善福寺池と三宝寺池の弁天様 参り(190409)

毎年4月上旬、 善福寺池と三宝寺池の弁天様 がどちらも「例大祭」を挙行します。2019年では三宝寺池(石神井公園)が4月7日(4月上旬の日曜と決まっているそう)、善福寺池(善福寺公園)は4月8日(こちらは曜日関係なく固定)でした。今回はその2つの池の「例大祭」をまわってきました。

武蔵野三大湧水池

このふたつの池は、井の頭池とあわせて一般に「武蔵野三大湧水池」と呼ばれています。武蔵野台地上にある3つの池はいずれも、およそ海抜50メートルほどのところに位置していて、武蔵野台地の下を流れる地下水がだいたいこのあたりで地表面と接し水が湧いているのだと思われます。善福寺池の水源である遅乃井の滝は湧水ではなく、深井戸からの引水なのですが、一時、揚水ポンプが壊れた時も予想より水量の減り方がゆるやかだったことから、今も池底から湧いていると推測されます。

遅乃井の滝

この3つの池に共通するのは、水源付近に「弁天様」があることです。弁天様つまり「弁才天」と言えば、七福神の紅一点、くらいの認識だったのですが、Wikipediaをさらっと読むだけでも、もっと複雑ないわれのある神様のようです。それが神仏習合したり分離したりしたものだから、より複雑な神様になっているのです。弁天様は一般に、財宝の神様であり、芸事の神様とされています。Wikipediaによると、もともとインドではサラスヴァティーという川の神様だったことから、日本では神話に出てくる市寸島比賣命(イチキシマヒメノミコト)と習合(イチキシマヒメは航海の安全を司る水の神様)し、水源地に祀られることとなりました。一方で、明治に入ると今度は廃仏毀釈となり、弁天様は神社か寺かの選択を迫られます。それで、三宝寺池は厳島神社(イツクシマ=イチキシマです)、善福寺池は市杵島神社となり、井の頭池は大盛寺持の「井の頭弁財天」となりました。

 

石神井公園の穴弁天

石神井公園・三宝寺池のほとりにある通称「穴弁天」が、年に一度の例大祭の日だけ、鍵のかかった鉄扉を開けるというのを知り、4月7日、行ってきました。

石神井公園は西荻じゃないじゃないか、とお思いかもしれません。しかし西荻窪エリア一帯には石神井城を居城とした豊島一族の話も多く残っていて、弊社編集企画の『西荻観光手帖』でも紹介しています。西荻窪駅前から北銀座通りを自転車で直進すれば、15分もあれば石神井公園にたどり着きます。

三宝寺池(石神井公園)

そして三宝寺池の中ほどにある厳島神社へ向かいます。

おっ開いてる! こちらが穴弁天。

善福寺池と三宝寺池の弁天様

もともとなぜここに穴があいているのかの由来は定かではないのですが、豊島氏のころからのものであるようなことが解説文にありました。ネットでちょっと読んだ話では、地域の古老が子どもの頃、この穴で遊んでいたことがあって、その頃はただの穴だったのにいつから神様になったのか、というような話もあるようです。なにが真実なのか、ちょっと昔のことも、ちゃんと残さないとすぐに曖昧になってしまいます。

ボーイスカウト少年の呼び込みに吸い込まれるように、外国人(観光客?)が入っていきます。もともとはインドの神様だし。
向かいにある厳島神社の方のお参りをまず済ませて、いよいよ穴弁天へ。

宇賀神

おや、入り口に立て看板。宇賀神とは人頭蛇身で、出自不明の日本古来の神様。弁天様とセットであるいは同一のものとして祀られ、「宇賀弁才天」として信仰されてきました。この穴の中には、池底で見つかったと言われる宇賀神像があるのです。では中へ参りましょう。

穴弁天の穴

ちょっと行くと行き止まりに。以前は奥まで入ることができ、ぐるりと中を一周して出てくることができたんだけど、崩れる危険があるので今はそれができないんです、とは、現地ボーイスカウト少年による淀みない解説。奥に宇賀神像があるらしいのですが、そこまで見えず。

外へ。

さて、外に宇賀神の木札守と絵馬がありましたので、頂いてまいりました。

宇賀神

人の頭というより仏頭ですね。そして体が蛇。おそらく穴の中の像を模した絵なのでしょう。絵馬は白蛇。弁天様というのは蛇に縁があり、白い蛇を連れているものなのです。例大祭の日も正しくは4月の巳の日。4月といえば蛇も活動を活発化する時期なので、昔の人々は目覚めたばかりの蛇に何かのイメージを託していたのではないでしょうか。

それにしても、穴の中の宇賀神像というのはなんともただならぬものを感じます。まっさきに思い出したのは諸星大二郎の代表作『暗黒神話』。諏訪の神・タケミナカタは、あの漫画では蛇の姿として描かれて洞窟に幽閉されていました。そんなこともあって、てっきり私はこの穴弁天こそが石神井の地名由来なのではと思いました。

以前に行った諏訪大社上社前宮近くの神長官守矢史料館の裏手にある御左口神社。ミシャグジ神社とよみます。諏訪の古い神様です。ミが敬称、シャグジは石神とも書くことができ、そして蛇の神であるとされているのです(前に書いた記事「日帰り諏訪の旅」を参照のこと)。蛇体の神・ミシャグジと宇賀神そして弁天様、そして石神井とのつながりをぱぱっと連想したのですが、後でちゃんと調べると石神井の地名由来は別の神社にあるとのこと。つまり私の早とちり。でもどっちも蛇だし、本当はなにか関係があるんじゃないのかな? なんて思っています。

 

善福寺池・市杵島神社例大祭

その翌日4月8日は市杵島神社の例大祭。三宝寺池の厳島神社の例大祭が日曜日に合わせているのに対して、こちらの例大祭は曜日にかかわらず4月8日で固定されています。善福寺公園・上の池の「遅乃井の滝」向かいの島にあるのが市杵島神社。かつては石橋がかかっていて、自由に渡ることができたのですが、ある時期にこの島に無宿人が居着いてしまい、それで橋を外すことになったのだとのこと。現在はこの例大祭の4月8日の一日しかも午後の僅かな時間だけ、仮の橋が架けられて渡ることができます。

例大祭の開始時間は午後三時。すでに多くの人がいました。

市杵島神社例大祭

ふだんは閉められているお堂が開いています。仮橋を渡り、弁天島へ。

市杵島神社

お堂の中に祠があるのは初めて知りました。

例大祭といっても縁日屋台があるわけでもなく、神職の方が祝詞を唱え、地域の方が榊を供えるくらいの簡素な儀式です。

お神酒をいただき、参列者にお菓子が配られて例大祭は無事に終了。めったに来れない場所なので建物チェック。地番

地番の札がありました。善福寺町三六五。

市杵島神社。これまで市杵嶋神社だと思っていたのですが、これに従いこの文では「嶋」ではなく「島」の字を使っています。

ほか、この島には風致地区関連の石碑などがあります。ふだん渡れない島、なんとも特別な気分になりました。

 

善福寺池の神様はタマゴ好き

地域の地主さんと少し立ち話。そこで、前日に行った三宝寺池の宇賀神の話をしたら、「なるほどねえ」と地主さん。「だからこのお祭りのお供えにタマゴがあるのか。ちょっと珍しいなあと思ってたんだよ。蛇はタマゴが好きだからね」。つまり、善福寺池の市杵島神社、イチキシマヒメノミコトを祀っていることになっていますが、やっぱり弁天様つまり蛇の神様なのです。その証拠には今もお供えにタマゴがある。善福寺池の神様はタマゴが好き。最後にちょっとおもしろい話を聞くことができました。

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