(前の続きから)翌朝は快晴。台風一過です。維新派公演はやむなく中止となってしまったのですが、せめて会場だけでも一目見ようと、タクシーをつかまえて行きました。タクシーの運ちゃんは公演中止の件を聞いて、「これがほんとの『おとといきやがれ』ってやつやなw」とか言うのでキレそうになりましたが(笑)、川のほとりにある会場に着いて、そこに吹くゆるりとおだやかな風でほっとした気持ちになりました。運ちゃんもひと休み、空を見上げて気持ちよさそうにたばこをふかしていました。
たまたま入り口に現れた人(たぶん出演者)に、声をかけましたところ、劇場を見せてもらえることになりました。演出内容もちょこっとだけ教えてもらいながら。脳内妄想で再現される維新派の舞台は、やはり巨大スケールでした。
大阪駅前でうどんを食べ、電車に乗ります。いや汽車でした。鳥取方面に行く「スーパーはくと」はディーゼル車。普通の電車より激しい振動にゆられ、ようやくついた鳥取駅は、ひさびさの有人改札! うれしくなりました。
駅前に観光案内所を発見! まずは「視察」であります。おねえさんに「レトロな喫茶店に行きたいのですが」とのお題で質問をしましたところ、「ああ、それならベニ屋でしょう」と即答。信頼できる情報を得てベニ屋に直行です。歩いてベニ屋まで行く途中、実は「レトロ喫茶店」が何軒かあったのですが、なぜそっちじゃなくあえてベニ屋なのか…。行ってなんとなくその理由がわかりました。
ベニ屋はレトロというよりも、アットホームな感じの喫茶店で、学生の憩いの場、という感じのお店です。名物は「インド氷」という、ココアシロップがけのかき氷なのですが、シーズン的にかき氷はちょっともう遅い。もう一つの名物、カレーを注文しました。
こちら驚きの美味! ちょっと赤ワインかなにかが入ってるのかしら、フルーティな味もありつつ、しっかり欧風で、西荻には多くないタイプです。きっと駅前案内所のお姉さん、学生の時分に「ベニ屋」に通ってたんじゃないかなあ。自分のお気に入りの店を案内してくださったんだと思います。
そのあとはレンタカーを借りました。まずはおもちゃと童謡の博物館「わらべ館」へ。充実の展示内容です。ゆるそうな名前の雰囲気にすっかりだまされました。
鳥取は初上陸でしたので、なにはなくとも行かねば、と鳥取砂丘に向かいました。私にとっては写真家・植田正治の聖地巡礼です。
台風の名残のやや重い空。
そこからずっと海沿いの山陰道を西へ。とっても走りやすい道。海からの風は強く、白兎海岸沿いの道は砂が溜まっていました。真新しい高速道路をゆくうちにとっぷり暗くなり、やがて大山町上市の古民家「まぶや」に到着。西荻案内所メンバーのチャンキー松本さんといぬんこさんが、アーティスト・イン・レジデンスで50日間の滞在アニメ制作をしている場所です。ただこの日はお二人とも東北巡業の帰路。台風で戻りが遅れていたのです。
到着したら「まぶや」のスタッフさんに大歓迎され、ほっと一息。目的とする場所に誰かが待っているというのは、うれしいものですね。
「ごはんはどうしましょうか」。まぶやスタッフ「ゆきねえ」のオススメは焼肉。こういう話は乗るに限ります。
というわけで着いたのは車で数分のところにある一軒家。のれんも何もない普通の家。煌々と灯る黄色のパトランプが営業中の合図とのこと。一見さんにはきわめてハードルの高い焼肉屋さんです。富士吉田のうどん屋よりハードル高いと思います。それだけでもうすでに名店の予感。出てくるのはぶ厚い肉! おいしくいただきました。そして〆には鳥取の牛骨ラーメン! 牛骨ラーメンで思い出したのは、「醍醐」というラーメン屋さんの濁りのあるスープですが、鳥取の牛骨ラーメンはすっきりクリアなスープ。これまたほっと一息しました。Lサイズのコーラを頼むと2Lペットボトルが出てくるなど、スケール感のおかしなところも最高です。
そしてその日はまぶやの2Fにて就寝。夜についたので周囲の状況がよくわからないまま、この日はすとんと寝てしまいました。移動というのは気づかぬうちにつかれているものです。すてきな中庭をちゃんと観察できたのは翌朝のことでした。(つづく)
[…] 途中で止まってしまっていた10月の滋賀・大阪・鳥取の旅日記の続きです。前回分はこちら。 […]
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