メンバー紹介(だいたい登場順)
奥秋圭 西荻案内所 グラフィックデザイン
川中彰平 ニシオギ空想計画 実行委員長 西荻案内音頭ほか作曲 株式会社三井ホームデザイン研究所
奥秋亜矢 西荻案内所
西澤玉葉 東京大学新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻
石井祐樹 風工房 一級建築士事務所
鈴木貢成 西荻中間層一員 株式会社三井ホームデザイン研究所
斎藤慧 ノンキ建築設計事務所 落語会「古典廻し」企画
原田直子(ゲスト) 信愛書店
石田摩美子(ゲスト) 石田設計室
奥秋 6月のチャサンポーの時に一欅庵の2Fで開催した「 ニシオギ空想計画 Vol.1」、北銀座通りの道路拡張事業認可が迫り、南口の再開発の噂も飛び出してきた中で、西荻が好きな個々人が今一度、それぞれがイメージした西荻の未来を出し合ってみよう、ということで、公募をした結果、35点の応募がありました。今日はそれぞれの「 ニシオギ空想計画 」を一つずつ、「実行委員会」メンバーで講評をして、次回11月に開催するニシオギ空想計画Vol.2につなげていければと思っています。
川中 そろそろ第二次募集も開始したいですからね。
1 東京女子大と西荻窪の関係
奥秋 まずは東京女子大学の学生さんの案から見ていきましょうか。
「西荻の地酒を作ろう」
西荻で飲もう!
東女生と西荻の方々の交流のきっかけ。夜でも明るい西荻。
原材料:南相馬の米
災害時相互援助協定を結んでいる南相馬を応援。
春は田植え、夏はラベル公募、秋に収穫、冬に造る。
東女生と西荻の小学生で南相馬に行ってコメ作り!
ボトルのラベルは西荻全体から公募
という空想計画です。……補足すると、この縁で、ハロー西荻の時にも南相馬から相馬野馬追の馬が来ていました。今年はやらなかったけど。
川中 すばらしい。西荻の地酒って今までなかったのかな。
奥秋 「西荻小町」ってお酒を以前に見かけたことがあります。
川中 それ、お土産として買ったことがある気がする。
亜矢 東女生がこんなふうに西荻に関わりたいというのは大歓迎です。
奥秋 次は「TWCU×西荻マーケット」です。
昼は、西荻のケーキ、パン、雑貨、カフェなどのお店がが出展するマーケットを行い、夜は東京女子大学の本館に、西荻の町並みでの物語をプロジェクションマッピングで投影。西荻の方々にもその他の人々にも、西荻の魅力を感じてもらえるイベント」。
町並みの物語、つまり映像をつくって、本館の白い壁に投影すると。
亜矢 東京女子大を今より開いていくというのは、大賛成です。そんなふうになってほしい。女子大は警備も厳重で安全だから、むしろ親子に開放することはできないかなあ。自然も豊富で中庭の芝生も楽しいし。
川中 そんなに厳重なんですか?
亜矢 中に学生寮がありますから。やっぱりときどき変な人が来るらしいですよ。
西澤 これは東京女子大の学生さんの案ですよね。
亜矢 そうそう、外部から学校の開放を提案できないけど、学生さんの当事者が提案してくれているのが嬉しいですね。
奥秋 次は「神明通り提灯たくさん計画」
インスタ映え!
日本の文化継承!
学生×街
ろうそく屋さんとコラボ、モダンな提灯やろうそくを東女の学生と共同で製作したい。
イラストはニシオギに住む人・通う人から公募。
とのことです。神明通りのグリーンベックス・キャンドルが指名です。これを見たキャンドル屋店主はすごく喜んでました。
石井 神明通りは昔からの道で、まっすぐ東京女子大までつながる。それを提灯でつなげていくと。
原田 グリーンベックスさんの発案で、東銀座会の街路灯をラッピングして、色がグラデーションになるように並べたいというのがあって、商店会の総会で許可が出たので、近々変わります。お楽しみに。
奥秋 松庵商店会や銀盛会の街路灯はLEDで色が変わるようになっている。
亜矢 外国の人が写真を撮ってます。
原田 街路灯を変えることは商店会にとって大事業なんです。逆に言えば、商店会というのは街路灯をいじるほかにアイデアがないんです。変えれば目立つし。
亜矢 せっかくアイデアを入れても、そのあとケアがされていないことがあると残念。
石井 どことは言わないけど、そういう街路灯がありましたね。
奥秋 次は「西荻チャンネル」。
これはYoutubeチャンネルの提案です。
1)西荻のお店紹介、インスタグラムでクーポン配布、いいね!した人は10円OFF、など。
2)西荻ショートムービー。西荻出身の俳優を起用して、作成は西荻出身の方に依頼、東京女子大学で上映会。 上映会の広場では、西荻マルシェを同時開催。
3)モデルプラン紹介。これは、西荻散歩のプランを公募して、女子向けとかカップル向けとかのコースを紹介するもの。
さっきのマーケットと重なる内容がありますね。
石井 これは「オクキン」の出番じゃないですか。
亜矢 いやいや、おっさんじゃなくって東女生がやらなきゃ。
川中 東女生と「オクキン」の対比が見たいですね。
西澤 学園祭の時にやりたい感じなんでしょうかね。
川中 学園祭の時は一般人入構可なんです。この計画は、それ以外の時にもオープンにしたいというイメージなんじゃないかな。
奥秋 西荻と女子大とのコラボ、最近動き出していて、昨年のトロールの森の時には、VERA祭の日だけ、東京女子大の中に展示物が置かれたりしはじめています。学園祭の運営資金集めで、西荻の商店会イベントでは女子大生がアルバイトしてますし。女子大の先生たちはオープンな方が多いんだけど、事務方は大学を守る側の立場だから、やはり条件はきびしい。もちろんそれはいいことでもあるとは思いますが。
石井 西荻生まれにもかかわらず、実は昨年、初めて中に入りました。
亜矢 あのチャペルの中に入った時とか、素晴らしい建物を見た時とか、ああ、西荻に来てよかったなあ、と思う瞬間です。私がかつて行った某大学は、立て看板やら落書きやらでとても汚かったので、初めて東京女子大に入った時に、こんなところで大事に守られながら育つ4年間ってすてきだな、と思いましたよ。
奥秋 東京女子大がアントニン・レーモンドの建築であることは、ここにいるみなさんに説明するまでもないことなのですが、初期のレーモンド建築である「東寮」「旧体育館」の解体をめぐって、東女の卒業生が書いた芝居があります。「趣向」というユニットで活動しているオノマリコさんという東京女子大出身の劇作家が書いた『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』という作品。内容は、旧体育館の解体を巡って、学内でさまざまな方法で反対運動が広がっていくんだけど、けっきょくそれは挫折して、4年間の学び舎からそれぞれ学生たちが巣立っていくという、せつなさの残る群像劇です。
この芝居は、入学したての新入生たちが、自分がこれから通うキャンパスを見て「なんてかわいい学校なんだ!」と心ときめく場面から始まるのですが、その冒頭の場面ですでに客席からすすり泣きが聞こえるんです。おそらく東京女子大OGの人(笑)。それだけ大学の校舎への思いが強いんですね。
奥秋 次は「多言語翻訳アプリ」。
機能
1)アプリ登録でレストラン割引、メニューを写真でかざすと訳してくれる
2)道案内してくれる
3)通訳機能
4)店の予約ができる(電話不要!)
5)メッセージを送るといつでも相談に乗ってくれる
中国語、韓国語・中国語・ネパール語・ビルマ語など、申請すればどの言語でも追加できる。
西荻案内音頭を無料で聴き放題!
イベント情報配信(西荻案内所へのURL記載)
……気を使っていただいてます。
亜矢 言語学ゼミの先生が、今回の学生さんたちに紹介をしてくださったので、こういう案が出てきたのでしょう。東女の言語学は多文化共生をベースにした社会派の言語学。今は小学校のクラスに何人か、外国人の子がいるようにもなっているし、実際にどうコミュニケーションを図っていくかが課題となっています。
川中 ともかく、東京女子大とは今後もコラボレーションを考えていきたいですね。
2 未来の西荻を担う人たち
奥秋 次、行きましょう。西荻在住の大道芸人さんから。
桃井原っぱ公園で年に2回「MUD RUM」開催。どろんこイベントです。みんなドロまみれになって大人もハジケラれるイベント。
色々な所ですてきなアーティスト、ミュージシャンがパフォーマンスや演奏をしている。
ヴィーガンはとてもエコで地球にやさしいのです。ヴィーガンなライフスタイル、レストランでいっぱいのNishiogikubo!
亜矢 西荻はヴィーガンに優しい店が多いですから、いいですね。
石井 ヴィーガンってどのくらい一般化している言葉なの?
亜矢 実は今日、ヴィーガンの人も参加したランチ会で、自家製コーヒーゼリーを持っていったんですね。大丈夫だろうと思って。そしたら、ゼラチンを使ってるからNGだったんです。わかっているつもりでいても、そんなこともある。
川中 ゼラチンはなに?
亜矢 あれは動物性のもの。ハチミツも動物を使役してつくるからNG。かつおだしもNGなので、実は日本食はけっこう難しい。
奥秋 「西荻まち歩きマップ」にはヴィーガン対応店マークが付いてますから参考にしてほしいなあと思います。NG素材をつかわずいかにお肉っぽさを出していくかとか、ちょっとだけゲーム感覚があって、お店の人によってはヴィーガンメニューづくりを楽しんでいるふしもある。いろいろな考え方の人がいて、その多様性を受け入れていくのが西荻のいいところかなと。
で、これを書いた女性は小学生に英語を教えていて、彼女の生徒さんたちもニシオギ空想計画を書いてくれました。みなさん10歳女子。そんな都合で英語での投稿になっています。
一人目は「MUSIC TOWN NISHIOGI」。
ステージの上にバンドセット。野外音楽堂みたいなもののイメージなのかな。
川中 いいね〜善福寺公園とかにできたらいいな。
「A TOWN WHERE EVERYONE IS HAPPY」。
西荻窪駅できっぷを買うと、刺激的なアトラクションに乗ることができるみたいですね。
鈴木 観覧車もあります。
もうひとつは「NISHIOGI EVERYTHING IS A PICTURE!」
ちゃんと日本語も添えてあります。「西荻が全部絵の世界!」。いろいろな風景の絵。物語世界の中に入り込む、みたいなイメージなのかな。
この3つの出展作を見て、今から30年くらい前の高井戸第4小学校の文集のことを思い出しました。それぞれ「未来の西荻窪」について、今、西荻でお店をやっている人などが小学生の時に書いてるんですよ。
亜矢 それ、今見られてるの知ったら、いやがるだろうな〜
奥秋 小学生なら「未来」のイメージって、宇宙とかチューブで移動とか車が飛んだりとか、そういうものじゃないかなと思うのですが、でもこの30年前の文集では多くの小学生が「西荻はこのままでいいです」と言っている(笑)。
亜矢 現在はあるお店を経営している方が小学4年の時に書いた未来は、「ボタンを押すと野菜が届く」でした。これ実現してる。
次は「にしおぎねこタワー」。
川中 これは人気でしたよね。よくわからないんだけど、アンケートでも人気でした。
亜矢 西荻は猫好きが多いし、猫をテーマにしたイベントも多い。店主が猫好きとか。「ネコ」と屋号についているお店も多い。
奥秋 「ネコソダテ」とか「ねこやなぎ」とか「コノコネコノコ」とか「雨ねこ」とか。
亜矢 猫とどう暮らすか、ということをテーマに考えている人も多い。
川中 ねこタワーはなにを訴えているのでしょうか。
亜矢 「ねこ、かわいいよ」ということかと。
奥秋 二人はきょうだいなので、同じモチーフです。つまりねこタワーに2票入っている。
川中 11月のVol.2では立体化しないといけないですね。
西澤 猫が遊べるタワーをつくればいいのでは。
石井 世界は人間のためだけにあるのではない、ということですね。その第一歩として、西荻を猫の聖地にする。
3 空想するのは自由だから
奥秋 つぎはチャンキー松本さん。
「西荻村まつり計画」
そこが空地にでもなったら、ガラクタ集めてやぐら組んで、音頭唄って踊りましょう。村まつりが似合う、そんな街が東京にあってもエエんとちゃうん?
令和元年五月二九日 チャンキー松本
これは私とチャンキーさんで、もし南口が再開発になったらというので、いろいろと話をしたところから着想が生まれていると思います。ひとたび地震が起こったら現状では大変なことになる可能性が高いから、再開発で安全性を高めていきたいという話が出てくるんだけど、一方ではあの街並は残ってほしいという思いもある。そこで見方を変えてみるのがチャンキーさんの案。つまり、地震が起こるまでは、もう再開発をやらなくていいんじゃないか、なにか事が起こったら、その時に更地にして、そこでやぐらを組んでひとまず盆踊りを踊ってから考えればいいんじゃないか」ということです。だから更地になってなきゃおかしいんだけど、戎や珍味亭の看板がちゃんと生き残ってるのがおもしろい。
亜矢 あのあたりの建物は柱がいっぱいあるから地震には強いって誰か言ってませんでしたっけ。
石井 地震もあぶないよ。高さはそんなにないからなんともいえないけど。
奥秋 予備的に街を補強しておこうというのではないのに驚きました。
亜矢 受け入れる気持ちを持つ、というのは斬新。
川中 まあ、行政サイドはぜったいに言えないことですね。これとは真逆のものが、東北の海岸につくられている巨大な防波堤。問題になっています。何十年かに一度の津波に備えて、巨大な堤防をつくったり、街自体を山の上に持っていったり、やりすぎると不自然なことになる。
石井 基準をどこでひくか。
川中 言いにくいけど、そこはある程度受け入れるというのも復興を加速する一つの方法なのかもしれない。
奥秋 次は「善福寺川を里川にカエル会(善福蛙)」のメンバーの空想計画です。「ニシオギ空想計画」を始めるにあたって参考にしたことの一つに、去年の7月に善福寺公園内にできた遅野井川親水施設があります。この水路の整備は井荻小児童の区民提案から始まったのですが、その活動をサポートしてきたのがこの「善福蛙」の会。長年フェンスで覆われていたこの水路のフェンスを外した時、この水路がどうあってほしいかということを井荻小の児童たちが絵に描き、それを区長に提出したところから、このプロジェクトが始まりました。その数十点の絵は工事中にも展示されていたのですが、このたくさんの空想絵画を見た時に、こういうことこそ、大人もやればいいのではと思ったのです。
善福蛙のメンバーは、究極的には善福寺川を、多摩川支流の野川のように、人が入っても安全な川にしたいという壮大なイメージを持っています。そのためには、水をきれいにしなければいけないのですが、水をきれいにするためには、合流式下水道の生活排水が川に流れ込まないようにしなければいけない。それを実現するにはまず、合流式下水道を分流式下水道にするという方法がある。しかしこれは予算も莫大となり時間もかかるので実現性に乏しい。そこで雨水を地面に浸透させることで降雨時の合流式下水道の流量を減らし、川に流れ込まないようにするにはどうするかということを考えている。たとえば各家庭で雨水タンクを設置するとか、水を通しやすい舗装をするとか。ただ、そうなると専門領域の話が増えてきてけっこうとっつきにくいやりとりがされることになる。それで、この「 ニシオギ空想計画 」に、ぜひ原点に帰った壮大な計画を出してほしいな、とお願いをしたのです。それで出てきたのがこの図。善福寺川流域を幅1キロくらいに渡って緑化してしまうという、過激なプランです。
ニシオギ・マザー・リバー
「善福寺池のかいぼり」「善福寺池の原風景」「崖線の樹林の再生」「緑地をつなげる」「千川上水のオープン化」「泳げる川」「水辺の散歩道」「江戸時代の薪炭林の再生」「パーク(駐車)アンドウォーク」「オギ原の復活」「アーバンキャンプ」
石井 これだとうちの事務所、なくなって緑地になっちゃうんだけど。……縄文の竪穴式住居ならOKかな?
亜矢 善福蛙メンバーの滝澤さんが編集した『武蔵野樹林』という雑誌と、同じく滝澤さんが連載していたソトコトの記事をまとめた『ハビタランドスケープ』という本があります。どんな風景の中でなにをして生きてきたか、というようなことが、水辺を軸に書かれていて、この本の最終章が善福寺川なんです。
奥秋 この図で面白いのは善福寺池の下池がないこと。下池というのは昭和17年に整備されて誕生しているので、原風景を取り戻すという観点から池がなくなっている。善福寺池周辺は長年「風致地区」になっていて、建物の高さや家の緑地率などの制限がいろいろあったわけなのですが、それを仕切る風致協会が数年前に解散しました。中心メンバーだった地主さんの立場が変化しているのがその理由なのですが、それでもまだまだ昔からの地主さんがたくさん住んでいる。
かいぼりの主な目的は外来種の駆除にあるんだけど、その中で一番重要なのは、鯉の駆除です。鯉は水質を悪くする原因なんです。でも、善福寺池の場合は、風致協会がよかれと思って鯉を放流をしてきた経緯があるんです。だからかいぼりへの道のりを慎重に探っているという段階です。井の頭池がかいぼりによって、すごくきれいになり、絶滅したと思われていたイノカシラフラスコモなども復活した。あれを見るとそろそろ善福寺池でもかいぼりを、という機運はあるんじゃないかな。
亜矢 ある地主さんにその話をしたら、かいぼりの前に鯉の一本釣り大会をしましょうと言ってました(笑)。
奥秋 アーバンキャンプのことも書いてあります。
石井 もはやこれは「アーバン」じゃない。これはただのキャンプ。大自然ですよ。
亜矢 カエルの会のメンバーは専門家も多いし知見もさることながら、ずっと継続しているというすごさがある。ここまで風景が変わってしまったら、もう昔のようには戻せないというふうに思ってしまいがちなんだけど、何十年かけてやってきたことは、何十年かけてもとに戻せるという考えで、いつも目からウロコです。
奥秋 なんらかのカタストロフが起こらない限り、こうはならないと思うのですが、こういうイメージを共有することが大切なのではないかと思います。未来を見ながら昔のことを知ることでもある。
石井 いきなり流水量が増えて地形が変わることだってありえますからね。
奥秋 善福蛙のメンバーからのもうひとつの出展もすごいですよ。
「水編みの里」の模型です。
東大まちづくり大学院大学の演習でつくった、2068年の善福寺地域を想定したランドスケープデザインです。光触媒を使って水を水素と酸素に分ける技術が確立しているという前提のもとに、水素ステーションからエネルギーを供給する乗り物が街をめぐっていて、乗用車は入ることができないサンクチュアリとなっています。家の数もすごく少なくなっている。善福寺池や川周辺には田んぼや木道がつくられていて、川の水量も多くなっている。
川中 何十年も先の話だから、自由ですよね。
奥秋 さりげなく外環道、外環ノ2が緑道として完成している。実はこの模型は「 ニシオギ空想計画 」を始める前にはすでに完成していたもので、お願いをして出してもらいました。
次はリチャードさんの出展作。リチャードさんは都道補助132号線の拡幅にあたって、当事者となっています。
道路拡張の理由として杉並区が、東京ガスからの緊急車両が安全に出られるようにするため、という説明をしていたので、それだったら東京ガス自体を幹線道路つまり青梅街道に移転すれば道路を広げる必要はないのでは?というところから出たアイデアです。空いた東京ガスの敷地につくるのがこの図。
シニアレジデンス・チャイルドケアセンター・ショップ・パーク・防災
ご存知のように東京都及び杉並区は都道132号線を拡張する計画を立てています。
西荻窪住民、個人商店の店主および従業員の多くはこの道路拡張のニュースを聞いて、ショックを受けるとともに反対しています。杉並区による道路拡張計画説明会では。拡張する理由として災害時の緊急車両の通行がスムーズに行くためということであり、もちろん東京ガスは災害時の拠点の一つになります。それを聞いた私の第一印象では、道路を拡張するのではなく、東京ガス自体が青梅街道のような広い道路に移転すべきではないかと思いました。
移転した後の東京ガスのビルは、例えば高齢者住宅や子どものための施設として利用し、ビルの周りの土地は近所の人たちが災害時に利用できる公園として活用するというのが私の考えです。水彩画スケッチを描きました。あなたはどう思いますか?
132号線上に住むリチャード・フレイビン
杉並区では区の施設であるあんさんぶる荻窪と国の施設である荻窪税務署の移転交換という前例があるから、それと同じようなことをここでやったらいかが、ということかもしれません。
リチャードさんはもう一つ書いてきていて、それが現在はカルディコーヒーファームになった駅前の喜久屋さんの絵。お店の前がカフェテラスになっている。
川中 これいいね〜
石井 パリの町並みっぽい
奥秋 こういう西荻もあり得た。という空想ですね。いいなあと思いました。
次の案は石井さんのものなので、本人に説明していただきましょう。
石井 これはまだ途中なんですよ。駅周辺を全部森にしてしまって、周辺を高密度していく。
ニシオギ:「空」創:計画
駅から100m を 広場に 3ha
その外100m を 商店街に 9ha
先史時代からの集落構造をモチーフに僕たちの街を空想し直しても面白いのではないかな。
真ん中に広場があって、周りに人が暮らしている。広場の中心はあちらの世界との通路をひらく。
電車に乗ってどこいこう。
駅から降りたら「原っぱ公園」位の「空」が見えたらいいんじゃない。
夕方になると、屋台が出てきて、芝生に寝転びビールを一杯。
平日昼間は園児がお散歩。
休日は憩いの場?
第三土曜日は朝市か。
地下には大宮前体育館みたいな、施設も良いかも。(劇場も欲しいね)
3 ヘクタールの広がりがあれば、商業地域は高層だって良いんじゃない?
上層階はタワマンか。駅徒歩3 分。その外は閑静な住宅街を残しましょう。
9 ヘクタールの高層ビル達。諸々引いて6 ヘクタール。
15 階建てだと90 ヘクタール。90 万㎡。100 ㎡が9 千世帯だ。
石井 動いてかないまちづくりというのはお金の問題で動かない。阿佐ケ谷の北口の場合も、寄せて上げて、余ったところでお金を作って、事業をつくっていく。それで人口密度が上がっていく。このままいくと西荻でもすでに、25坪の一軒家なんて、サラリーマンは買えない。子育ても考えられない。この案では住環境をまったく違ったかたちで創造できるような高さにしてしまおうと考えました。中心から3ヘクタールを森にして、9ヘクタールを超高層住居を含めた高密度エリアにする。新しい時代の街になるようなイメージで、もう少し練りたいです。
奥秋 AKIRAっぽくもある。
川中 11月が楽しみです。
奥秋 次は私のアイデアで「西荻トゥクトゥク特区計画」です。
西荻にはトゥクトゥクがよく似合う。
日本国内では営業できないトゥクトゥクだが、20XX年、西荻エリアが「トゥクトゥク特区」となり、営業運転が可能に。
個人所有でもさまざまな優遇措置が。
小さな車両なので、道路幅を広げる必要もなくなる。
乗りたい人が西荻を訪れるようになる。
水素エネルギーが動力源の最新トゥクトゥクでエコ。
最近の自動車は大きすぎます。そこで三輪のトゥクトゥクをタクシーにして、一般の人もトゥクトゥクに切り替えたらいろいろな優遇が受けられるようにすれば、道路を広げる必要性もうすくなる。たとえば駅前にトゥクトゥクの待機所を用意して、タイ人の熟練ドライバーも待機。乗るには金額交渉から。
亜矢 えー
奥秋 というのは冗談なのですが、トゥクトゥクというのは「オートバイ扱い」になるので、人を載せた営業車両として使うことができないのだそうです。そこで特区。トゥクトゥクタクシーを杉並観光の目玉に。トゥクトゥクが水素自動車という設定は、既出の「水編みの里」のアイデアを借用しています。タイと西荻の親和性もある。「高円寺は日本のインド」(©みうらじゅん)なら、西荻はタイ。
亜矢 ここ10年で電動アシスト自転車の普及はだいぶ進みました。とくに子連れでは必須。でも地方に行くと自転車よりも自動車になる。電動自転車というのは都会ならではのものなのかもしれない。それを思うとトゥクトゥクよりも、電動自転車が利用しやすい環境を整えるのがリアルなのかなと思いました。これだけ普及しているにもかかわらず、あのばかでかい電動自転車が引け目なく置けるような場所がまったく足りてない。
石井 あの大きさの自転車が置ける駐輪場もできてはいますけどねえ。
亜矢 でも街の中で気軽に止められない。あと、あの自転車の隣に駐輪した時、重くて動かせなくなる。
石井 ……止めちゃうけどね(笑)
奥秋 次に行きます。
20XX年、ニシオギの駅周辺は突如、中世時代の雰囲気に包まれた! それまで以上にごちゃごちゃと軒を連ねる飲食店は、「西荻幕府」と呼ばれ、ゆかいな住民が集ったという。御所の中心には「西荻公方」と呼ばれる将軍がいたとかいないとか。
西荻公方は西荻窪とのダジャレですね。たこ焼きたけちゃんが隠れキャラ的にいたりと楽しい絵です。こういうのが駅前にどーんとあるのはどうですか。
川中 めちゃめちゃ観光地ですね。脈絡がわからないところも含めて。テーマパーク的な感じ。
奥秋 中世・近世なら御鷹場だったわけですから、そういう方面で善福蛙の案と連動するのはありかも?
4 実現できるかもしれない空想計画
奥秋 では次行きましょう「すわれタウンニシオギ」。
「すわれタウンニシオギ」
西荻窪はまちあるきの楽しいまち。まちのあちらこちらににベンチや椅子が増えたら、もっと魅力的になるのではないでしょうか。
駅前での待ち合わせに、駐車場と家のすきまに、バス停の前、お店の前などに椅子を置く計画です。
そのままもう一つ、同じようなコンセプトの案を紹介します。
街のちょっとした“すき間”にテーブルとイスと緑がある。
そんな西荻がいいなと思います。
柳小路の昼市の簡易テーブル、改札前のカフェのイス、戎やよね田や夢飯の野外席、アイスクリームぼぼりのベンチ……。オープンな場所で人々がくつろいで、通りすがりに会話が生まれるのも西荻のいいところ。
街の区画や建物が大きく変わっても、ちょっとしたテーブルやイスを置ける“すき間”のある街であってほしいなと思います。
絵のなかの木は駅南口のカラタネオガタマですから、両案はイメージしている場所も一緒ということです。ほかの人からもイスのアイデアは出ているので、11月のVol.2の時になにかできないかなあと思っています。
亜矢 以前に西荻でやっていた「赤い椅子プロジェクト」も同様のアイデアですよね。赤く塗った椅子を街角に置いて憩いの場にするというプロジェクトです。
「ニシオギエキマエ テトリス大作戦」。
西荻の現状がperfect!とは思わない。
たとえば北口のバス。吉祥寺/上石神井行きのバスのすぐ前や後ろをみんながすり抜けてる。ガード下の荻窪行きは車道の真ん中に停車。カオス。
でもそれ、道路拡幅=すべてぶっ壊して解消しますか?
あの「テトリス」のように、みんながちょっとずつ譲りあってスペースを作れないかな。
という問題提起から、具体的に交番やお店を玉突きで動かしていくと、道路を広げなくても駅北口正面に横断歩道をつくることで整備できるのではというプランです。。今は横断歩道が西の交番寄りにつくられていますから。
石井 このプランだとパチンコ屋がなくなってしまうんだけど、こういう「悪い嗜み」みたいなものは少し残っていたほうがいいのかもしれない。
奥秋 あそこのパチンコ屋から知り合いのネパール人が出てきたりしますからね。みんなささやかに楽しんでる。
川中 実現性はあるんじゃないかな。
石井 トラストで土地を買えばいけるかもしれない。
バッテリー式消火器
奥秋 次はバッテリー式消火器。これを実際に動かしているところはみなさん見ましたか? 霧がぶわーっとでるものです。重曹を混合した消火剤で炭酸ガスを発生させて窒息消火できる。また、ミストで幕を作ることで使用者の身体を守ることもできる。
川中 駅南口の飲食店街では、火災が一番の問題。再開発を進めていきたい人のいちばんの動機は「防災」ですから、そこをソフト的に解決するために、もし火が出てもすぐ消せる体制づくりが必要で、それをサポートするのがこの消火器というわけですね。
奥秋 実際にどのくらいの消火能力があるのか、ためしてみたいよね。業務用の強力なブロワーが霧状にした水を噴霧するものだから、現状では構造的には酸素の供給もそれなりにされる仕様なので、バランスを整えられれば。
亜矢 ニシオギ空想計画というお題から、こういうものが出てくるところが西荻のおもしろさ。
奥秋 発明家の長谷川さんは、西荻で会社を経営してるんだけど、特殊ノズルの開発特許をたくさん持っていて、たとえば、少ない水量でなおかつ溶剤を使わずに汚れを落とすような特殊ノズルをつくっています。個人的にはこの消火器を「ニシオギ空想計画」で生産して、それで貯めたお金で南口の一角を購入してみんなで地権者になっちゃうのが理想。そうなるともう空想計画じゃなくって現実計画だよね、という空想です。
次は久我山に近いところにある、シェアキッチンでシェアハウスのokatteにしおぎのみなさんが寄せてくださったものです。複数の方の案が一枚のペーパーになっています。
東京産直野菜のお店かスタンド
三鷹や練馬、西東京の野菜についてよく聞くので、群馬の「産直マルシェ」みたいに東京の野菜が集まってるスタンドがあったら嬉しい。(魚・肉・みそしょうゆ・米・とうふ・パンもほしい)
ふらっとプレイス
シェアオフィスみたいなのでも会員制本読めるスペースみたいなのでも、なんでもいいんだけど、ふらっと寄ってちょっと本を読むとかひとしごとするとかできるところ。
西荻らしくゆるい感じの場所ができたらいいな。
映画館(試写室でもよい)
吉祥寺アップリンクも流行ってるみたいだし、映画観たいって層は比率でいうと西荻はけっこう多いんじゃないかなあ。下高井戸シネマくらいの規模のだとちょうどいいんじゃないかなー。
小商いの間借カフェ
okatteみたいに登録して間借りして飲食店経営できるところ。頻度低くてもよく、朝・昼・午後・夜というように時間が細切れになっていて、出店の負担が少ない。グループ登録可。原っぱ公園のイベントみたいにグループで出られたら嬉しい。
泊まれる公園
24時間、誰でも使えて無料で宿泊もできる(テント?)公園を街中に。トイレやシャワーやフードバンクもあり、利用した人には公園のメンテナンス等の作業をしてもらい、宿泊費代わりに。
常設フリマスペース(屋根あり)
売りたいもの、譲りたいもののある人が、いつでも売りに来られる。常設のフリーマーケットスペース。コーヒー・お茶は飲み放題。ベンチでおしゃべり放題。
ピンクの象廟
佐渡に渡った二代目ピンクの象の方角に向かって、ピンクの象を遥拝できる廟。占い、見世物小屋、屋台など、あやしいもの満載で! ガネーシャをまつってカレー祭りもしたい!
店と店とをつなぐ情報のようなもの
昔、西荻ゐきってありましたよね。食べログとかFBなどのSNSとかでは拾いきれない、地元の実感満載のサイトで好きだったんだけど、そういうのあったらいいなあ。いっそネットではなくてリアルに店同士で張り紙でネットワークつくるとかでもおもしろいのかもしれない。
今すぐやってもいい私の「ニシオギ空想計画」
ご自由にお持ちくださいがたくさんあると楽しい
八百屋・肉屋・魚屋・豆腐屋とか、普段の食材が買えると嬉しい。
空き地は畑にしてOK
レンタサイクルあると嬉しい
象的なものは、いると安定感
新刊書店たくさんある
街中にふらっと座れる野良イスがたくさんある
敷地の前に本棚置いて自由に貸し借り
毎日夜市したい 夕飯作れなくても楽しい
※「私のユートピアは誰かのディストピア」だと思いながら日々生活しているのですが、自分勝手に自分の住みたい街をかいてみました。
石井 泊まれる公園はどういう時に泊まれるのかな、終電がなくなったときとか?
奥秋 泊まりたくて泊まるんじゃないかな、アーバンキャンプ。「ピンクの象廟」であやしいものが満載ってのもおもしろいけど、それをつくるんだったら佐渡まで巡礼の旅に行ってほしい(笑)。
それから、西荻の店は結構交流がありますね。お店で他のお店を紹介されることはよくある。飲み歩きイベントの「西荻はしご酒」もそういうところから出てきているのかな。あと、「私のユートピアは誰かのディストピア」、そういうことってありますね。空想計画も誰かを傷つけることもあるかもしれない。
川中 むずかしいですよね。
奥秋 次はウェブサイト「西荻町学」さんから。空想計画のための資料、という意味合いもある出展です。
西荻窪:多文化コミュニティへ
西荻の柳小路:夜の多文化コミュニティー
西荻の「こころ」となるのは、個人経営の店と、コミュニティ空間を作り上げる小さく華やかな商業小路だ。これらの空間は、しばしば、「昭和東京」を連想させるものと思われがちだが、実のところ「令和東京」の多文化空間へとなりつつある。その中でも最も知られているのは柳小路だろう。この多文化空間を作り上げた経営者たちは、日本人と外国からの移住者の双方なのである。よき昭和の東京であり続け、 新しい令和の東京を創る。これが未来の西荻だろう。
4軒のお店が紹介されています。ハンサム食堂 ギリシヤ小町三丁目 ミルチ バーボイ。それぞれのお店の記事が
「西荻町学」というサイトに上がってますので読んでみてください。「西荻町学」は、「西荻窪」に焦点を当てた民族学的研究プロジェクトで、都市の食文化、料理人の仕事、コミュニティー参加を研究しています。主には店主へのインタビューなのですが、これがディープで面白い! 上智大学社会学教授ファーラー・ジェームスさんと編集者木村史子さんが運営しています。
奥秋 次は「西荻Pocket Park Street」。
西荻Pocket Park Street
いま、大きな変化が起きようとしている街並み「補助132号線、通称:北銀座通り」。
道路拡幅をする予定で、西荻窪の文化・コミュニティ・味わいが、今どきのただただ綺麗な街並みへと変わろうとしている。
確かに、現状の道路幅は車が通るにも人・自転車が通るにも少しタイトなのも現実である。
そこで提案したいのは、ポケットパーク方式での道路拡幅方式。
建物の老朽化や世代交代で建て替えをする場合には設定した壁面後退線内で建て替えを行い、ところどころに小さな公園のような空間「ポケットパーク」をつくりだす。その空間は、基本は緑化を推奨するが、オープンテラス等としても使用可。西荻ならではの、ゆっくりとした時間の流れがそこで生まれ、次の世代にも継承されていく。
本人がいるので説明をお願いします。
鈴木 区のプラン通り道路拡張工事が進んでいくと、けっこう殺風景な感じになってくると思うんです。だからただただセットバックで後退線に沿って建て直すのでなく、できた空き地に椅子をおいたりとか、テラス席を造ったりとか、そこに商品を置いたりとかしたら、西荻らしくて素敵なのではないでしょうかという提案です。バスや運送トラックの退避場所とか、公園だけでなくそういうことにも使えるんじゃないか。セットバックした時の残地の使い方として。
奥秋 リアル感があります。図書館で借りてきた平成二年の「JR西荻窪駅周辺地区整備構想案調査報告書」という資料の中に、一つのモデル整備案として、まさにポケットパークをつくる案が載っていました。それにあたって、セットバックすると店舗の面積が少なくなるので、それを解消するために共同化して高さを上げていくと、道が広げられるのでは、という案でした。みんなの合意を取るのはすごく大変そうですが。
5 道路と店とのあいだに
奥秋 次は「夕空にカンパイ!」
夕空にカンパイ!
広場やテラスにもお店がはみ出す。
一見複雑で楽しそうに見えるけれど、メインストリートが直感的にわかる。
気候の良い時は屋外で過ごし、夏や冬はビニールカーテンを出してしまおう。
店先のスペースは庭として使ってもいいし、テラス席として使ってもいいし、野菜を育てたっていい。
店先でとれた野菜を使った料理もお店で食べられるかも⁉
楽しさが外に滲み出て立ち並ぶ、西荻の良さが外に出てくる!
空間にメリハリをつけ整理する
小さな商店を探索する楽しみを残す
空が見えるオープンな空間にする
ほか、吹き出しでいろいろ細かい提案もあります。これは完全に「再開発」なのですが、特徴としては、低層であるということ。
川中 再開発を前提に、どういうプランがありうるかというものですね。
石井 喜久屋のテラスもそうだけど、道にはみ出していく、道路と店舗がグラデーションになっていくというのが全体のポイントなんじゃないかな。椅子を置くのもそうだし、ポケットパークも。曖昧な領域をつくること。看板を立てて文句を言われるようなこともあります。もし、再開発されて建物がなくなったとしても、道と店のあいだの関係性を残していく、ということを考えている案ですね。
奥秋 これにも「街中でアウトドア」というのも書いてあります
石井 みんな、キャンプがしたいんだね。
奥秋 次です。「西荻らしくて味のある飲屋街はそのままで、ちょびっと緑化するのはどうでしょう」
西荻らしくて味のある飲屋街はそのままで、ちょびっと緑化するのはどうでしょう
「ハンサム食堂」さんのあたりは緑がありました。あのような感じで……
他のお店もできる範囲で緑化すれば緑のパワーでいっそう魅力的になるかも
西荻の街がテレビや雑誌などで紹介される時、しばしば登場するのが柳小路などの昔ながらの風情が残る飲食店街です。味わい深い通りには西荻の物語があります。再開発などで大切な物語を無くしてしまうことがありませんように。
石井 再開発には緑化率というのがつきものなんだけど、その時にみどりの質は問われない。どのような緑か。
川中 緑地自体が延焼遮断帯にもなる。アーバンデザインの一つの手法で、余っている土地をつなげてそこを延焼遮断帯にするという考え方もある。緑があると燃えにくくなる。一本くらいならすぐ燃えちゃうけど、それなりの密度があれば。
奥秋 街路樹でも延焼遮断帯になるんですか。
川中 もうちょっと「もさっ」としてないと無理かな。
石井 都市災害の火災に対応する場合はもっと幅がないと。
奥秋 この案はそういう観点ではないですが
石井 癒やしとしての緑ですね。もちろんそういう視点は重要と思います。
奥秋 街の「物語」ということに触れていますが、次に紹介する空想計画もそういうことなのかな。踊りの映像記録という異例の応募作です。
日常への旅〜西荻窪編〜
happy unbirthday + ソらと晴れ女 + Takeshi Lua
2019.5.19 西荻窪のある路地裏
街には土地に息づく地霊、魂たちが蠢く。
私たちは目に見えるものも見えないものも、いろんなものと共存しています。
ですが、画一的な再開発により地霊たちが居る場所が日に日に減ってきています。
××××年、そんな世情に反し、西荻には今も地霊たちが密やかに遊ぶ場所が残されています。
〜〜〜
川中 これは西荻在住の舞踏家からの空想計画で、失われていく「街の記憶」が心を持ったとして、その心を代弁するという趣旨のパフォーマンス記録です。
奥秋 「地霊」を呼び起こしていく。Youtubeに動画があがってます。この場所は数週間前に人気のお店が閉店したばかりで、全然人が通らなくなっているのです。これは最初、柳小路で撮影をしようとしていたのですがそれができず、急遽別の場所に変更したのです。つまり柳小路の地霊が、「ちょっと待ってよ、俺死んでないよ」と。
川中 ああ、そういう解釈。カメラマンはロケハンが無駄になって大変そうでしたけどね。
亜矢 そんなことは微塵も感じさせない映像の仕上がりでした。
奥秋 次は「西荻駅前中国」。
西荻駅前中国
中国の公園のように、健康器具や卓球台、将棋台があり、住民はもちろん仕事帰りや飲みに来た人が飛び入りで参加できる。「人生100年時代」はもっと普段から気軽に大人が外で身体を動かしたり遊んだりできる場所があっていいと思う。
昼間から大人が楽しげに遊んでいる街
川中 これ最高
亜矢 公共空間をいかに使うか。
石井 使わないとね。広場はあいてるだけじゃおもしろくないもんね。
鈴木 駅を降りたら人がぶら下がってたりするんだ。衝撃。
石井 腰が痛いからぶらさがりたいよ。
奥秋 トゥクトゥクも置いてほしい。
石井 なるほど、最終的には全部の案をごちゃまぜにすればいいんだ。
川中 カオスだな。
6 空想を共有する
奥秋 次はまた私の案。「西荻タワー計画」
西荻タワー計画
完全消火都市宣言! 駅周辺半径100メートルほどのエリアでもし火災が発生した時に、放水装置として活躍するのが、タワーのてっぺんに置かれた四代目ピンクの象。
ノズルは西荻の発明家、ガリュー長谷川さんが設計。
象の鼻ノズルから放水。いざという時の消火装置としてだけでなく、1日1回、定期的に放水する。夏場には冷却効果も。
タワー頂上に置かれたピンクの象が一日一回、定期的に放水、万が一の火災のときにはそこから消火ができるというとっても現実的なプランです。これは、立石の再開発の話のなかで、再開発地域に隣接したビルに放水銃を設置するという案が実際に検討された、というようなのをネット記事で見たのがきっかけで思いつきました。
川中 その絵の高さはヤバイ。ニシオギ的にはいくらなんでも高すぎるんじゃないですか(笑)。
西澤 水はどこから持ってくるんですか。
奥秋 水は吸い上げるんです。あの辺は松庵川も近いし、ちょっと掘れば水脈があるのでは。
次は「手がかかるまち ニシオギセルフビルド特区の提案」。
手がかかるまち ニシオギセルフビルド特区の提案
1.特区内に限り、セルフビルドであれば何を建ててもOK!
2.セルフビルド率(通称:セルフビル度)に応じて補助がもらえます!
左官だけ→セルフビル度5%
躯体はおまかせ、内外装はセルフ→セルフビル度60%
全部セルフビルド→セルフビル度100%
■まちへの愛着
まちに愛着をもつということを考えたとき、おいしいパン屋を知っている、行きつけの居酒屋がある、好きな人が住んでいる、そんな様々なきっかけで、そのまちへの興味が沸き、それがいつしかまちへの愛着となってくると思います。
ただ、私はもっと直接的に、自分の手で、まち自体をつくることができれば、それがまちへの愛着につながるのではと考えました。
■手がかかること
セルフビルドでつくったまちは統一の、整理された価値観を持ちません。てんでバラバラです。大きな建物なら工事期間も長くなるし、10年たっても終わらないかもしれません。当然雨が漏るでしょう。すきま風も吹くでしょう。それでも、文句を言いながら、手をかけながら住み続ける。そんなまちを想像しました。
石井 いいですね。先週みんなで善福寺のセルフビルド建築(石山修武設計)を見学しました。あそこはセルフビル度60%。
奥秋 あの家で60%。ということは100%のハードルはかなり高い。
石井 手をかけ愛着を持っていくことで喜びを持って住むことができる、というメッセージがいいです。
奥秋 こういうところは実はすでに西荻にもあるんじゃないでしょうか。
石井 柳小路一帯はセルフビル度45%くらいはいってるでしょ。
鈴木 セルフビルドといえば、高知の沢田マンションが有名です。
石井 竪穴式住居は100%ですよ(笑)。
奥秋 次行きます。「火の用心」。
ニシオギに住んで早8年。
初めて南口の柳小路・サカエ通りエリアをうろうろした時の「ワクワク感」を忘れられない。
そして8年経った今でも変わらずこのエリアをよく飲み歩く。
最近は20代の若い世代が私たち(40代)と同じように「ワクワク感」を求め、ニシオギの独特な世界観を、ディープな飲み屋街を楽しんでいるあろう姿をよく見かける。
そんなニシオギの一部ともなっている南口のディープな飲み屋街を刷新してしまうということ。
たとえば近年の駅前開発でよくみる商業住宅ビルのような真新しい高い建物になったとしたら、他の街と大して変わらなくなり、昔より培ってきた魅力というものが失われてしまい、街やエリアの個性がなくなってしまうのではなかろうか。
既存の世界観をしっかり残しつつ、バラックな建物による「防災」「建築」的な危うさをどう解決していくか…
提案
長期的なことを考え、不燃の木構造の建物に建て替える。
ただ既存の飲食店が営業しながら、工事を進めることができないか等色々と考えることが重要。
建築工事中は、工事に必要な建物を覆うように組まれる足場を単管足場or竹組み足場に提灯を吊ったりして。
工事期間中(長期間)であることを逆手にとって、よりディープな世界観を演出したい。
そして防災の注意喚起と風物詩として「火の用心」パトロールを地域やこのエリアが一体となって行う。
拍子木の音をうるさい!と感じる人も中にはいると思うので色々な音を試したりするアソビがあってもおもしろそう。
奥秋 この案はセルフビルドにちょっと通じるというか、超長期で開発をし続けるという計画。竹で組んだ足場というのは日本では見たことがないんですが
石井 法律的にNGです。香港あたりでは竹と番線だけでつくる。上手い人がつくらないとずるずる落ちちゃうんです。あと雨の日にはすべるらしい。
斎藤(ここで遅れて登場) あのしなりがいいって言いますよ。
川中 今の案と、消火器の案のふたつが、いちばん現実に即してるなのかなと思っています。ひとまず再開発の話は置いておいて。京都でもそうなんですけど、どうやって古い町並みを残していくかはソフト面でがんばることのほうが多い。たとえば火の用心であるとか、消火器であるとか。飲み屋街を今の形のままで残すのだったら、それが一つの答えなのかなと思います。
奥秋 不燃の木構造に建て替えるというのはどのような感じになりますか。
川中 もちろんやろうと思えばできるし、いい感じにもできると思う。でもあの雰囲気を残すということだったら、それはどうしてもイミテーションっぽい感じになってしまう。やるんだったらきれいにやっちゃっていいと思うし、不燃の木造であの風情を出せないと思う。
奥秋 工事期間中を逆手にとってディープな世界観を演出、というのも面白いなと思いました。
亜矢 工事現場で飲むということでしょ。それは楽しい。
奥秋 北銀座通りも、今後超長期に渡って道路拡張工事をしていくわけだから、それを逆手にAKIRA的な雰囲気で、たとえば空き地となっている事業用地に鉄パイプを積み上げたり、巨大重機を置いたり、危ない雰囲気を演出して……そこに簡易飲み屋をつくると。建築重機や工事現場を愛でるマニアたちが集う場所として。
石井 演出だから本当は危険じゃないんだ
斎藤 それだったら分断がないですね。
川中 期間限定で場所を安く貸し出せたらおもしろいですね。
石井 できあがるまでは、ガードレールみたいな柵で立ち入れないようにするわけでしょう。雰囲気が悪いよね。
川中 盆踊りもOK
亜矢 土管でアーバンキャンプとか。
川中 虫食い状態を楽しむと。
奥秋 次は「にしおぎ夜市」。
西荻といえば様々な「市」。
あさ市、昼市、チャサンポーなどなど地域密着型の活気あるイベントがもりだくさん!
更に盛り上げるべく『にしおぎ夜市』を提案します。香港や台湾などアジア各国の夜市を参考に、屋台やバザー、ダンス、Musicなどなど……夕方から夜(あまり遅すぎない)にかけて、特に夏の間、毎日のように開催。もちろん「にしおぎ夜市」の提灯も鮮やかな赤で作り、飾ります。
いかがでしょう?
こちらは秋田ばる七尾内、「スナック慕情」のアリサママ作。夜のイベント開催の提案です。絵ではやや「魑魅魍魎」的な人たちがこけしなどをあやつり、暗い町を楽しんでいます。
石井 もうすでにやってるじゃん、西荻夜市的なことは毎日。
奥秋 柳小路界隈だけじゃなくって、外にはみ出してきてほしい。タイミングを合わせて、東女生の提灯計画みたいに、提灯を提げるとかね。
川中 それで提灯の列を東京女子大までつないで、それで女子大も夜オープンにして、本館の壁にプロジェクションマッピング……いろいろつながってきた!
奥秋 最後は西荻のキャンドル屋さんから。
「空想西荻南口未来計画 何も引かずにどんどん足して拡大するカオス」「カオティック西荻 Re:Birth」です。
面白そうな人が東京だけじゃなくて、世界中から集まる街になったら面白いなと。やんちゃな若者から、子育てファミリー、高齢者まで駅に集まるのもいいじゃないですか。そもそも西荻ではたらく人が増えるといいなと思います。
道路拡張に合わせて、全部のお店がテナントに入れる複合施設を建設建築設計は石上純也さんにお願いしてセンスよくぶち飛んだ感じに。
でかい建築のわりに、案外街に馴染む感じのデザインでお願いします。クリエイターや外国人などが集まるエネルギーあふれる場に仕立て、西荻から世界へ向けて発信しまくる。
災害時は3000人が数日滞在できるスペースと備蓄倉庫も備えた多目的ホールは、普段は西荻民が安く借りられる。ライブOK、パーティOK、基本だいたいOK。
屋上は公園と家庭農園。
車で送り迎えのしやすいロータリー。
待ち合わせのしやすいシンボルツリーには、「であイス」という謎に出会いが生まれるベンチが。
川中 盛り込んできたね〜
石井 これ、全部地下化して、3ヘクタールの森をつくるのはどう?
奥秋 なるほど、さっきの案と合わせていくんですね。まだ続きます。
西荻の顔、柳小路界隈をこのままずっと保存する為に、トラス屋根で空高く覆い、超強力な消火設備を装備。屋根にはソーラーパネルを設置して、電気を売って、街やイベントや企画などに使えるお金をコツコツ作る。
石井 屋根で覆うんだ。閉じ込めるのね。
奥秋 あとまだ半分あります。
屋上芝生庭園
憩いの場。ピンクの象の乗り物もある。高機能運動遊具を設置して西荻民の健康増進! ビアガーデン、盆踊りなどのイベント利用もできる。
屋根の部分はソーラーパネルで一部自家発電。家庭菜園があって、はちみつ収集もやる。
2F
クリエイター向けシェアアトリエ。多種多様なクリエイターの化学反応を生む。アートギャラリーも併設。COワーキングスペース(WE WORKがいいな……)次世代を担う若者を西荻から大量に生み出す。
DIY工房は日曜大工に使える。3Dプリンターなどの最新設備も揃っているので他所からも人が来訪。
外国人向け駅直結ホステルを設置し、外国人と西荻民との交流の場も育てる。
1F
元来、その土地にあった全てのお店が入れるテナントのフロア。入口にはベンチ付きのシンボルツリー。イルミネーションは僕やりたいなぁ。
座ったら隣の人に一言挨拶をしないといけないベンチ。通称「であイス」。
雨の日の送り迎えも安心の、自家用車専用のロータリー。
西荻観光案内所を設置。観光都市としての西荻の魅力を発信。
B1F
多目的ホール
西荻民が自由に借りられる(安い)。ライブやカラオケ大会、パーティ、展示会、会議などもできる。
災害時は帰宅困難者3,000人が3日間寝泊まり可能な広さ。備蓄倉庫は杉並区最大級の備蓄量で、レトルトカレーは人気店製。非常用電源は、屋上のソーラーパネルで常に電力を貯めているので安心。
川中 これ、妄想計画としては教科書のような案ですね。すばらしい。妄想の暴走。
亜矢 ここまであれこれ妄想してると、なにかが実現するかもしれない。そんな感じで西荻ラバーズフェスの実現もあったわけだし。言い続けたらけっこう実現するかもしれない。
石田 それはみんなで止めましょうね(笑) 本当にやりそうだから。
奥秋 災害時に3000人収容というのは、意味のある数字のはずです。災害時の帰宅困難者をどう収容するかというのがまちの課題になっていて、それの目安の数字なんじゃないかな。
これでVol.1応募作すべて紹介しましたがいかがですか。つながりが見えてきますね。
川中 「すわれタウン」と「野良イス」とかね。
石井 ビジュアルで系統に分けたものをつくってもいいのかもしれません。
奥秋 第二弾は11月、トロールの森に合わせて「ニシオギ空想計画Vol.2」です。さらに追加募集もして、カオス感を増していきたいと思ってます。ひきつづきどうぞよろしくお願いしますね。
(2019年7月・信愛書店にて収録)
[…] 地域コミュニティ通貨「ネコノテ」を使って少しだけ広くしてみよう、という試みが「 西荻ねこの手互助会 」です。 昨年からの「ニシオギ空想計画」にもこんな絵が寄せられました。 […]