ちょっと違った!? 2019年の花見
寒い日があったせいか、今年の桜は例年より長い気がします。それだけでなく今年の花見はなにかちょっと様相が違ったなあ。そのあたりのことを「 2019年の西荻お花見まとめ報告 」として、まとめて記録しておくことにします。
西荻南の公園で夜桜舞踏
南集会所の道を挟んだところ、「おすもう童子」のある西荻南児童公園では、毎年春に桜の木のライトアップをするのですが、2019年はそのライトアップに合わせて3月30日、「西荻ワンダーランド」というイベントが開催されました。
大道芸人やパフォーマーのパフォーマンスに、ワークショップなどなど。それから出店の屋台。今年からは西荻ラバーズフェスもやらないし、小さな公園だけどほんわかいい感じに賑わいました。ワタクシ、年度末進行が終わらず、最初のほうと最後だけ参加してきました。
パフォーマンスの一人目はカンカラ三線の岡大介さん。明治大正の演歌(川内康範的な戦後の流行歌謡ではなく川上音二郎のオッペケペー節なもののこと)を、空き缶からつくった三線で弾き語るのです。なんとも春の雰囲気。
このあと、シルク(サーカス)系のパフォーマンスやライブなどが続きます。が、いったん家にもどり仕事を片付ける無念。
そして夕方。西荻ワンダーランドのトリを飾ったのはニシオギBダンサーズをみるために再び公園へ。「Bダンサーズ」っていうからてっきり、B-BOY的なヒップホップダンスかと一瞬思ったのですが、メンバーが2016年の西荻ドブエンナーレの時にも踊ってもらったソらと晴れ女さんだというので、「あ、BUTOHのBね〜」と合点がいきました。ほか、共演する高橋芙実さん、田代哲也さんも西荻在住とのことで、今日のために結成したのが「ニシオギBダンサーズ」。純・西荻の舞踏チームを組むことができるなんて、西荻は人材豊富だなあ。
Takeshi Luaさんによる中世の古楽器サルテリーの演奏があやしく奏でられる夕まぐれ、神明通りを白塗りの三人が歩いてきました。裸足で。
舞踏というのをまったくご存じない人のためにざっくりと(厳密でなく)紹介すると、ダンスの一ジャンル「舞踏」は、日本人・土方巽によって始められました。時に「暗黒舞踏」とも呼ばれます。バレエが体の重さをいかに感じさせないかということから洗練されていったのに対して、その後に出現したモダンダンスでは、重力をむしろ意識するようになりました。舞踏に至ると、そもそもなんで立ってるのかとか、身体の不思議によりそうところから体の動きを生みだしていきます。
白塗りには意味があって、たいていの場合、死体を意味します。死と生の境目にいるのが舞踏家なのです。白塗りでなく銀塗りの人もいます。そちらは死体ではなくマテリアル。体を金属とかのモノに置き換えて、生物と無生物の境目を漂います。もちろん体を塗らない人もいます。
さて、今回は白塗りなので三人はおそらく「死体」なのです。そして公園には桜。「櫻の樹の下には」ときたら「屍体が埋まつてゐる」と続く、梶井基次郎『櫻の樹の下には』の冒頭が即座に思い出されます。
衣裳は白、ライティングはピンクなので、体全体が桜色に。この三人は桜の精なのかもしれません。
夜桜の下で舞い踊る三人。遊具があるような小さな公園で、わりと小さなお子さんもいましたが、静かに事態を見守っていました。大きくなった時に、この日のことを思い出したりするのかな。さて、お子さんも静かに見守る中、まさに酔いしれるような気持ちで踊りを見ていたらなんと、本物の酔客が乱入!というハプニングが発生。どうなるものかとちょっとドキドキしましたが、花見に酔客はつきものと思えば、作品をこわすどころか、結果としていいアクセントになっていたとあとで気づきました。
やがて三人は、桜の木に寄り添うように佇み、静かにラストへ。
桜の木の精の魂は、つかの間の時を楽しみ、また来年、花が咲くころまで静かにこの公園に漂っているのかもしれませんね。花見と舞踏、贅沢な時間でした。
西荻北の公園で謎の新聞紙集団に会う
さて、その翌日、3月31日。西荻窪駅前にて、新聞紙を帽子状にして頭にかぶった謎の一団を発見。
なにやらゴニョゴニョと打ち合わせのあと、ぞろぞろと一列で、商店街を歩き始めます。
あやしい。
そして公園へ。
公園にはシートが敷いてありました。あ、これは花見ですね。しばらくこの状態で、何かの儀式のごとく佇んだ後、そのうち儀式も終わったみたいで、やがてうちとけ、普通の花見に。
実はこれ、アーティスト「happy unbirthday (hUb)」のパフォーマンスなのでした。ちょっと話を聞いてみたら、参加者には「花見だよ」ということで告知をしているのだそう。「新聞紙を持ってきてね」とだけは伝わっている。まあ、参加者は「えっ聞いてないよ」というんじゃなくって「なにかあるな」ということは最初からわかっているわけです。で、行列で歩き、公園でなにやら儀式めいたものをしている間は、参加者全員耳栓をしていたのだと教えてもらいました。じろじろ見られながら、音の情報は遮断し、目に見えるものだけに感覚を集中して、一人ひとりになって静かに歩く。体験しないとわからない感覚がありそう。
してその真意は如何? などと野暮なことを聞いちゃあいけない。これはアートなのです。もちろんあれこれ考える分には自由。こんな花見があってもいいじゃありませんか。
八百屋の花見は大盛況
それから一週間後、お世話になっている近所のIさんから花見に誘われました。善福寺公園沿いに住むIさんは、毎年「小高商店」(西荻北にある八百屋)の大花見会のお世話をしているのです。行ってみるとさすが八百屋さん。ものすごい人数。後日、小高商店のゆうさんにきいたところ、「もうね、フェスでしたよフェス」。その人数2〜300人?
西荻の飲食店の人も相当来ていました。だから持ち寄りの品がどれもおいしかったのよね。八百屋さんだけにドカンとビッグなサラダもあり、いろいろスケールがおかしい。
八百屋さんというのは地域のハブになっていて、西荻のお店の人のこと、住んでる人のことを本当によく知っているのです。私も小高商店さんに何度か助けてもらったことがあります。生鮮三品のお店はどんどん減っていると言われてるけど、まだまだがんばって〜!
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桜が咲くのは毎年変わらないけど、花見はいろいろ。善福寺公園のソメイヨシノはまだしぶとく残ってます。オオシマザクラや八重桜はまだ咲き始め。ただながめてぼーっとするもよし、なにか仕込んで楽しむのもまたよしです。