ニシオギ空想計画Vol.1報告 @一欅庵

西荻案内所は、6月の西荻茶散歩では毎年、松庵の登録文化財建築「一欅庵」からお声をかけていただき展示企画をしています。2017年は「西荻のメディアと場」というインタビュー展示、2018年は「ピンクの象が佐渡に来た」展で、佐渡での紙はがし報告をしました。2019年は、ニシオギ空想計画実行委員会として「ニシオギ空想計画Vol.1」を開催しました。

ニシオギ空想計画Vol.1報告

ニシオギ空想計画のきっかけ

まったなしの道路拡張に再開発の噂などなど、いろいろゆれ動いている今年の西荻ですが、変化のきざしに気づいていない、または気づきながらも「まだまだ先のこと」と思いこんでいる方も多いようです。ぜんぜん先のことではありません。道路拡張はこのまま話が進むと来年には動き出すのですが、まだまだ知られていないのが実情。このまま事業認可が降りれば、自分の土地で営業をしているお店は、軒なみ退去・取り壊しとなり、やがては高層マンションなどへの建て替えが進んでいくでしょう。また店子として営業をしている店は、大家さんの意向次第で「退去」を迫られます。同じ場所に同じような建物が、変わらぬ家賃で建つわけではありません。わざわざ元の場所に戻るお店がはたしてあるでしょうか。北銀座通りには西荻の魅力を支えるような人気店が多数あるのですが、それらが軒並み移転・閉店する可能性がある。商店会の組織がなくなり街灯が消えてしまう可能性もある。杉並区のHPに掲載されているPDFマップ(←直リンク注意。拡大するとめっちゃよく見えます。ほんの少しだけかかってる建物も、例外なくその部分だけ接収されるのです)を見るだけでも、ざざっと数えるだけで以下のお店は道路拡張計画の計画ラインにかかっています。

ヨロコビ、cotito、ギャラリーブリキ星、遊空間がざびぃ、ギャラリーSind、クリーニング栄光、STORE、LIVING、コビレジ食堂、美容室若草、アルジャンセル花桂、博華、サジロクローブ、URESICA、数寄和、SUTEKI、fuet、汐彩、美容室Ash、Rokurei、エイミーズ・ベイクショップ、ギャラリー鈴、リサイクルちゃちゃ、エルボンヴィーノ、いけもと、ruche、スター理容室、千代野、カラキヤ、フクシマヤ、喫茶ひまわり、ギャラリー伊万里、リンダガレージ、シタル、ニシジマ、ふるや皮膚科、ラズベリー、ワイン食堂たかはし、一本堂、ジェット、喜田屋、銀八、とらや、もぐもぐ、坂本屋、NEWS、ココイチ、八百泰、心亭、パンの田島、アカダマパチンコ、パチンコゴードン、深夜美容室TAMA、富士そば、星の浜食堂、オレンジボード、カフェルーラル、TSUTAYA、日高屋、阿波尾、新茶NEWTEA、木村家、西武信用金庫……ほか。

南口の再開発については、つい先日には具体的な図が一瞬ネット上に上げられ(すでに削除されています)、これにはかなりのどよめきがありました。その絵が既視感のある再開発案だったものだから、私もムムムと思った次第。あとから調べたところでは、この絵は該当地域の地権者たちによってつくられた「まちづくり団体」が作成したもので(正確には、まちづくり団体と協力関係にある業者さんということになりますが)、ひとつの可能性としてまず提示してみたもので、事業として決定したわけではもちろんないし、ひとつの絵をまず提示したところから今後、地権者内で意見交換を重ねていく、という段取りになっていたとのこと。案が先にネットに漏れてしまい、それが既成事実かのように話がひとり歩きしてしまって困惑しているようでした。複数いる地権者にもさまざまな意見があり、それをとりまとめていくというのは実際のところ、まだまだ時間がかかりそう、という印象です。何年後のことかわかりませんが、道路拡張の工事が進んで南口の幅20メートル化が始まる頃には、計画を具体化しておく必要があると考えているのでしょう。
一時ネットでは、杉並区が南口再開発の主体であるという話が出まわりましたが、現時点では地権者たちのグループによる、民間の計画案なのです。個人の財産のことなので、道路拡張のような公共事業とは性格が違います。とはいえ、駅前が公共性をもつ「街の顔」でもあり、それがどのようになるのか、というのは気になるところ。店を出している店子(地権者ではない)が、すんなり納得するとも思えません。

それまで、地権者たちによる話し合いでかたまった計画案が出てくるのをただ待つのでよいのだろうか。地権者が具体的に計画を決めた段階では、外野がドヤコヤ言ったところでもう遅い。地権者にしてみれば、自分の財産の方途に関して他人に口出しされたくない、ということになるでしょう。
そこで、まだ実際にはなにも決まっていない今ならば、先回りして、西荻に思い入れのある人たち各人が、問題点や希望を入れ込んだ「開発プラン」を勝手に練って提示することができるのではないか、と考えました。これが「ニシオギ空想計画」です。南口や北銀座通りに限らず、西荻の未来に思いを馳せた「空想計画」を各人が提出して、それを互いに見せあいながら、西荻の現在を確認していく作業をまずしていき、実際に事業を進めていく人たちに、「空想計画」を提案していくことで、やがては事業者でない人たちもこの「まちづくり」に参画できるきっかけが生まれればいいな、と思っています。

メンバーによびかけ

というわけで、壮大なのか冗談なのかわからないこの計画が始まったのですが、こんなこと、一人や二人でやったってダメだわなと思って、2017年11月に実施した「続・西荻案内所」の中の企画「西荻暮らし案内所」のメンバーだったポール川中彰平さん、斎藤慧さん、石井祐樹さんたちに声かけをしました。西荻在住の建築家たちです。ポール川中彰平さんは西荻案内音頭の作曲などミュージシャンとしても活躍中。斎藤さんは建築設計事務所をやりながら一欅庵で落語会「古典廻し」を主宰。最近西荻南にできた「まめなとうふ店」の店舗設計などもしています。石井さんが所属する善福寺の建築事務所「風工房」は、ギャラリー壽庵、茶舗あすか、美容室rucheなどを手がけています。

ポール川中さんはさらに、首都大学東京の研究員・國重安沙さんはじめとする建築/まちづくり/都市計画の研究者など、強力なメンバーを集めてきました。

よなよな柳小路某所2Fに集まりミーティング。それで公募企画の概要と、300分の1西荻窪駅周辺模型をつくることと、企画タイトル「ニシオギ空想計画」が決定し、本企画はこのメンバーによる「ニシオギ空想計画実行委員会」が主催することになりました。

もしゴリゴリの再開発案が来ても、それはそれで歓迎、ただし、会としては、「南口の飲食店街はそのままにしたほうがいいのでは」という考えがあることを、募集概要の文面に入れ込むことにしました。突飛なもの、実現不可能なものもOK、お子さんからの投稿は大歓迎、都市計画というようなスケールでなく、ミクロな計画でもOK、ただし暴力的/差別的なものはNG、などルールを決め、チラシをつくって公募開始しました。

ニシオギ空想計画Vol.1報告

西荻の「まちづくり方針」など

その間、関係者への聞きとり調査を開始。補助132号線の道路拡張に関わる地権者によるグループ「西荻窪の道路拡張を考える会」のほか、南口の地権者の方とプランナーさんや、杉並区都市整備部を訪ねました。都市整備部は道路拡張を管轄する土木計画課のほか、地域まちづくりを担当する市街地整備課などがある部署です。市街地整備課の西荻の担当者にお話を聞きました。

市街地整備課ではこれまで、西荻窪駅から500メートルの範囲の住人を対象にした「西荻まちづくりワークショップ(まちづくり懇談会)」や「まちづくりアンケート」などを実施していて、西荻窪の声を集めてきました。その蓄積や分析をどのように活用していくのかについて聞くのがひとつと、もうひとつは南口の再開発案についてどのくらい把握しているのか、ということ。
アンケートやワークショップの報告を見ると(ここにPDFがあります)、変化を望む人はさほど多くない印象なのですが、この報告を道路拡張を担当する土木計画課へ伝えはするものの、土木計画課が事業の進行に随時フィードバックしていくというような性質のものではないようです。そもそもアンケートやワークショップの目的は、西荻の「まちづくり方針」を策定するためのものだ、と教えてもらいました。阿佐ケ谷や荻窪にはすでに「まちづくり方針」があって冊子にもなっています。取りまとめられた内容が今後の地域振興の指針となるのですが、西荻の「まちづくり方針」は令和3年の策定を目標に目下製作中です。西荻地域では阿佐ケ谷などと違って、まちづくりの中心となるようなまとまった土地(種地)がないことから、行政が主導できず、支援・サポートが行政の関わり方になっていくのだとのこと。その際、けっきょく地権者がどう考えるかが重要になるのです。

また、南口の再開発案については、「まったく知らなかった」「抗議の電話がじゃんじゃんかかってきて困惑している」ということでした。

まちづくり団体助成

まちづくり団体に助成金を出す杉並区の制度があって、南口のまちづくり団体はそれを活用しています。この助成金は都市整備部管理課が担当しています。助成の金額はビギナーコースで3万円、ステップコースで7万円というので、話し合いの会場費程度のものです。助成を受けるまちづくり団体は活動報告をする必要があり、それは公開されています。活動報告は随時ではなく年に1度だし、昨年はそもそもまちづくり団体になっていなかったようなので、杉並区が知らなかったのも当然といえるでしょう。上記助成とは別に、杉並区がまちづくりコンサルタントを派遣する制度もあります。

南口のまちづくり団体にもそれで再開発プランナー(実際に建てる人ではなく、進行係のようなポジションの人であると考えてください)の人が派遣されて入っています。その人にも話を聞きました。南口まちづくり団体は該当エリアの地権者約50名のうち、団体に参加している人は16名程度。月1回の勉強会をやっていて、その内容はたとえば、面整備とか点整備とか、再開発のさまざまな方法のことや、進め方などの知見を深めていくことが目的のひとつ。

……ちなみに、話を聞きに行った際に、都市整備部の人から「まちづくり助成は『ニシオギ空想計画実行委員会』も取る資格がありますよ、どうですか?」と誘われました。今回は申請しませんでしたが。

本編はここから。

35点の応募あり

話がだいぶそれてしまったので、展示報告に戻ります。「ニシオギ空想計画」の公募、募集期間がわずかに一ヵ月だったのですが、なんと35点もの応募がありました。正直、こんなに集まるとは思っていませんでした。最年少は4歳! わりとすぐに実現できそうなものから、現状認識を踏まえた専門家によるガチのアイデア、はたまたいわゆる「奇想」、直接的にどうこうというのではなくイマジナリーなものまで、幅広い応募がありました。

出展作品については今後、本ページに特設ページをつくって順次挙げていく予定。とりあえずちょこっとだけ出しておこうかな。

すわれタウンニシオギ
すわれタウンニシオギ
にしおぎねこタワー
にしおぎねこタワー
カオティック西荻Re:Birth
カオティック西荻Re:Birth
夕空にカンパイ!
夕空にカンパイ!
西荻トゥクトゥク特区計画
西荻トゥクトゥク特区計画
火の用心
火の用心

個々の説明は今は省きます。画像内の文面をご覧ください。

消火器が登場

西荻北にある株式会社ガリューの社長にしてエンジニアの長谷川可賀さん(よく善福寺川周辺でアヒルと散歩している人です)に、このニシオギ空想計画の話をしたら、しばらくして「あたらしい消火器をつくったんだけど」と電話がきました。長谷川さんの専門は高圧洗浄機の先端のノズル部分。細かい粒子となった水滴を高速でぶつけることで、少ない水量で効率よく汚れを落とす研究開発をしています。その技術を応用したのがこちら。

消火器

大型のブロアー(木の葉を吹き飛ばして集めるなどの時に使う工具です)の先端に、ノズルを取り付け、ミスト状の消火剤(水でOK)を噴射します。通常の消火器だと、噴射持続時間は40〜60秒といったところですが、こちらは10分程度継続が可能。消火剤に重曹を混合させておくと、炎と反応して二酸化炭素が発生し、窒息消火できるとのこと。狭い路地での初期消火に効果を発揮しそう。このわずかな時間でアイデアだけでなく、現物を作ってしまう人がいるなんて、西荻ってほんとすごいわ〜

消火器

一欅庵の前で、長谷川さんによる実演(火は使ってませんよ)。霧状の水は、使用者の身を炎から守ることにもなります。さらにブラッシュアップさせていきたい消火器です。

西荻模型(未完成)を展示

街のイメージがとらえやすくなるのでは、という実行委員会メンバーの意見があり、西荻窪駅周辺の立体模型をつくることにしました。2日間の作業で終わるという当初の作業日程はずれまくり、5日かけてなお未完成。そのまま展示することに。建築模型をつくるのは個人的には初めてでしたが、メンバーは建築学科出身者ばかりなので手慣れたもの。スタイロという発泡スチロールを熱したニクロム線でカットし、ジェッソで塗装。

模型作り
Nさんの指が美しい。

で、とりあえずここまで。

模型

模型のスケールは300分の1。高さはだいたいの階数を調べて、それでつくっています。たしかに、イメージしやすい! 南口に低層がみっしりつまっている感じ、夢飯(ムーハン)の前ではなぜいつも強風が吹いているのかとか、西荻窪駅周辺の雰囲気がよくわかります。

一欅庵で朝の茶事から

一欅庵

会場は登録文化財建築・一欅庵の2F。1Fの茶室では、お抹茶をいただきました。外の緑がまぶしく清々しいです。

一欅庵の茶室

青梅をかたどったお茶菓子

2Fの展示会場の様子

展示物は、規定通りのA3作品のほか、模型が2つ、映像作品が1つ、消火器が1つ、大判が2つなど。

ニシオギ空想計画会場風景

西荻茶散歩の南端の会場ですが、たくさんの方に足を運んでいただきました。なにげなく置いてあったイスに腰掛けてしばし休憩していく方なども。関係ないけど、上の写真にチラ写りしている一欅庵の欄間、やっぱすごいよね〜

座談会「西荻の未来をめいっぱい空想する」

1日目に開催した座談会も多くの方にお越しいただきました。西荻の現況のお話から、それぞれの空想計画案について、また、今後どのように動いてくべきなのかなど、実際的な話も出ました。参加者の中には、西荻に事務所を持つ評論家・三浦展さんや阿佐ヶ谷にお住まいの建築史家・陣内秀信さんの姿も。陣内さんはお住まいの阿佐ヶ谷のことを交えたお話などをしていただき、三浦さんからは、もっと中間層を取り込んでいくしくみを考えないとね、とアドバイスをもらいました。話された内容についてはまたこまかく触れられるようにしたいですが、ここではひとまず報告まで。

実はニシオギ空想計画Vol.1・5(仮)を開催中!

一欅庵での展示は茶散歩の2日間で終了しましたが、その後、西荻南の信愛書店さんからお声がけいただき、6月14日から奥のプレイルームにて、「ニシオギ空想計画」を再展示しています。終了期日は未定。とりあえず6〜7月は展示していると思いますので、見逃した方はぜひ信愛書店でご覧ください。(6月16日現在、一部の展示作品が間に合ってません)

次の予定=ニシオギ空想計画Vol.2 in トロールの森

Vol.1と銘打ったからにはVol.2もあります。今年の11月、毎年恒例・善福寺公園を中心としたアートイベント「トロールの森」(2019年11月3〜23日)にて、「ニシオギ空想計画実行委員会」で参加することになりました。どのようなことをするか、発表までいましばらくお待ち下さいませ。

One Thought to “ニシオギ空想計画Vol.1報告 @一欅庵

  1. […] 先日の西荻茶散歩/チャサンポー(6月1日・2日)の際に、松庵の文化財古民家「一欅庵」の2Fを使って、公募で集まった35点の「空想計画」と、駅前模型などを展示していた「ニシオギ空想計画Vol.1」。わずか2日間の展示だったのでもったいないな~と思いつつも、トロールの森の時期(11月)に開催される予定のVol.2にむけての準備をしておこうかなと思っていた矢先、南口の信愛書店さんからお声がけをいただきました。7月は展示企画がないから展示してみたら? こういうのはたくさんの人に見ていただいたほうがいいですよ、と信愛書店の原田さん。 […]

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