昨日の記事のつづきです。
西荻案内所の最終展示「西荻暗渠・松庵川展」、関連イベントとして実施されたのが「暗渠花見酒マラソン」でした。「マラソン」といっても走るわけではありません。桜を探して暗渠をめぐり、酒を呑む、ということなのです。1日目は松庵川、2日目はちょっと遠出で井草川へ。リードするのはもちろん、吉村生さんです。
とにもかくにも、まずは暗渠へたどり着かないことには始まりませんね。「暗渠者」の二人の後ろをついていったのですが、この二人の暗渠に向かう足取りの速いこと! そこにたどり着かぬことには呼吸もできないというような緊迫感……いや、ご本人たちはまったく意識していないようですが……。(以下、「暗渠花見酒マラソン」井草川編です)
暗渠の遊歩道に入り、暗渠のヌシであるネコにご挨拶。
つまみが足りぬと途中、井荻の焼鳥屋さん「千成」に立ち寄ります。こちらはテイクアウト専用。焼きあがるまでしばし待たねばなりません。この店の名店ぶりは、焼きあがるあいだの下記のようなやり取りで判断できました。
店主「で、タレにするのそれとも塩?」
ワタクシ「えっ、じゃあ塩で」
店主「……うちはね、タレがおいしいんだよ!」
ワタクシ「……じゃあそっちでお願いします……」
こういうややこしいおっさんがやってる店は、たいがいうまいと相場が決まってるんですね。
それにしても、井荻辺りまでくると私の体感ではもう「太陽系のきわ」くらいの感覚ですね。環八を越えると落ち着きがなくなります(笑)。西荻のエッジワース・カイパーベルト。なにしろ西荻案内所の3年間、ほぼ西荻から出てませんでしたから、特に今回は歩いてここまで来てるだけに、探査機ボイジャーの気分です。はたして帰れるのか不安になってきます(帰れます)。
そんなことを考えながらテケテケと歩いていくと、桜が咲きはじめたばかりの公園にたどりつきました。「千成」の焼鳥袋をオープンして宴会開始。満開までにはあと数日ありそうでしたが、桜の木の下、参加者で楽しく交流できました。写真は公園の片隅にあったスローガン「やればできる」越しの一行。
こちらのやればできるタマゴオブジェは、杉並区名誉区民第一号であるノーベル物理学賞受賞者・小柴昌俊さんを記念しています。
思えば、地下深くに超純水を満たしたニュートリノ観測装置「カミオカンデ」と、地下水道の暗渠とはなにかつながりそうな……いや、両者はもうまったく関係ないのですが、そのうちなにかつながりが思いつくと思います(笑)。
というわけで、偉大な小柴さんのことを思いながら、季節の訪れを愛でるツアーは現地解散。ほとんどの参加者は荻窪の四面道あたりまで一緒に徒歩で戻りましたが、その道すがら、暗渠者の高山さんが、ほぼ無意識的に低い方へ(つまり暗渠の方へ)向かってしまうのには驚きました。まさに川の流れのように、ゆるやかに下へ下へ。わずかな高低差も逃さない「暗渠センサー」が体内に内蔵されているのでしょう。まるでゲゲゲの鬼太郎です。その時に吉村生さんが放った言葉が印象深かったです。
「スリバチが好きな人は、地形を俯瞰したいからって上に上がろうとするんだよね。それって私たちにはまったくない感覚だから」
スリバチ者(三方を高いところに囲まれてすり鉢状になっている地形を愛でる人のこと)と暗渠者の違いというのはそんなところにあったんですね。
暗渠者たちに幸あれ!
[…] 荻案内所の最終展示「松庵川展」の時にも、井草川ツアー「暗渠花見酒マラソン」(ここにレポートあり)をしたことがあります。私たちは井草川を通じて、「井荻」という場所を知りま […]