2022年3月の 西荻案内所文庫 は「 西荻窪のまんが 」

西荻窪のまんが

2022年3月の西荻案内所文庫は「 西荻窪のまんが 」。

西荻南のことビル1F nofcoffee内「西荻案内所文庫」の本を入れ替えましたので、ふらりお茶がてらご覧くださいね。
年が明けたと思ったらあっという間の3月。
いろいろやることが目白押し、寒暖差やらなんやらで体調も乱高下するし、世界情勢は大変なことになってるし、もう頭も体もくたくただよ〜、なんて人多くいらっしゃるのではないですか?(私はそう)
そんなときは、マンガ読んで、ちょっと甘いものつまんで、一息ついていきましょうよ。
(マンガはこころのスイーツです!)


『西荻窪三ツ星洋酒堂』浅井西
ドラマ化されて、西荻ロケがあったため、聖地めぐりというのでしょうか?明らかにわざわざ遠くから訪ねてきたとおぼしき女性数名のグループなどをお見かけしたりしたなあ。
隠れ家的な小さなバーのミステリアスな店主たち(美青年3人!)が、悩める人々に提供する時間と場と言葉と、美味しいお酒と食べ物と。うーん、西荻窪にありそうな。明らかにマンガの中でモデルになっている(建物なんかの設定)のは、三人灯、にわとり文庫のあの辺で、ロケに使われたのは物豆奇、のまどの表のところ。そんなところにも注目しながら読むと地元ならではの喜びがありますよ。



『西荻窪ランスルー』ゆき林檎

高校を卒業してアニメ制作会社に入った咲の成長物語。キャッチコピーの「仕事も恋も全力。がむしゃら女子の全力疾走物語!」を見ただけでちょっと涙腺がゆるんでしまうのですが、これ、親目線がちょっと入ってきてる?
自分がどれだけの力を伸ばしていけるか、いろんな個性(的すぎる)の人たちとどうやって一緒に仕事をしていくか、体も心も壊さずに、納得いくようなやり方で働き続けられるのか?もしかしたら多くの人がずっと悩み続ける問題ですよね。



『西荻ヨンデノンデ』玉川重機

西荻窪の路地の奥にひっそりと佇むブックバー。そこを営む姉妹と訪れる人々の、それぞれの人生の物語に、古今東西の物語や本、お酒のエピソードが絡まり合って、一篇一篇が芳醇な味わいの、カクテルのようなマンガです。おまけの西荻窪テイクアウトマップも必見。
あら、ここまでの三作品、どれも生き方や仕事や自分の居場所の作り方について描かれているなあ。人生に思う存分迷っていいよ、このまちは受けとめてくれるから、ってメッセージを感じます。
玉川さんの西荻マンガはこちらもおすすめ。本をゆっくり読みたくなりますよ。
『草子ブックガイド(1)〜(3)』



『松苗あけみの少女まんが道』松苗あけみ

西荻生まれ西荻育ちの松苗さんがいかに少女漫画家になったか。数々の名作マンガがどうやって生まれたか。(あ、この作品もお仕事マンガですね)西荻窪の昔を忍ばせる写真も載っていて、大変興味深いです。松苗作品には西荻の素敵な洋館などを参考にされたのかなというものがよく出てくるのですよ。人物名やちょっとした物にも西荻が隠れてる!そんなところにも注目したら何倍もまた楽しめますよ。
『妄想婦人倶楽部』
『HUSH!(1)〜(3)』
『紺野家の兄弟 花賀家の姉妹』
『夏は人魚とパラダイス』
『山田君と佐藤さん(前後編)』
『僕は天使に嘘をつかない』
『ファンタストの恋愛』
『WE LOVE YOU』


ちなみに、ことビルのある神明通りを荻窪方面に200メートルほど歩いた右手に、「sugarpine」という可愛らしいお店があります。こちら松苗あけみさんのお姉さんのお店。(マンガに出てくるあのお姉さん!)



『懐かしい花の思い出』今市子

この中の「眠りにつく前牛乳を」という一篇が東京女子大の風景、ということで、へえ、寮ってこういう感じだったのね、と興味深いです。

松苗さんの『少女まんが道』に出てきた漫画家さんの中から、西荻窪でお見かけすると「わー」とひとり脳内で騒いじゃうのが一条ゆかりさん。名作って古びないですね〜。何度読んでも面白いです。
『嘘つきな唇』
『ロマンチックください』
『女ともだち(1)〜(3)』
『それすらも日々の果て』
『星降る夜にきかせてよ』
『シンデレラの階段』
『すくらんぶる・エッグ』
『日曜日は一緒に』



『うつ病九段』原作先崎学 漫画河井克夫

うつ病で将棋が指せなくなったプロ棋士の闘病日記。だれでもなりうる病気だから、どんなふうに始まって、こんなことがあるのは病気のせいで、それにたいする対処の方法があって、経過はこうで、とマンガで知ることができたことが良かったなあ。西荻の南口にある囲碁・将棋教室のことも出てきますよ。



『ゴミ清掃員の日常』
『ゴミ清掃員の日常 ミライ編』
 原作・構成 滝沢秀一 まんが滝沢友紀

お笑い芸人で清掃員の仕事もしている筆者のドキュメント漫画。滝沢さんは杉並区の清掃員なので、まんまダイレクトに地域のゴミ事情を知ることができます。ゴミには出した人の生活が詰まってる!生活への考え方もゴミに現れてる!読むと、もう少しだけ努力できることがあるかもって考えたり、コロナ禍の時代に変わらずゴミを集めて処理してもらえてることがどれだけありがたいかとしみじみ思います。個人的には、一昨年から始めたコンポストで生ゴミをほとんど出さなくなったので、燃えるゴミはほんとにちょっぴりになりました。でもそうするとプラゴミの多さが気になる〜でも減らすの難しいですね。油とかお豆とかお米とか、量り売りで買えるお店が西荻にできないかな、なんて思う今日このごろです。



『着ていく服が見つからない』
『そろそろ実家を離れたい』
曽根愛
おしゃれや仕事や健康や生活や人間関係など日々の悩ましいこともそして楽しみも!あるわ〜そうそう〜の嵐で笑ったあと、みんな悩みもいろいろそれぞれ抱えてるんだよね、と仲間を得たような安堵感をおぼえるのでした。曽根愛さんの漫画は『坂の途中の小鳩荘』もおすすめで、西荻のあんなところこんなところが登場してお話もすごくいいのですが、西荻のこと研究所内で貸出中なので、却ってきたらまたご紹介しますね。



『トシコ、母になる。』荻並トシコ

子育て漫画って、まさに子育て中の方にとってはあるある!のお楽しみですよね。子ナシの私には、想像以上の大変さと理不尽さに頭が下がります、の一言につきるけれども、子供連れの友人に対しての理解度をちょっと上げてくれるというありがたさがあります。思う通りにまったくならないのが育児だと理解していれば、約束の時間に遅れてもキャンセルされてもまあしょうがないよね、でやり過ごせるというもの。大変さを超える面白さとかはっとするような感動をくれるのもまた子供だし、親以外のまわりの人間にもそれを分けてくれる存在だからなあ。しかし人の子はすぐ大きくなるのなんでだろう?



『スソアキコのひとり古墳部』スソアキコ

古墳が気になるスソさんは、ひとりで、あるいは気のおけない仲間たちと、日本のあちこちの古墳を訪ねるようになります。かわいい絵とスソさんの素朴な興味のままに、どんどん連れて行かれる古墳の世界!なにか面白いと思うことをみつけるというのはこんなに日々を楽しくするのですね。スソさんにつられて、どこかに行ったときに古代の香りがするものがより気になるようになりました。意外にたくさんあるものですよね。
スソさんがイラストレーションを手掛けたこちらも面白いですよ。



『知られざる縄文ライフ』著者 誉田亜紀子

『中央モノローグ線』小坂俊史
中野在住イラストレーター、高円寺の古着屋、西荻窪の劇団員などなど、中央線沿いに住む女子を題材にした4コマ漫画。うーん、あてはまるようなそうでもないような?少し前の漫画なので、その頃の空気感も思い出しながら読んでみるといいかも。西荻のエピソードで、住宅街の中の個人店が意外とつぶれないでひっそりといつまでもある、それが、きっと見つけてもらえるとこの街の人を信じ、また見つけてもらえる自信もあるのでしょう、とあってちょっとぐっと来ました。

『花に染む(1)〜(8)』くらもちふさこ
弓道を通して特別な絆を築いたが別れ別れになった幼馴染同士が、ふたたび弓と大切な人と出会う物語。

参考:
『弓の道 正法流入門 武道としての弓道技術教本』吉田レイ監修 紫鳳会編集
西荻北の弓道場「吉田教場」の本です。

『駅から5分(1)〜(3)』くらもちふさこ
花染町の中で、いろんな人間関係やできごとが交錯していく。ちょっとひねりのある人物造形が面白い。

『PARK』大友克洋
BRUTUS2007年1月号のために大友克洋さんが描き下ろした作品。舞台は善福寺公園。短編漫画だけど短編映画見たような読後感。やっぱり絵がすごいですね。今はもうなくなった遊具が懐かしい。

『孤独のグルメ』久住昌之原作 谷口ジロー作画
飲食店だけではなく、外で買って食べるものの美味しさとか面白さを広く教えてくれたのはこの漫画であり、久住昌之さんでしょう。ドラマ版では飲食店のだめなところに言及することはまずないけれど、漫画の中には批判的な視点もあって、いいときも失敗するときもあるのが日常により近い食の体験だなあと思います。西荻窪の飲食店で取り上げられているところはもうないお店だけれど、そのお店のエッセンスは今も西荻のあちこちに感じられます。

『愛がなくても喰ってゆけます。』よしながふみ
登場人物のなかでも作者を投影していると思しき漫画家の食への執着と飽くなき姿勢には感嘆するほどで、同時に、西荻にはこういう人がたくさんいる!という意味でも西荻漫画に認定したいです。取り上げられているのは「鮨 たなか」。磨き上げられた食の世界ってエンターテイメントですよね。

『東京あんこ案内』時川真一
大福、どらやき、おまんじゅうに人形焼。時川さんのイラストがとても美味しそうで、いますぐあんこのおやつを買いに行きたくなってしまいます。西荻窪ではえんツコ堂のあんパン、越後鶴屋の大福、喜田屋の豆大福、甘いっ子のあんみつが紹介されてます。

『らくレシピ』近藤ゆかり
食べ歩きもいいけど、ささっと楽に自分のためにごはんを作るのも大事ですよね。(お財布的にも、健康にも)。大体いつでも手に入る材料で、無駄なく無理なく作れるレシピがありがたい1冊。ありふれた材料なのに、ちょっと目先の変わったレシピも多いのは、作者が食べ歩きも大好きで探究心が強いからと推察します。
『白ふくろう舎オリジナルイラスト集』近藤ゆかりさんの別活動名で、この作風の幅がプロの凄み!しばし別世界をお楽しみくださいね。

『中央線ドロップス』元町夏央
西荻窪編は頭と心と体がちぐはぐでいらいらしたような少女の物語と、飲み屋街、ピンクの象、バレエスタジオ、混沌とした西荻窪の風景が絶妙にあっているような。

『東京シャッターガール』桐木憲一
カメラを持って、街を歩けば、そのときだけの街の空気を拾うことができる?
この作品ではアンティークの街、という視点で西荻窪を切り取っています。「西荻窪は万華鏡と同じ…夢みたいな街だから」っていうのはちょっと気恥ずかしいようですが、そういう面もあるのかなとも思います。

『西荻夫婦』
『西荻カメラ』
やまだないと
ずっと以前に福田里香さんが、やまだないとさんとの西荻ブックマークのトークで「これだけ食べ物が出てきて、平和な感じがしない、ずっと不穏な感じが出せるのはすごい」っていうようなことを言っていたのを思い出します。自由なようで、すごく危うい、はかない西荻のくらし。これもまた西荻であり。どうでもいいけど『西荻カメラ』の巻頭のピンクの象は宇宙人みたいです。

『西荻ビギナー』奥田雅子
そうでした、こんなことも決してほかのまちでは当たり前ではないんだった、っていう西荻のちょっとした不思議なあれこれを4コマにしたzine。西荻丼での連載も面白かったな。またいろいろと読みたいです。

もう西荻のことはおなかいっぱーい!…ですよね。
西荻関係ないけど(多分)面白いの、少し置いておきますね。

『となりの一休さん』伊野孝行
『バー・オクトパス』スケラッコ
『なんてことないふつうの夜に』獄まいこ
『邦キチ!映子さん』服部昇大
『君たちはどう生きるか』原作吉野源三 漫画羽賀翔一

そして、この文庫を準備中に始まってしまった戦争のこと。辛く苦しいことだけど、考えること、想像すること、行動することを諦めないために、何冊か置いておこうと思います。

『coccoon』今日マチ子
沖縄戦を舞台に、少年少女はどう生きて死んだのか。戦争が損なうものは何なのかを考える一冊。

『伊丹万作エッセイ集』大江健三郎編
「戦争責任者の問題」という先の大戦後すぐに書かれた文章が、いまだに鋭く突き刺さる。

『独裁者のデザイン』松田行正
世界中でいまむしろ独裁制が生き生きと堂々とはびこるようになっているように思うのは私だけではないと信じたいのだけれど、このいやな流れを作っているのはなんだろうか、ということも考えてみたいのです。

『本の虫ではないのだけれど』清水真砂子
ゲド戦記の翻訳者である清水さんが、どんなふうに自分が戦争加害者になってしまうか想像しよう、そうならないためには何が必要なのか徹底的に考えるべき、という趣旨の講義をされている文章に、今現在強いリアリティーを感じます。どこか遠いところの戦争、ではないのですよね。

『もういちど読む山川日本史』
振り返ってみれば、先の戦争のこと、よく理解していないと感じています。戦争を体験した人の貴重な話を聞いておくこと、手に入る資料を読むこと。ここからかな、と思います。

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