西荻のメディアと場
第2回 Nishiogiology 西荻町学
ジェームス・ファーラーさん 木村史子さん
日英バイリンガルの西荻情報サイト。
ジェームス・ファーラーさんをリーダーに、
西荻のディープゾーンに果敢に踏み込みながら、
「日本の生活」を紹介している。
なぜNishiogiology 西荻町学をはじめたのですか。
まず前提として、これはウェブサイトだけでなく、ゆくゆくは論文(本)を書くためのプロジェクトなんです。私は上智大学で社会学を教えていますが、その前は上海にいました。専門は実は上海の研究です。上海や東京のような巨大な都市では、その景観を含めさまざまなことが常にダイナミックに変貌していますが、その中で特に西荻においては、小さなものが奇跡的に保たれている。たとえば「柳小路」がそうでしょ。そういったことに興味を持ち、この西荻を調査対象にしようと思ったんです。また西荻には、プライドを持って仕事をしている職人もたくさんいて、その人たちを紹介したいというのもありました。こうした作業を通じて、そのコミュニティのメンバーになっていくというのかな。(ファーラー)
私は編集者です。この取り組みのおもしろさに惹かれ、研究協力、日本語サポートとして活動しています。(木村)
日本語と英語の両方で表記しているのがいいですね。
ニューヨークやパリに住む友人たちもこれを読んで楽しんでいます。旅行者向けの日本ガイドブックだと、いわゆる観光地のことはわかっても、そこに住む人たちの生活というのは見えてこないでしょ。でも私たちが伝えたいのは、日本の街の本当の様子。ガイドブック的な情報ではなく、その街の過去の発展過程も含めて、「年寄りの日本」とでも言ったらいいのかな、そういったものを紹介しながら、「日本に住む」とはどんな感じなのかを伝えたいです。(ファーラー)
西荻を選んだのはなぜですか。
日本の市民文化の成熟と多様性を調査するのには、西荻はとてもいいんです。西荻には特筆すべき歴史もないし、地理的な重要性もない。でも一杯飲み屋に世界各国の料理屋があり、和洋の菓子職人がいて、こだわりのコーヒーやお茶を出す店があり、そして、多くのコミュニティがある。他のもっと大きな街が商業的な「組織化した規模」であるのとは対照的に「人間的規模」がこの西荻にあると考えています。(ファーラー)
西荻の魅力はどんなところですか。また、だめだなあと思うところも教えてください。
西荻の魅力はね、はしご酒(笑)。まずどこかで軽く一杯飲んで、それからごはん屋さんに行くのもいいし、その逆もいいよね。だめなところはね……二日酔い!(笑)(ファーラー)
私は住まいが西荻じゃなく、稲城なんです。飲んだ後にそこまで帰らなきゃいけないのがつらいです(笑)。(木村)
これまで聞いたいろいろな話の中で特に印象に残っているのはどんなことですか。
こけし屋さんでお店の歴史を聞きました。成り立ちや、文化人たちのサロンとなったことなど。スナック「紅」もおもしろかったです。昔、隕石が落ちたパワースポットだから、西荻には宗教が集まってくるとか、そういうちょっと不思議な話が聞けて刺激的でした。(ファーラー)
パンのしみずやさんでは戦後日本のパンの歴史を教えてもらいました。戦後しばらくは小麦粉とパンを交換していたんですって。持ち込み小麦の種類がさまざまだから、出来上がったパンの味がその都度ちがったそうです。(木村)
これからはどのような展開をする予定でしょうか。今後取り組みたいテーマについても教えてください。
本にするのはまだまだ時間がかかりそうです。ビデオ録画もチャレンジしたけど、緊張してブレちゃうんです。酔っぱらってるのもあるけど(笑)。
今後のテーマとしては、一つは柳小路。いつごろから駅前のあそこに、あのように小さなお店が並ぶようになったのか。青線地帯だったという話も聞いたことがありますし、一方で住んでいた人もいたといいます。いろんな人に話を聞いて、まとめていきたいと思っています。もう一つ調べたいのは内田秀五郎さんのこと。杉並区になる前の、井荻村の村長さんで、西荻地域の大規模な区画整理のほか、インフラ整備など、今の西荻にもつながる街の変革をした人物です。まだしっかり調べてないのですが、この人を知ることで西荻のいろいろな側面がまた見えてくるのではないかと思っています。(ファーラー)
東京近郊におけるフードカルチャーのレポート。更新は不定期。Facebookなどで告知。
メンバーは2人+4人の学生。2015年4月より
https://www.nishiogiology.org/
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