や地域づくりの施策についてのお話も聞きました。こちらはマンホールではありません。杉並区が進めていた「知る区ロード」のルート指標。区内に4つあるコンセプト公園(はだしのオアシス、みみのオアシスなど)をコースにおりまぜながら、杉並区を知る散歩コースを区が制定していたのです。その名残りがこちら。浅草仕込みの天ぷらが美味しい地蔵坂の蕎麦屋「やぶ平」前にあります。真ん中のマークは通称「すぎ丸」。「いまじゃあすっかりバスの名前の方が有名だけどね。こっちが元祖。」と浅井さん。コースの方向を示しています。

さくら町会を歩きながら、樹木剪定の適正なタイミングや木を弱らす害虫などについての専門知識も披露。アメリカシロヒトリ、グンバイムシ、モンクロシャチホコなど、聞きなれない名前の虫たちが登場。そこで突然浅井さん、「本当は私、カメムシの研究をやりたかったんですよ」と一言。虫好きの浅井さんは、大学時代にカメムシの研究をしていて、そこから樹木にも興味を持っていったとのこと。人生どうなるかわかりません。

そこから善福寺公園へ。メタセコイアラクウショウの見分け方や、ユリノキの通称が「ハンテンボク」であること(葉が半纏の形をしているのです)など、より樹木に親しむためのヒントをいろいろ教えていただきました。
下池はずれのマンション敷地内にも「貴重木」があり、大家さんの許可を得て中に入らせてもらいました。

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こちらの大ケヤキも樹齢で200年くらいでしょうか。トトロの樹とは違って、まっすぐ太い幹の力強さが特徴です。
浅井さんがしきりに「まちしるべ」ということをおっしゃっていました。高木は地域の重要な目印であり、たとえばその木が遠くから見えてきただけで、「ああ帰ってきたなあ」と実感できるからこそ、その景観をしっかりと保護しなければならないということです。この大ケヤキもまさにそういう「まちしるべ」の一つなのだと思います。

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ここから再び善福寺公園にもどり、上池北の針葉樹のエリアへ。ラクウショウの気根がちょっと不思議なたたずまい。この気根に一番近い木がラクウショウなのかと思いきや、地域に珍しい水松(スイショウ)という木なのだそうです。たしかによく見ると葉の形がぜんぜん違う。

そこからは地主のMさんOさん宅の屋敷林をながめながら、木に囲まれたカフェ「Octave(オクターブ)」で休憩。ていねいなアイスコーヒーが美味でした。土曜のみの営業ですのでご注意を。

休憩後はゴール地点、青梅街道沿いの「山葉名(やんばな)いこいの森」へ。オリンピックとなりのこちら、つい最近オープンした市民緑地です。「山葉名」はここにあったお宅の屋号。「山の端」から来ているのだろうとのこと。実際にここが山だったのではなく、かつては森のことを山と呼んだのです。このような緑地になるまでの経緯や、そもそも市民緑地と公園の違い、今後の活用などについてのお話を聞きつつ、緑地内の木々を観察し、梅雨明け直前のツアーはここで終了。青空市みたいなものができるんじゃないかしらとイメージがふくらむ場所。今後どうなるか楽しみです。

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約3時間しゃべり続けの浅井さん、ありがとうございました。樹木についての専門知識はもちろん、区の樹木保護政策など、多角的な視野でお話ができるのは、浅井さんならでは。木や虫のこととなると本当に生き生きとお話をされていたのが印象的でした。

今回は積み残しがいろいろあります。たとえば東京女子大学の学内には珍しい木がたくさんありますが、時間の都合等で今回は割愛しました。また、荻窪八幡の道灌槇から今川エリア、そして西荻南・松庵方面もカバーできていません。案内所では今後も樹木ツアーを何度かおこなっていきたいなあと思ってます。

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